御影屋

高須光聖がキク「高須光聖×片岡飛鳥」 第6話

『めちゃイケ』をはじめ、芸人バラエティを牽引し続けるイメージが強いディレクター・片岡飛鳥さん。その硬派なまでの「笑い」に対する強いこだわりがガッツリ詰まったインタビューです。テレビ番組を作る際に必要なパッケージ感の話、若手を育てる技法についての話などは、業界のみならずさまざまなビジネスや企画にもあてはまるヒントが詰まっています。笑いを愛する、すべての人へ。
取材・文/サガコ

インタビュー

第5話

2001.01

ほんもののあいじょう

高須

芸人にとっては「客」が、何よりも誰よりもはっきりと
「違う」って言ってくれる。
じゃあ、俺らみたいな作家にとっては、
誰が「違う」って言ってくれるんだろう、と。

片岡

それはもう、ディレクターしかいないでしょ。

高須

そうなるね。
ところがさ、放送作家を十数年やってると、
いつの間にか、周りのディレクターたちがどんどん年下になってるやんか。
また、それではっきり言ってもらえなくなっていく。
言ってもらえないっていうのは、辛いことでさ。
だから、俺は俺ではっきり言ってくれる飛鳥の存在を大事に思ってるわけ(笑)。

片岡

ほんとに?(笑)

高須

これはほんまに、マジで。

片岡

あっ……じゃ~いきなりだけど、
今、今日一番の厳しいこと、言おうか?

高須

ん?

片岡

僕ね、高須さんのプロフィールとか、あんまり知らなかったのよ。
そんで、対談があるって言うから、ネットの『御影屋』サイトを見たわけ。
そうしたら、「高須光聖ってどんな人?」っていうコーナーがありました。

高須

ありますね。

片岡

クリックしました。

高須

しますよね。

片岡

すると、ズラーッと担当番組が出てきました。
全部で19本、かな?
その中で僕が声だして笑って見てるのは
『ガキ』と、自分のプライドも含めて『めちゃイケ』だけでした。

高須

なるほど。

片岡

僕、本当に高須さんの仕事量って知らなかったから。
たくさんやってるとは聞いてたけど、そんなにやってたのかーって。
でも、お笑い番組にとって最も大切なところって、
「声だして笑えるかどうか」だと僕は思ってるから、
それが2つだけっていうのは、どうなのかなって?

高須

ただそれは、飛鳥の好きな笑いを提供している番組が、
この2つってことで、他にも僕は笑える番組がちゃんとある。
ただ、全部そうかというとそうじゃないのは確かかな。
でもね、声出して笑える番組って今、そんなにある?
俺は今まで作ってきた番組全部合わせても、そんなに無いと思うよ。

片岡

だから厳しいこと言うよって、前もって言ったの。
でもね、それでも「くだらねー、これ~」っていう番組を作らないとさ。
そして、そこに大切なのは『愛情』、これが一番言いたいこと。
ま、自分で自分のこと言うのはあれだけど、
少なくとも僕は出演者に愛情持って『めちゃイケ』作ってるよ。
だって、自分で考えて、撮って、編集してるのは
この一本だけだから。それはそれは深い愛情が注げる。
で、その一方、高須さんが担当してる19本の番組の中の一体何本が、
出てる芸人さん達に愛情持って作ってる番組なのか…それは大きな疑問かな。

高須

『めちゃイケ』も『ガキ』も、それはナイナイやダウンタウンに
愛情持ってやってるし、他のスタッフもその心意気はある。
だけど、飛鳥が「笑えない」って言った番組全般に関しては、
うーん、きっとみんな愛情がないわけじゃなくて……。
持ってるけど、なんて言うんだろ……。
愛情がずれてしまってるというのかな。
だって番組形態や枠にもよるし、局やプロダクションの方向性に
よって愛情を十分に注げないという現場もあるしね。
こんなこというと、反感かうかもしれないけど、
愛情をそそいで必死に会議やっても、
現場のディレクターにその愛情が伝わんなきゃ、
オンエアでは愛情がないように映るよね。
そうなると僕ら作家はそのディレクターに分かる企画しか提供しなくなる。
結果挑戦的な企画がドンドン減ってきて、番組がワンパターン化し始める。
愛情って、作家の力だけではそそげない。
同じ笑いを共有できるディレクターがいないと、これってとても難しいね。

片岡

なるほどね。
持ってるけど、双方向に噛み合ってないってことね。

高須

そうそう。

片岡

最近「15%の視聴率取りますから、こうしましょうね」っていう
作り方あるでしょ。
あれって、出演者への純粋な愛情とは違うものでしょう?

