前半はチンコがプラプラする話が延々と続くのですが、後半になるとプラプラするチンコのことを忘れてしまうほどに、バラエティ&芸人について熱く、正直に語り合ったのが樋口さん回でした。数字ばかりを追いかけるスタイルに物申し、放送作家の華やかさばかりが取り上げられがちだった当時に、ただ熱く熱く、真面目に、おもしろいものを世に残そうと奮闘する……はたらくおっさんのカッコよさが全開です!
取材・文/サガコ
インタビュー
第6話
2004.07自らのDNAと豪快!御影屋
高須
『学校』を経て、『ガチンコ』が始まったよね。
TBSバラエティ以外の仕事もするようになったのは、その後?
樋口
ですね。
CXは石井ちゃんに声をかけてもらたのが始まりでした。
キッカケは~石井ちゃん♪で、そこからホント色んな経験が出来ましたね。
(※石井浩二「ココリコミラクルタイプ」総合演出)
高須
なんか、そうやって限られたひとつの局から外に出ていって
いろんな番組をやらせてもらうようになっていく段階で
「この番組には、俺のDNAがしっかり入ってるな」と思えたのは
どんな番組?
樋口
うーん。局をまたいで仕事する前になりますけど
『からくり』とか『学校』とかには、
そういう遺伝子の乗った部分が少なからずあると思いますけどね。
高須
おー、なるほど。
樋口
言い方は変になるんですけど
僕は多分「パクリ上手」なんだと思うんですよ。
いろんな人に憧れがあったりするから、
その人のいいところをなるべく吸収しようとしてしまう。
人のDNAを取り入れようとするんですね(笑)。
高須
ほうほう。
樋口
僕の中でその取り込みがブームになったとき、
ちょうど高須さんのやってた『豪快!御影屋』を見たんですよ。
高須
おお!(笑)
樋口
で、あの番組の手法の
「ひとつ命題を作って、それを解消していく」ってのは
おもしろいやり方、分かりやすいやり方だなぁと思って、
それ何とか真似できないかなぁと思ってみたりしたことありましたよ。
思えば、アレは高須さんのDNAが丸まんま、ですよね。
高須
そう、こっち(関東)ではオンエアーされてなかったんだけど
あの番組はおもしろかったのよ!(笑)
樋口
(笑)。おもしろかったですよ~。
ビデオ取り寄せて見てましたもん。いろいろ覚えてますよ。
「花屋に来る人は、イイことあったに違いない」とかってところから
企画がスタートするの、ありましたよね。
その考え方とかに「なるほど、なるほど~」って、僕思いましたもん。
高須
そうそう、そういう切り口の企画、よくやってた。
あの番組は、町に溢れてる人達のささやかな1日を
番組が関わることで、予想もしていない1日に変えてしまおう、
というのがコンセプトだったからね。
樋口
そう、町に溢れてる普通の人っていうのが、良かったんですよ。
例えはあまり良くないけれど、敢えて言うと
白血病の人に向かってカメラ回したら絶対感動するんですよ。
だけど、普通の人に向かってカメラを回して感動させるっていうのは、
テレビとしてはなかなか難しい。
それにチャレンジしてましたよね。
高須
あ~、そういう風に見てくれてたなんて嬉しいなぁ~。
樋口
なんていうか、僕のタイミング的にあの頃は
「アンチ『バラ色の人生』」だったんですよね。
30年ぶりの再開にカメラ回したら、
そんなの誰だって泣くだろう、みたいな。
そういうのちょっと違うんじゃないの? という。
さりげない感動のさりげなさが大好きなんです。
高須
人間って、もっとなんでもないようなことで感動したり、
泣いたりするもんだと思う。そういうのを大事にしたかった。
「御影屋」で僕が好きだったのは、極楽の山本が出た野球企画の回かな。
樋口
あーっ、僕も覚えてますよ!
高須
町中で、野球のボールをころころ転がして、
それをフッと拾った人に「野球やりませんか?」って言う。
「6時に町営の野球場で待ってますから」と。
で、そんなに来ないだろうなぁと思ってたら、
昔、野球やってたって言う人が、やっぱり何人か来たんだよね。
若い人から、60歳のじいさんまで。
結局8人くらいしか集まらなかったけど、
それでもチームを組んで、試合をやったのよ。
なんだかね、心地よかったのよ、その光景が。
樋口
あれ、泣けましたよ、ホントに。
山本さんがね、ホントに野球大好きじゃないですか。
それが伝わってくるんですよ。
約束の時間になるまでに、山本さんが球場でグラウンドの整備したり、
白線を引いたりしてるところが、またたまらなかったんですよ。
高須
嬉しいなぁ、よく見ててくれたんやねぇ。
樋口
MBSからテープ取り寄せて、ホントによく見てました。
高須
またああいうの、やりたいなぁ。
樋口
見たいですねぇ。
あの番組は、ベースがあったかかった。
ひるごはんにラーメン屋に並んでる OLへ話しかけて、
「ラーメン食べたいんですか。じゃあ、今から北海道まで行きましょう」
って、チケット渡して本当に北海道行く企画もおもしろかったですよ。
OLの人が心にモヤモヤ抱えてて、上司とうまくあわなかったりしてて。
それが突然の北海道への旅の途中で、ほろっと出てくるんですよね。
その話が出てきた時点で、
もう飛行機乗って北海道にラーメン食べに行くっていう単純な話じゃ
なくなってるんですよ。
なんかほんわかするし、涙が出てきたりする。
高須
日常を非日常に変える。
本来なら職場と自宅を往復するだけの一日が、何故か北海道へ。
しかも、何も特別じゃない普通の人が。
芸能人がそんなことしたって、おもしろくもなんともない。
あくまで普通の人達、素人の人達。
そういうのが夢があって、あったかかったのかなぁと。
樋口
そう、普通の人にターゲットを絞ってるからこそ、なおさら。
高須
あの頃ってちょうど、そういうのを作りたかったんだと思う。
バカみたいな番組ばっかり作ってたし、
自分はくだらないこといっぱい考えてテレビ作ってればいいと思ってたのよ。
だけど、ある時フッと、タイミングで思う。
「こんなんばっかりでええんか?」と。
樋口
あるんですよね、読後感のさわやかさみたいな物に
目を留める時期が。
高須
そう、このままじゃいかんなぁと。
『からくり』とか見てたら、やっぱり後に残るほわっとした
あったかさがあるわけよ。
「こういうのいいなぁ~」と。
それで作ったのが『豪快!御影屋』だったのよね。
樋口
バラエティ作り続けてると、そこの流れって来ますよね。
ほわっとしたものに惹かれるタイミングが。
高須
来るね。かならず来るよ。
第7話へつづく
放送作家
樋口卓治 さん
放送作家 1964年札幌出身
CX「笑っていいとも!」「ヨルタモリ」
TBS「金スマ」「ぴったんこカンカン」
テレ朝「Qさま!!」「お願いランキング」
著書「ボクの妻と結婚してください。」「失敗屋ファーザー」「天国マイレージ」(いずれも講談社)