御影屋

高須光聖がキク「高須光聖×片岡飛鳥」 第6話

『めちゃイケ』をはじめ、芸人バラエティを牽引し続けるイメージが強いディレクター・片岡飛鳥さん。その硬派なまでの「笑い」に対する強いこだわりがガッツリ詰まったインタビューです。テレビ番組を作る際に必要なパッケージ感の話、若手を育てる技法についての話などは、業界のみならずさまざまなビジネスや企画にもあてはまるヒントが詰まっています。笑いを愛する、すべての人へ。
取材・文/サガコ

インタビュー

第6話

2001.01

愛しい人へ

片岡

この世界で14年やってきた今、言えることは
僕はやっぱり、芸人が大好きなんですよ。
それに尽きる。

高須

それは俺もそう。

片岡

自分がナイナイとずっと一緒にやってるからって、
ロンドンブーツのことを嫌ったりとかってことは、
例え話としても有り得ない。
彼らがおもしろいことをやってれば手を叩いて笑うし、
ココリコだって好きだし、ダウンタウンもさんまさんもみんな好きなんだ。
芸人って人達が、全部愛おしい。

高須

そうね、だって絶対頑張ってる存在でしょ、芸人って。
人を笑かすために、命かけてる。
そんな姿見ると、もう、それだけで拍手してしまう。
もちろんそれで「何でもあり」ってことにするつもりは無いよ?
だけど派閥的な発想を、本人以外の、周りのスタッフが
持ってしまう事って、絶対違うと思うんだよなぁ。
俺はダウンタウンもやってるし、ウンナン、ナイナイ、ロンブー、ネプチューン、
いろんな芸人と番組作ってるのも、そういうのが嫌だからなのよ。
派閥があって、その芸人さん以外の笑いは笑いじゃない! みたいな
素振り振りまいたって、「笑い」のためにならないと思わない?

片岡

制限するだけだよね、「お笑い」って世界そのものの発展を。

高須

『ひょうきん族』ってごった煮で、もうそれは当時の笑いの
全ての要素を全部独り占めにしたような番組だった。
だから、良かったんだと思うのよ。
だからこそ、番組もお笑いっていう文化そのものも
進化できたっていうか、さ。
視聴者は「芸人が何がなんでも笑かすぞ!」という
戦いが見たいんだと思う。
どんな状況でも面白い人は面白いしね。

片岡

ほんとにそう思う。
僕も笑いがホントに好きだから、「ひょうきん族」みたいに
毎週のレギュラー番組でずっとっていうのは無理でも、
いつかどこかで「芸人」ってものが
ガサッと一つになるきっかけが欲しいなって思う。
それはもう、日本のお笑い祭り。
そうじゃないと、テレビ文化の中での「芸人」っていう分野そのものが
何の価値もないものになっていくと思うから。
彼らを含めた笑いのカテゴリーの位置を、
相対的に高めることが、最終的な使命だと思ってる。
プロダクションがどうとか、派閥がどうとか言ってたら、
バラエティの枠、全部「芸能人」に持っていかれかねない。

高須

芸能人、ね(笑)。
今はホントに「芸人」の居り処、厳しくなるばっかりやもんなぁ。
……芸人の周りの人間が、派閥意識を捨てられれば
絶対違ってくると思うんだけどなぁ。
「自分はこの人以外の笑いは認めない」ってこだわりは
捨てていかないと、その派閥自体を時代遅れにしてしまうと思ってるよ、俺は。

片岡

高須さんがいろんな芸人さんとやってるのには、
そういう考えが強くあるってこと?

高須

かなりある、かもなぁ。
結果で言ってしまえば、自分が自分として生きていくために、って
見え方になってしまうのかもしれないけど、
だけど、ダウンタウンの笑いが本当に一番だと
心のどこかで信頼し続けてるから、
「作家・高須」っていう立場の自分というものは
余計に外へ出ていかないと、とも思うんだよね。

片岡

それは普通のファンの人達には伝わりにくそうな思考だけどね。

高須

そうかもしれないなぁ。

片岡

何にしたって、「芸人」と「芸能人」じゃ違うよね。
「芸人」はやっぱり笑いをビシッと突き詰めて、それをオンエアする。
ある意味、プロとして命を懸けた行為だと思う。
だっておもしろい事が仕事だし、それがつまらなかったら
「もうやめれば?」って言われておしまいだから。
例え「芸能人」が歌や芝居が本業だけど、
バラエティもやれます、ってところで進出してきたとしても、
それは「お笑いごっこ」だから。

高須

なるほど。

片岡

だけど世の中はそんなこと考えてる人は少なくて、
「芸人より芸能人の方がかっこいいから」なんて言う
視聴者が多いんだと思う。僕、そういうのを聞くと
「じゃあ、芸人がどれだけかっこいいか見せてやろう!」って
思っちゃうんだよ。(笑)
【歌ってるSMA P木村】と
【ひとボケのためにフルマラソンしてるナイナイ岡村】を
「かっこいい」っていう軸で比べてもらって構わないよ、って思うんだ。

高須

いいねぇ~その闘い(笑)。
『めちゃイケ』の特番って、その意識でつくられてる物、多いよね。
それって飛鳥の色にもなってると思うよ。

片岡

大人げないって分かってるんだけどなぁ(苦笑)。

高須

そこの情熱無かったら、ほんまにおもろいもんなんかつくられへんって。
大人げないから、お笑いに関わってると思うもん(笑)。

片岡

いいのかなぁ、このまんまで(笑)。

高須

それこそが求められてるよ、確実に。
誰かが守っていかないと、そこの闘いは、さ。

片岡

おもしろいことしたいんだよなぁ……。

高須

したいね。

芸人がどんどん生きにくくなっている今のテレビ世界があるとして、
そこを何とか踏みとどまって、
「笑いを追求できる環境」を守ろうとしている人達が居る。

それは「芸人」自身では出来なかったりすることなのかも知れない。

「芸人」という生き物と同様に、「ディレクター」という生き物も在り、
「放送作家」という生き物も在る。

それぞれの立場で、それぞれが守りたいもの、守れるもの。
補い合って、素直になれれば、きっとすごいパワーが生まれると思う。
今はまだ、たくさんのことが絡み合いすぎてかなわないとしても、
信じ続けて頑張ったら、なにかとてつもない事は起こりうるかも知れない。

いつだって時代は、そうやって覆ってきたのだから。

純粋な気持ちでしか、見えないものがあるんだ。
信じ続けて、やるしかないんだ。

そういう当たり前のことを改めて認識した、今回の対談。
この後、片岡氏と高須氏は夜明けまで飲み、語り明かしたそうな。

闘う人はかっこいい。

芸人も、ディレクターも、作家も、誰でも、それが命懸けであるならば。

おわり

ディレクター

片岡飛鳥 さん

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