高須

でも局のプロデューサーは、ほとんど飛鳥と逆のことを言うのよ。
そうなると、僕らは番組が存在することでギャラを貰ってるわけで
視聴率が取れなくちゃ番組を終わっちゃうから、
プロとして最低限度の数字を取る企画をまず出そうという会議になるわけ。
確かにそうなると、演者のためというより番組のためになっちゃってるよね。
じゃあ、そこで誰がどうやって演者に愛情を伝えていくかっていうと、
まずはプロデューサーの意向と、
作家のネタの方向性を決めるディレクターっていう存在q@と思うのよ。

片岡

えっと、それは、
「作家としての単純な責任転嫁じゃなく」ってことね?

高須

もちろん。
だって、企画でも編集でも何もかも、
最後に決定権持つのはディレクターやんか。
俺らの企画をチョイスするのも、具体的にするのもディレクター。
演者に「おもしろいからやりたい」と現場で説得するのもディレクターだし
「よし、それは面白そうだ」と思わせるのもディレクター。
結局、ディレクターの力量ってものが番組にとっては大きい。
番組ってある意味、演者とスタッフの信頼関係だったりするから
その一番のジョイントはやっぱりディレクターなんだよねぇ。

片岡

なるほど……。

高須

これは作家の言い訳かもしれないけど、ね。

片岡

でも。でもね、どっちにしても、高須さん、番組多すぎ(笑)。

高須

……それは、ねぇ(苦笑)。
いや、だから、いよいよもって減らしていくから!

片岡

本当かなぁ?
まぁ、『めちゃイケ』は一生懸命やってもらってるから、
僕はいいんだけどね。

高須

愛情あるでしょ(笑)。
だって、俺、自分がオンエアすごくいいなって思ったら、
飛鳥の留守電に入れるやん、絶対。
「今日のは良かったよ。面白かった」って。

片岡

うん、それは大切な愛情だと思う。
例えば『めちゃイケ』が20%超えたと発表されてから、
月曜日に「面白かった」って言ってくれる人はたくさん居る。
それはそれで嬉しいけど、高須さんの電話は絶対、
数字が分かる前に入るからね。
そんなのは高須さん一人だけだから。

高須

まぁ、その時に限って、大概数字悪いけど(笑)。

片岡

そうなんだよねぇ~。びっくりしちゃうよね。
高須さんが電話くれた回は、15%しかとれてない(笑)。
まぁ、でもそれもたった二回だけだけどね。
180回放送して、たったの2回だけさ、褒められたのは。

高須

だって俺、そんなわざわざ褒めない人間だもん、生来。

片岡

そうなんだ!(笑)
じゃ、やっぱり本物の愛情だ。

高須

だってその電話した2回は、俺、オンエア見て泣いたからね。
芸人はかっこええなぁ~って!

片岡

あはは!(笑) 泣いちゃだめじゃん、笑っといてよ。

高須

もちろん笑ったけど、
ADから芸人になった大隈いちろうを岡村がビンタし続けたやつと、
加藤の母親と再婚した新しい父親に、小樽までみんなで会いに行った回。
あれはもう、泣いたって!

片岡

だけど、数字は伸びず、だった(笑)。
でも、僕もあの二つは大好きなんだよ。
だから、高須さんの電話は素直に嬉しかったな。
他の人は視聴率を見てから「触れないでおこう」みたいな空気だから(笑)。

第6話へつづく

ディレクター

片岡飛鳥 さん

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