御影屋

高須光聖がキク「高須光聖×樋口卓治」 第4話

前半はチンコがプラプラする話が延々と続くのですが、後半になるとプラプラするチンコのことを忘れてしまうほどに、バラエティ&芸人について熱く、正直に語り合ったのが樋口さん回でした。数字ばかりを追いかけるスタイルに物申し、放送作家の華やかさばかりが取り上げられがちだった当時に、ただ熱く熱く、真面目に、おもしろいものを世に残そうと奮闘する……はたらくおっさんのカッコよさが全開です!
取材・文/サガコ

インタビュー

第3話

2004.07

からくりテレビにて

からくりテレビにて

樋口

そうしたら、30歳ちょっと前に
『さんまのからくりテレビ』の問題を作る作家っていうことで、
初めてバラエティ番組に関われることになったんです。

高須

TBSで初めてのバラエティだったんだね。
入ってみて、実際バラエティやってみた時ってどうだった?

樋口

単純に楽しくて、うれしかったですね~。
大御所の作家さんから吸収することも多かったですし。

高須

大岩さんやら、詩村さんやら、高橋さんにめぐみさん……。
すっごいメンバーだもんね。

樋口

ですね~。

高須

担当コーナーってなんだったの?

樋口

特になかったというか、
コーナー担当したくても、コーナー企画が全然通らなくて(苦笑)。
業界じゃ有名な話かもしれないんですけど、
『からくり』って僕が入った当時は、会議で新企画のネタを出しても
誰もひとつも採用されなかったんですよ。

高須

あぁ、聞いたことあるなぁ、その話。

樋口

3年間くらいかな。採用ゼロゼロゼロ……。
海外のVTRがすごく充実してたので、新企画が通らなくても、
番組自体が全然大丈夫だったってのもあるんですけども。
だけど、出しても出しても、通らない。
先輩の作家さんたちに見向きもされないわけです。

高須

うんうん。

樋口

で、いつだったか……僕とディレクターの塚ちゃん(塚田D)ってのがいて、
彼と二人で「これはイケる!」っていう企画ができたんですよ。
それで会議に出して、自信たっぷりにプレゼンしてみたら
ものの見事にシーンとしちゃって(苦笑)。

高須

それはどんな企画だったの?

樋口

『すれ違い様ショー』っていって、
左右からベルトコンベアに乗って人がやってきて、
すれ違いざまに一言だけ交わす、という。

高須

はいはい、なるほど。

樋口

例えば一人娘のお父さんと、その彼氏がすれ違って
「今度、娘さんと温泉行っていいですか?」
「ダメ」

高須

うんうん、わかる。

樋口

だけど、会議では全然おもしろがってもらえなくて。
どうしてなんだろう、と塚ちゃんと二人で反省会。
おもしろいはずなんだけどなぁ、と。
そしたら、僕らのところにいきなりピョコッと詩村さんが現れたんですよ。
独特の、あの風体で(笑)。

高須

詩村さん、独特なのよね(笑)。

-----

どんな方なんですか?

高須

真っ黒のジャージ上下でいつも居て、
酒とスルメばっかり食べてる人。

樋口

で、そのジャージのポケットから
ハイライトが1カートン、まんまはみ出してたりする人。

-----

それはたしかに独特ですね……。

樋口

そう、不思議なんです。
で、その不思議な人がいきなり現れて(笑)、
考え込んでる僕たちのところまでするするっとやってきて、
「ホントは10万くらいもらわないと教えられないことなんだけど、
お前たち頑張ってるから、特別に教えてやる」って言って、
ホワイトボードにでっかく
『フリオチフォロー』って書いたんですよ。

高須

ふんふん。

樋口

で、指差して「これ3つ、わかる?」と。
僕らも「それくらいは知ってますよ」って感じだったんですけど、
よくよく考えたら、
改めてその3つを理論的に説明されたことってなかったんですね。
詩村さんが指差しながら
「フリがあって、オチがあって、フォローがある」。
からくりのビデオでいったら「子供が楽しそうに遊んでる=これがフリ」。
で、そんな子供が「派手にいきなり転んじゃう=これがオチ」。
詩村さんが言うには「馬鹿なディレクターはここで終わってしまう」と。
だけど、
「子供が起き上がって、にこっと笑う」ってところまでVTRを使うと、
見ている側は、あぁ、怪我しなかったんだな、よかったな~、って思って、
ここで初めて「いい笑い=フォロー」になるんだよ、と。
それだけ言って、
詩村さんは「これ覚えとけよー」て、去っていったんですよ。

高須

なるほどー。すごいなぁ、やっぱり。なんて貴重なアドバイス。

樋口

僕らはその説明で、目からうろこがボロボロボロって落ちちゃって。
自分たちの考えてる笑いを「フリオチフォロー」なんて、
間仕切りに入れて考えたことなかったですから。
おもしろいって思ってたけど、ベルトコンベアショーには
フォローとか全くないって分かったんです。
「あぁ、なるほどなぁ、見向きもされないわけだよ」と。
その一件があってから考え方が変わってきて、
『からくり』でようやく企画が通るようになっていったんです。

高須

やっぱり、先輩たちは偉大だなぁ、と。

樋口

ですね、あれがなかったらなんにも分かってないまま
来ちゃってたかもしれませんからね。

高須

先輩たちは、さすがだなぁ~。

第4話へつづく

放送作家

樋口卓治 さん

放送作家 1964年札幌出身
CX「笑っていいとも!」「ヨルタモリ」
TBS「金スマ」「ぴったんこカンカン」
テレ朝「Qさま!!」「お願いランキング」
著書「ボクの妻と結婚してください。」「失敗屋ファーザー」「天国マイレージ」(いずれも講談社)

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