前半はチンコがプラプラする話が延々と続くのですが、後半になるとプラプラするチンコのことを忘れてしまうほどに、バラエティ&芸人について熱く、正直に語り合ったのが樋口さん回でした。数字ばかりを追いかけるスタイルに物申し、放送作家の華やかさばかりが取り上げられがちだった当時に、ただ熱く熱く、真面目に、おもしろいものを世に残そうと奮闘する……はたらくおっさんのカッコよさが全開です!
取材・文/サガコ
インタビュー
第4話
2004.07うわぁぁぁぁ! な気持ち
高須
これはみんなに聞いてるんだけど、
樋口くんの原点というか、
テレビを作る上で背骨になってるものってどんな番組?
樋口
これはもうありきたりですけど『ひょうきん族』ですかね。
高須さん達と同じ世代ですから、このへんですよね?
高須
やっぱりそうなるよなぁ。『THEMANZAI』とか見てた?
樋口
見てました、見てました。
高須
誰が好きだった?
樋口
ん~、やっぱり一番はツービート。
高須
うんうんうん。
樋口
だけど、個人的にはさんまさんも大好きだったんですよ。
高須
だったら、『からくりTV』に自分が関わってるなんて
とんでもなく夢みたいなことだよねぇ。
遂にきた! みたいなさ。
樋口
もうホントそうですよ!
実際に会ったら、倒れるかと思いましたよ。
高須
嬉しいんだよねぇ、憧れの芸人さんに会うってのがさ。
僕にとっては「東のビートたけし、西の島田紳助」だったんだけどね。
この業界に入る時、まず吉本の大崎さんに会うことになって
ダウンタウンの2人に連れられて、東京吉本の事務所に行ったのよ。
当時は東京吉本なんて立ち上がったばっかりで、
どこかのマンションの一室借りて、2DKに電話一本ひいて、
デスクひとつ置いて、みたいな感じ。
トイレなんかユニットバスで、汚い歯ブラシとか落っこちてんの。
んで、そんな東京吉本に行ったら、
なんと憧れの島田紳助がいたわけよ。
樋口
おお~!
高須
大崎さんと話してたら、トイレの方から水の流れる音がして、
ガチャッと扉が開いたら、そこから紳助さんが出てきたから
「うわぁぁぁっ!」って、心の中で叫び声(笑)。
樋口
人生のドッキリみたいなもんですよね(笑)。
高須
まさしくそんな感じ!
ダウンタウンもちょっと緊張してたし、俺なんてまだ業界入りたてで
いつか会えるかな~くらいに思ってたら、いきなりなんてさー。
しかも、自分が大崎さんと打ち合わせしてるトコに、横から
「吉本は嘘つきばっかりやで、信じたらアカンで」
とかツッコミを入れてくれて。
あの、島田紳助が! 俺の会話に! ツッコんでる!(笑)
この業界入って良かった~と思った瞬間だった。
松本に誘われてよかったな~と。
樋口
憧れの芸人に会えるって言うのは、すごいことですよね。
高須
しかも一緒に番組作ったりなんて、想像もつかないよね~。
樋口
うんうん。
高須
それで『からくり』でバラエティを始めた後は、もうトントン拍子?
樋口
トントン拍子ってわけじゃないんですが、
1本バラエティを持ったら、
他の番組の人達がウィンドウショッピングしてくれるじゃないですか。
番組を見て「へぇ、『からくり』やってる人なんだ」みたいな。
それで、次に決まったのが『TOKIOHEADS』だったんですよ。
高須
おー、なるほど。
その時はゴウちゃん(合田隆信TBS『ガチンコ』など演出)が
呼んでくれたの?
樋口
ですね。
当時『からくり』がちょっとしたブームみたいになってて、
数字がすごく良かったんですよ。
その中でも僕は「ビデオレター」のコーナーを担当させてもらってて、
それがすごく評判が良かったから、そのご褒美って意味もあっての
新番組起用だったのかもしれません。
高須
「ビデオレター」はすごいコーナーだからね~。
良くできてるなぁと思うもん。おもしろい。
樋口
あれこそ、詩村さんのおっしゃってた『フリオチフォロー』ですよ。
高須
ヒット番組っていうのは、番組の顔になる企画っていうのがあるでしょ。
例えば『学校へ行こう』だったら、
僕はおちくんの考えた「未成年の主張」がそれにあたると思うし、
『からくり』だったら、間違いなく「ビデオレター」だと思うもん。
海外のVTRもおもしろいけど、ビデオレターは秀逸だと思う。
樋口
出てる素人の方たちが、もうなんとも言えずいいんですよ。
高須
あれは樋口くんのアイデアなの?
樋口
最初は江藤と話しているウチにカタチが出来上がったんです。
(※江藤俊久「学校へ行こう!」「ぶっちゃけ99」総合演出)
とはいえ、あの企画にも詩村さんとか大岩さんとか、超人の皆さんの
意見がたくさん入ってますね。
例えばタイトルを『からくりビデオレター』にした方がいい、とか。
高須
そういう……なんていうのかなぁ。
あのへんの人達の、何十年もテレビを作りつつづけてきて見えてくる
微妙なことが、俺らには絶対分からなかったりするよね。
樋口
うん、ありますね。そういうの。
高須
ささいなことなんだよ、タイトルの言葉尻とか。
だけど、それがパッケージ感を左右したりする。
樋口
そうなんですよ。
僕らだけでビデオレターを考えてた時は、
やっぱりお笑い大好きだから、
おもしろいものにしたいなぁと思うじゃないですか。
だけど、大岩さんのアドバイスは「感動をベースにひけ」と。
高須
すごい、確かにそれが正解だもんね。
樋口
おもしろいことをいうぞ、という目線にしたら、
おもしろくなかった場合に評価下がるわけですよ。
だけど感動がベースにあれば、たとえおもしろくなくったって
視聴者は文句を言ったりしないし、おもしろかったら
「うわ、感動もあるのに、おもしろいっ!」と、評価が上がる。
高須
うまいよね。優秀な企画だなぁと、あらためて思うよ。
樋口
ビデオレターにしても、他の企画にしても、
『からくり』の中で超人の皆さんから学んだことは、
ホントに多いんです。
第5話へつづく
放送作家
樋口卓治 さん
放送作家 1964年札幌出身
CX「笑っていいとも!」「ヨルタモリ」
TBS「金スマ」「ぴったんこカンカン」
テレ朝「Qさま!!」「お願いランキング」
著書「ボクの妻と結婚してください。」「失敗屋ファーザー」「天国マイレージ」(いずれも講談社)