御影屋

高須光聖がキク「高須光聖×三木聡」 第6話

『ごっつえぇ感じ』などでさまざまな企画を共に手がけてきた2人。その後、三木さんは映画監督として数々の作品を手がけられるようになりました。二人がコントや企画、舞台で「くだらないこと」に全力を傾ける姿勢の中にも、じつは色気があるとかないとかで細分化されるカラーの違いがありました。そして「一万円ライブ」のウラ話など、『ごっつ』世代にはたまらないトークが満載だった一夜のレポートです。

インタビュー

第5話

2001.01

高須光聖がキク「高須光聖×三木聡」

刺激的な存在

高須

『生生生生ダウンタウン』で初めて三木さんと一緒に仕事した時、
初めて交わした会話がバイクの話で、その頃はもう、
三木さんハーレーに乗ってたよね?

三木

うん、その頃はもう乗ってたね。
「バイク何乗ってるんですかー?」とか訊かれて。

高須

「ハーレー」って言われて、「うわぁっ、すごいっすねー」
って何だか実のあるような無いような会話をした(笑)。

三木

適当な交流だったよねぇ(笑)。

高須

でも当時、俺は倉本さん(放送作家の倉本美津留氏)から
「三木は出来る作家だよ」と良く聴かされてたからね。
倉本さんは大竹さんのラジオを大阪でやってたから、
ある程度三木さんの仕事っぷりを知ってたんだと思う。

三木

そして、あの「生生生生」の終了が近づいたぐらいで、
俺と高須くんは良く話するようになったんだよね。
「あれがおかしい」とか「ここが変だからこうしたい」とか。

高須

そうそう。そんなことを三木さんと深く喋りだしたのは、
もう終わりに近い頃やった。

三木

俺はね、それまであんまり同業者から刺激を受けることが
それほど無かったのよ。変な話なんだけど。
だけど、高須くんが放送作家としてダウンタウンと一緒に
東京へ出てきて、一緒に仕事をした時に、
松本人志が考える物事っていうのにももちろん刺激を受けたし、
それと同時に彼らと一緒におもしろいことを考えてきた
作家の人達っていうのにも、刺激を受けたよね。

高須

ああ、それは嬉しいなぁ。
でも、俺は俺で三木さんからはすごい刺激を受けたよ。
「そっか、そういう考え方があるのかぁ」って思いっぱなしの季節があったもん。

三木

くだらないドラマの設定とか、コントの話とか、二人で良くやってたもんね。

高須

それがまた楽しかったのよなぁ、刺激も含めて。
俺は三木さんとは、うまいこと言われへんけども、
こう、ね……「合う」って感じがするんよ。
好きなんだよねー、この三木聡という人間が!
……あ、いや、三木さんがどう思ってくれてるかは知らんけど(笑)。

三木

また、そういうことを言う~。(笑)
ここで俺が「いや、合いませんよ」って言えっての?(笑)

高須

いやいやいやいや(笑)。
でも、好きなんよー、うん。
分かるかー、田代よ~、この俺の思いがっ。

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うん、すっごく分かる気がしますよ~。

このあたりで料理が続々運ばれてきて、短い忘年会がようやく幕を開けた。
カキフライ、根菜類の卵とじ、鯖の塩焼きなどをつつきながら、
高須さんはビールを速いペースで空けていく。
三木さんは「いつもの」と言ってウーロン茶を飲み、
レタスの水餃子やら、砂肝のガーリック炒めを頬張っていた。
おいしい匂いが立ちこめた小さな部屋に、
二人の会話の熱は途切れることが無くて、
見ているこっちがなんだか妙に幸せになってしまう。
もったいないほどの時間が、ゆっくりと過ぎていく。

高須

俺がダウンタウン絡みではなく、同業者である
作家の人から誘ってもらった仕事ってのは、
三木さんに声をかけてもらった番組が一番最初やったんちゃうかなぁ。
あれは本当に嬉しかったなー……。
結果的には俺が大阪と東京の往復でへろへろになってて、
とても新しい仕事を入れられませんって事で
お断りしてしまったけど、でもマジで嬉しかった。

三木

それから『真っ昼魔王』で一緒になって(笑)。

高須

でた! 伝説の番組、真っ昼魔王(笑)。
俺らの担当曜日は「ダイナミック商会」という
物売る企画の曜日をやったんだけど、あの番組も、
あっという間に終わってなぁ……最初はもっと違う企画をやったもんね!?

