御影屋

高須光聖がキク「高須光聖×三木聡」 第9話

『ごっつえぇ感じ』などでさまざまな企画を共に手がけてきた2人。その後、三木さんは映画監督として数々の作品を手がけられるようになりました。二人がコントや企画、舞台で「くだらないこと」に全力を傾ける姿勢の中にも、じつは色気があるとかないとかで細分化されるカラーの違いがありました。そして「一万円ライブ」のウラ話など、『ごっつ』世代にはたまらないトークが満載だった一夜のレポートです。

インタビュー

第9話

2001.01

高須光聖がキク「高須光聖×三木聡」

生まれ育つ場所が笑いをはぐくむ

三木

大分前の話だけど、ニューヨークに住んでたデザイナーが
日本に帰ってきて、テレビで「ごっつ」見たら、
「なんでこんな前衛アートみたいな番組を
こんな時間に日本は放送できてるんだ!?」って不思議がってたよ(笑)。
突き詰めちゃって、シュールレアリズムみたいになっちゃってたんだろうね。
笑わせようと必死になるあまりにね(笑)。
アメリカの笑いってそこまでいけないから、すっごく不思議で新鮮だったって。

高須

野沢直子が日本に戻ってきて、
「寝起きハイテンション」って企画見た時に、
「なんだこれ!?」と思ったらしい。
やっぱり日本のお笑いってすごいと思わざるを得なかった、と。
こんなバカなことを考えられる人が日本にはいる、
やっぱり松本人志はすごいって言ってたなぁ。

三木

変な発展の仕方だとは思うのよ、日本の笑いって。
多分、単一民族国家ってのも大きな要因なんだろうけどね。
共通認識みたいなのがあるから、その先で笑いを作っていけるじゃない?
アメリカとかは多民族国家だから、まず共通認識を、
と思うとどうしても浅いところへ働きかけなくちゃいけないからね。
日本は、そこを飛び越えていけるから、うん。

高須

なるほどね。

三木

なんかさぁ、生まれてるところで認識が変わってくるっていうの、あるよね。

高須

ああ、絶対ある。

三木

世界っていうのもそうだけど、国内でもさ、大分違う。

高須

やっぱり工業地帯で、しかも借金し倒してるような
おっさんやおばはんが住んでるような町って、
どうしたって日常のテンションが高いもん(笑)。
酒飲むにしたって、「え~い、もう何でもええわ~っ」て
雰囲気で飲んでたりするからさぁ、明らかにそれって
モラルってものがゼロの世界やからね。
……昔、浜田の家の近所に、変な空間があったのよ。
電柱の上の方に、街灯があるでしょ?
オレンジ色の光の、傘かぶった形してる。
あれを強引に下まで引っ張って、頭の上まで下ろしてきて、
それを飲み屋の明かりに使ってんのよ(笑)。

三木

(笑)。

高須

飲み屋の外に、ビールの箱を並べて、そこに古い畳が
ばーんと載せてあるのよ。簡易ベッドみたいに。
その二畳ぐらいのスペースの真ん中に将棋盤が置いてあって、
おっさんらが寝ころびながら、酒を飲みつつ、
だっるそぉぉぉに、将棋指してんのよ。
それが浜田の家から10メートルぐらいの場所(笑)。
もちろん公道よ?

三木

狂ってるよね(笑)。

高須

電柱の電気下ろして使うなんて、おっかしいもの、どう考えても。
だけど、それがそこの日常なの。

三木

街灯の概念を覆してるんだよね、日常で既に(笑)。

高須

そういうのは、でも、あるよね。

三木

町全体の馬鹿馬鹿しさで以て、培われるものはあると思う。
既成のことに縛られない感覚って、どこか笑いには
必要だったりするじゃない?

高須

そういう意味で、尼崎って言うのはすごい良かったんかも
しれんなぁ……。変な町やったもんなぁ、どう考えても。

三木

いや、大事だよ、そういう環境って(笑)。

…八十分の時間が過ぎて、録音テープも終わる頃、
話はずいぶん半ばだったけれど、三木さんは名残惜しそうに席を立って、
仕事へ向かわれた。

「また、年明けにでも時間取ってゆっくり飲みましょう」
「そうだね」
「絶対ですよ!!」
帰る三木さんを見送ってから席へ戻ると、
高須さんはやっぱりにこにこ笑って、
「大きくてなぁ……おもしろい人なんよなぁ。すごいよなぁ」
としみじみ呟く。
「そうですねー。色気がないなんておっしゃってたけど、
どちらかといえば男も惚れる男って感じかなぁ」
と返すと、
「ああいう大人になりたかったんだよなぁ、俺……」
と、俯きがちにぽつり。
新しいビールを注文して、私は録音機材をしまいながら言った。
「…でもね、三木さんへの憧れをそういう風に言える高須さんにも、
高須さんなりの素直なかっこよさと魅力があると思いますよ?」
「…そう? そういうもん?」
「そうです。そういうもんです」
「だといいかなぁ……」

