御影屋

高須光聖がキク「高須光聖×片岡飛鳥」 第3話

『めちゃイケ』をはじめ、芸人バラエティを牽引し続けるイメージが強いディレクター・片岡飛鳥さん。その硬派なまでの「笑い」に対する強いこだわりがガッツリ詰まったインタビューです。テレビ番組を作る際に必要なパッケージ感の話、若手を育てる技法についての話などは、業界のみならずさまざまなビジネスや企画にもあてはまるヒントが詰まっています。笑いを愛する、すべての人へ。
取材・文/サガコ

インタビュー

第2話

2001.01

ディレクターの絶対必要条件

高須

『エブナイ』の木曜日をやって、今、引き続いて『ワンナイ』やってる
ディレクターの渡辺琢、若手の琢ちゃんって呼ばれてるのがいるんだけど。
彼がもう、「小飛鳥」なのよ(笑)。
お笑い大好きで、笑いを追求しまくる姿勢が、もう飛鳥そっくり!

片岡

あれはね、三宅さんの遺伝子が入ってるよ(笑)。
ま、俺も三宅さんに教えてもらったことは多いし。

高須

こだわり方が尋常じゃないもんね。
特番で、さんまさんのコントを一緒に作った時に、
ものすごく細かいところまで打ち合わせしようとすんのよ、タクは。
「これがこうなった時は、どうするんですか?」
「この小道具には意味があるんですか?」
あらゆる現場のことが、自分の感覚で把握できないとイヤなんだよね。
自分で把握して、自分で納得して、人に説明が出来ないと
落ち着かないし、ダメっていう。
その様子を見て、俺はもう「うわぁ~、飛鳥がいる~」って(笑)。

片岡

それは三宅さんが、琢に教えたんだと思うよ。
三宅さんは技術的なことはあんまり教えてくれないけど、
「笑いの心」みたいなものは大切に教えてくれるからね。
俺がそれで教えてもらったことで、印象に残ってるのは
「笑いは空気だ」ってこと以上に、
【ディレクターは全部説明できなくちゃいけない】ってこと。

高須

……なるほど。

片岡

例えば、この飲み屋のスペースがコントのセットとするじゃない?
もし、高須さんがディレクターだったなら、
高須さんは今、このテーブルに来てる「おぼろ豆腐」の意味を
説明できなくちゃいけないのよ。

高須

はいはい、なるほど。

片岡

一見するとさ、それを説明しようとすることが
おもしろさに繋がるような気はしないわけさ。
別に飲み屋に豆腐は変じゃないでしょ、とかってなるわけ。
でも、そういう納得をしちゃう人はディレクターに向いてないわけさ。
タレントさんがいて、セットの中でキャラを演じる時に、
「ねぇ、これどうしておぼろ豆腐なの?」と聞かれたら、
それを的確に説明してあげるのが演出であって、
ディレクターの仕事なんだ、と。
中には説明が足りなければ、不安になるタイプのタレントもいるから。
全てが説明できる空間でなければ、タレントは安心して遊べないわけよ。
安心して遊べるときにはじめて、笑いの力が発動するっていうのは
三宅さんに教えてもらったことで、今、自分の中でものすごく納得してる
ことなんだけどね。

高須

しっかり現場で話の出来るディレクターって、ほんとに少ないもんなぁ。
どうして、この台本をこういう演出にしたの? って
タレントが訊いた時、なんにも言えなくなるディレクターの
多いこと、多いこと……。
タレントに何がおもしろいのか伝えられなかったら、
現場全体が不安になるもんな。
いい感じでお願いします、っていうとこ、未だにあるからね。

片岡

それ、マジですか……?
その場での理屈づけ自体は間違っててもいいと思うのよ。
それはまぁ、俺の理解なんだけどね。
自分の中で、とにかく流さないことを心がける。
訊かれたことに、とりあえず答える。
「何となく」で流さない努力と意識をするってだけで、
だいぶ違ってくるじゃない、きっと。

高須

飛鳥の演出も、肝はそこやなぁ。
「なぜ、ここに豆腐?」ってことを、飛鳥はちゃんと
自分が説明出来るまで、会議で詰めるもんな。

片岡

例えば、説明するとしたら、
お前のキャラは今、金がないっていう設定なんだ。
金がないから他のメニューじゃなくて、安い豆腐を選んだんだ、と。
そしたらとりあえずその部分は安心するかも知れない、「なるほどね」って。
もしも何も理由や設定を考えてなかったとしても、
現場でさっとそれが言えるだけで絶対違うもんね。
そういうことなんじゃないのかなぁ。

高須

俺、片岡飛鳥のすごいとこ、言おうか(笑)。

片岡

なに、それ(笑)。

高須

ちょっと誉めすぎかもなぁ(笑)。

片岡

どういうことですか(笑)?

高須

編集能力とか、演出力とか、そんなことは
みんな知ってることやから、もういいとして。
俺が飛鳥を認めてるとこは他にあってね。
それはちゃんと後輩のディレクターを育ててるってこと。

片岡

そうですか?

高須

いやいや、他の現場たくさん見る機会のある作家なら、
これはきっと分かるって。
若手のディレクター、育ってないもの。
若いディレクターで出来る人ってホント、これまた数人なのよ。
単独でできるディレクターは何人かいるよ。
バリバリ働き盛りで、番組いっぱいつくってるよ。
ただ、出来るが故に、ワンマンになってしまいがちなのよ。
全部自分でできてしまうから、それを下に伝えることを
怠けてしまって、結果的に番組のADやらタレントまでが
全くまとまっていかないようになってしまうのよ。
もう、最近はそういう現場がホントに多い。
その点が他のディレクターと大きく違うとこかな。

第3話へつづく

ディレクター

片岡飛鳥 さん

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