三木

そうそう。

高須

今となってはもう遅いけど、俺と三木さんで、
『ハンマープライス』が始まる前に、
同じような企画をやろうとしてたこともあったもんね。

三木

あったあった。
「松田聖子の風呂の水を競売しよう」とか
「瀬古と鬼ごっこする権利」とか
「カズと缶蹴りする権利」とか高須君言ってたもんね。

高須

そうそう!

三木

案を出して、決まりかけたのに、結局そういう
グッズを手に入れるだけの力が番組に足りなくて、
くじけちゃったっていう(笑)。

高須

三木さんは『はじめ人間ギャートルズ』に出てくる、
あの骨付き肉をまんま作って売りだそう、とか言ってて、
それもおもしろそうだった。実際欲しいと俺は思うし、
買いに来るヤツも絶対居ると思ったし。
そしたらディレクターに「それは有り得ないでしょー」とか
一刀両断、却下されてしまった。

三木

でも、あり得たんだよね。
その後すぐに『ハンマープライス』始まったんだから。

高須

ほら、見てみぃ~ってなもんだった、マジで。

三木

ただ、うちの方が売り物自体はバカらしかったよ。
「新沼謙二のラケットが欲しい」とか言ってたもん(笑)。

高須

言うてた言うてた(笑)。

三木

それはそれで味わいはあったはずなんだけどなぁ(笑)。
あれさえ始められてたら、あの番組はもっと違うところへ
行けてたかもしれなかったよね。

高須

もったいなかったねぇ。

だけど、こんな企画をバカな感じで考えて、
ずーっと喋ってるのが楽しかったよね。
今みたいに責任無かったし、数字数字って必死にならんでも良かったし、
そりゃもちろんあの頃だって取らなくちゃいけなかったんだけど、
でもどっかで自由があったなぁって。

三木

今みたいに瞬間視聴率とか分刻みの視聴率なんて、
俺達作家は見なくて良かったもんね。関係ない!! って顔してた。

高須

ただ、廊下ですれ違う人に「あれ、おもしろかったね~」って
言ってもらえたら、それで良かった。

三木

この今の状態こそが「テレビの進化」って言われちゃえば、
それでしかないんだけどさ。
だから、俺らよりもう一つ若い世代の人達は、そのあたりの戦略が上手だよね。

高須

ああ、それはそう思うなぁ。

三木

俺らは「俺がおもしろいと思う方が大事なんだ」って
どっかで思っちゃうんだよねー、どうも。

高須

いや、でもそれが基本にないと、楽しくないと思うよ。
前にもテリー伊藤さんが「革命起こす!」って思って
テレビ作ってたって話を都築くんとやった時に、
やっぱりそれは自分で満足できるかどうか、
納得できるかどうかってのにこだわったからこその
強い意志なんやろうなぁ、って思った。
そこを貫いて、敢えて馬鹿げたことを打ち出していくっていうか……。
そういう意味でも、三木さんの考える事って言うのは
筋通ってておかしいと思うもの。
『ごっつえぇ感じ』でダウンタウンの歴史を、真面目な俳優使って
再現して振り返ろうとか言い出したのも、三木さんだったよね?

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あっ、あれは三木さんの企画だったんですか!?