そうして、二十世紀最大最後の男前な夜は幕を下ろした。

今頃、またこの盟友同士は何やらおもしろいことを考えて考えて、
おもしろくって仕方のない新世紀にしようと、
酒を酌み交わしていたりするのかもしれない。

新しい年も、その先も、
小気味いいおもしろさが感受していけるような、
そんなテレビでありますように。

御影湯三木聡の湯おしまい
三木さん、お忙しい中、たくさんのお話をありがとうございました!!

おわり

放送作家

三木聡 さん

神奈川県横浜市出身の放送作家・映画監督。
他にもヘビナ演術協会やシティボーイズライブ等の脚本・演出。

テレビドラマ
・世にも奇妙な物語第3シリーズ「顔」(1992年、フジテレビ)脚本
・留萌交番日記'95春(1995年、北海道テレビ)脚本
・優香座シネマ「お湯は意外とすぐに沸く」(2002年、テレビ朝日)脚本・演出
・演技者。「いい感じに電気が消える家」(2003年、フジテレビ)脚本・演出
・68FILMS東京少女#6「臭いものには蓋の日」(2004年、BS-i・BSフジ)脚本・演出
・時効警察(2006年、テレビ朝日)脚本・演出
・帰ってきた時効警察(2007年、テレビ朝日)脚本・演出
・週刊真木よう子「チー子とカモメ」(2008年、テレビ東京)脚本・演出
・トンスラ第1話(2008年、日本テレビ)脚本・演出
・熱海の捜査官(2010年、テレビ朝日)脚本・演出
・変身インタビュアーの憂鬱(2013年、TBS)

映画
・シティボーイズライブ短編映画「まぬけの殻」(2000年)監督・脚本
・イン・ザ・プール(2005年)監督・脚本
・亀は意外と速く泳ぐ(2005年)監督・脚本
・ダメジン(2006年)監督・企画・脚本※撮影は2002年
・図鑑に載ってない虫(2007年)監督・原作・脚本
・転々(2007年)監督・脚本
・インスタント沼(2009年)監督・脚本
・俺俺(2013年)監督・脚本

舞台演出
・シティボーイズライブ「さまよえるオランダ人」(1989年)
・シティボーイズライブ「サイパン」(1989年)
・シティボーイズライブ「ワニの民」(1990年)
・シティボーイズライブ「14Cの記憶」(1991年)
・シティボーイズライブ「鍵のないトイレ」(1992年)
・シティボーイズライブ「愚者の代弁者、西へ」(1993年)
・シティボーイズライブ「ゴム脳市場」(1994年)
・シティボーイズライブ「愚者の代弁者、うっかり東へ」(1995年)
・シティボーイズライブ「丈夫な足場」(1996年)
・シティボーイズライブ「NOTFOUND 見つかりませんでした」(1997年)
・シティボーイズライブ「真空報告官(P)」(1998年)
・シティボーイズライブ「真空報告官大運動会」(1998年) 渋谷公会堂
・シティボーイズライブ「夏への無意識」(1999年)
・シティボーイズライブ「ウルトラシオシオハイミナール」(2000年)
インターネットドラマ
・インターネットドラマ「φ」(2002年)脚本・演出
・グンゼ「ベランダ」(2008年)脚本・演出

これまで担当した番組
・夕やけニャンニャン(フジテレビ)
・世界で一番くだらない番組(フジテレビ)
・タモリ倶楽部(テレビ朝日)
・ダウンタウンのごっつええ感じ(フジテレビ)
・笑う犬シリーズ(フジテレビ)
・TV'sHIGH(フジテレビ)
・北半球で一番くだらない番組(フジテレビ)
・トリビアの泉〜素晴らしきムダ知識〜(フジテレビ)ブレーン担当
・ヨルタモリ(フジテレビ)

著書
・『インスタント沼』角川書店(2009年4月25日、ISBN978-4048739429) 装画 逆柱いみり
・三木聡ほか著『帰ってきた時効警察』角川書店(2007年6月ISBN978-4048737821)-第2シリーズのノベライズ。
・『帰ってきた時効警察オフィシャル本』太田出版(2007年6月9日、ISBN978-4778310677)
・『図鑑に載ってない虫『』幻冬舎(2007年4月、ISBN978-4344013179)

ON
OFF