高須

そうやねん。
若い頃の浜田が石立鉄雄で、松本が江守徹(笑)。

三木

あれはねー、裏が結構大変でねぇ。
あのキャスティングには小松(当時、ごっつディレクター)の尽力があったんだよー。

高須

みんな頑張ってたもんねー、あの頃は(笑)。
俺は、あれはすごく三木さんの考えることだなぁって
気がしたなぁ。ずらし具合といい、全部の空気感といい、シニカルさがね。

第6話へつづく

放送作家

三木聡 さん

神奈川県横浜市出身の放送作家・映画監督。
他にもヘビナ演術協会やシティボーイズライブ等の脚本・演出。

テレビドラマ
・世にも奇妙な物語第3シリーズ「顔」(1992年、フジテレビ)脚本
・留萌交番日記'95春(1995年、北海道テレビ)脚本
・優香座シネマ「お湯は意外とすぐに沸く」(2002年、テレビ朝日)脚本・演出
・演技者。「いい感じに電気が消える家」(2003年、フジテレビ)脚本・演出
・68FILMS東京少女#6「臭いものには蓋の日」(2004年、BS-i・BSフジ)脚本・演出
・時効警察(2006年、テレビ朝日)脚本・演出
・帰ってきた時効警察(2007年、テレビ朝日)脚本・演出
・週刊真木よう子「チー子とカモメ」(2008年、テレビ東京)脚本・演出
・トンスラ第1話(2008年、日本テレビ)脚本・演出
・熱海の捜査官(2010年、テレビ朝日)脚本・演出
・変身インタビュアーの憂鬱(2013年、TBS)

映画
・シティボーイズライブ短編映画「まぬけの殻」(2000年)監督・脚本
・イン・ザ・プール(2005年)監督・脚本
・亀は意外と速く泳ぐ(2005年)監督・脚本
・ダメジン(2006年)監督・企画・脚本※撮影は2002年
・図鑑に載ってない虫(2007年)監督・原作・脚本
・転々(2007年)監督・脚本
・インスタント沼(2009年)監督・脚本
・俺俺(2013年)監督・脚本

舞台演出
・シティボーイズライブ「さまよえるオランダ人」(1989年)
・シティボーイズライブ「サイパン」(1989年)
・シティボーイズライブ「ワニの民」(1990年)
・シティボーイズライブ「14Cの記憶」(1991年)
・シティボーイズライブ「鍵のないトイレ」(1992年)
・シティボーイズライブ「愚者の代弁者、西へ」(1993年)
・シティボーイズライブ「ゴム脳市場」(1994年)
・シティボーイズライブ「愚者の代弁者、うっかり東へ」(1995年)
・シティボーイズライブ「丈夫な足場」(1996年)
・シティボーイズライブ「NOTFOUND 見つかりませんでした」(1997年)
・シティボーイズライブ「真空報告官(P)」(1998年)
・シティボーイズライブ「真空報告官大運動会」(1998年) 渋谷公会堂
・シティボーイズライブ「夏への無意識」(1999年)
・シティボーイズライブ「ウルトラシオシオハイミナール」(2000年)
インターネットドラマ
・インターネットドラマ「φ」(2002年)脚本・演出
・グンゼ「ベランダ」(2008年)脚本・演出

これまで担当した番組
・夕やけニャンニャン(フジテレビ)
・世界で一番くだらない番組(フジテレビ)
・タモリ倶楽部(テレビ朝日)
・ダウンタウンのごっつええ感じ(フジテレビ)
・笑う犬シリーズ(フジテレビ)
・TV'sHIGH(フジテレビ)
・北半球で一番くだらない番組(フジテレビ)
・トリビアの泉〜素晴らしきムダ知識〜(フジテレビ)ブレーン担当
・ヨルタモリ(フジテレビ)

著書
・『インスタント沼』角川書店(2009年4月25日、ISBN978-4048739429) 装画 逆柱いみり
・三木聡ほか著『帰ってきた時効警察』角川書店(2007年6月ISBN978-4048737821)-第2シリーズのノベライズ。
・『帰ってきた時効警察オフィシャル本』太田出版(2007年6月9日、ISBN978-4778310677)
・『図鑑に載ってない虫『』幻冬舎(2007年4月、ISBN978-4344013179)

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