『電波少年』『ザ!鉄腕!DASH!!』など、ヒット番組に次々携わる田中さんは、高須さんいわく「理論派の放送作家」。田舎で育った経験から生まれた「DASH村」、ヒットを確信した瞬間は○がおりた時!? 幼い頃に見てきた原風景から導き出されるバラエティ企画のリアルな落としどころについての話など、ヒットの秘密がたくさんわかる話が目白押しの回です。
インタビュー
第6話
2007.09確信した瞬間
高須
簡単に言うのも難しいだろうけど、これはイケる!って確信したのは何?
田中
霜で全滅したときですね。
村のスタッフから「霜がきそうなんで、どう対策をしましょう?」
って電話がきたんですけど、ハウスをかけると霜が見えなくなるから
「ハウスはかけるな」と指示したんです。
霜を見せて、霜がきたらどういうことになるのかっていうことを
見せなきゃいけないと考えたんです。
農家の人だって、うっかりするとやられてしまう恐ろしいものですから。
で、農作物が枯れていく場面を映像で撮ったときに、
スタッフみんなが泣きそうになって「ああ、これだな」と思いました。
高須
そりゃ、泣いてまうよね。
それだけの思い入れ持ってずーっとやってるんやからね。
で、またあのおじいちゃんがええのよねえ(笑)。
田中
本当は最初違う人にお願いする予定だったんですよ。
でも、たまたまあの(三瓶)明雄さんになったんです。
当初お願いするはずだった方が、ロケの日にパチンコに行っちゃったんですよ(笑)。
高須
ええっ、そうなんや!
でもあの人がいい、ええみっけもんしたやねえ(笑)。
なんか"日本のおじいちゃん"って感じがすんのよね。
田中
あはは。実は、とっても偉い人だったりするんですけどね。
高須
へ~!俺も田舎が愛知県やねんけど、俺が住んでたのは
子供の頃の僅かな時間やったから分からへんかったけど、
その頃味わった田舎の感覚がちょっとだけ残ってんのよね。
で、うちの親父も「DASH村」が好きでよう見てんねんけど、
『となりのトトロ』を観てる感覚に近いねんて。
昔育った田舎の原風景を見てるような感覚なのよね。
テレビではいい感じに撮ってるけど、
ほんまは田植えだってめっちゃ鬱陶しいし、泥で足をクチュってやったら
気持ち良さそうに見えるけど、小っちゃいヒルがおったりとか、
見たこともないような虫がピュ~っと走ったりとか、
ほんまは気持ち悪かったりするやんか。
でも、ちゃんとやってみたくなるように撮ってるところが、
うちの親父は孫に喋りながら見とって楽しいって言うのよ。
ほんまようできた企画だと思うよ、あれは。ほんまに素晴らしい。
そんでもって視聴率が20%超えると、
おめでとうって田中くんがスタッフになんか買っていくんやろ?
田中
ああ、でも最近はなかなかないですけど。
高須
普通は制作のプロデューサーだとか、編成が買ったりだとかするんだけど、
田中くんが買っていくんやんな。ほんまよくできた作家なのよ(笑)。
そうすると、俺はみんなに言われるわけよ、「高須さんは?」って。
まあ、俺は20%も取ってないけどね(笑)。そういうときって、何買っていくの?
田中
いや、デスクの人に言って、夕方からの会議だったんで飯を……。
寿司だったり鰻だったり焼肉だったり。
でもさすがにそれが続いたときは夫婦仲が悪くなりますよ(笑)。
高須
あはは!でも、スタッフは嬉しいよね。
田中
だって、ロケ大変ですもん。
高須
そうだよね。ずっとロケに行ってるスタッフを考えたらね。
あとこれもずっと思ってたんやけど、日本のロハスブームを作ったんって、
『ザ!鉄腕!DASH!!』じゃない?
田中
時期的にもちょうど『チルチンびと』とかが雑誌に出だした頃だったから、
そういうイメージがあるのかも知れないですけどね。
高須
でも、ものすごく貢献してるよね。
田中
これは前の総合演出からの方針なんですけど、
そういったロハス的な言葉を一切使わないんですよ。
エコとかも一切言わないし。
高須
それはあえて言わないの?
田中
こっちは悪く言うと、遊びでやってることなんで。
高須
またカッコイイ。ちゃんとしたポリシーがあるやん。
こんなことサラっ言われたら、ほんまたまらんわ(笑)。
田中
いやいや(笑)。
でも、付け足すとすると、僕の地元も田舎だから農家の人が多いんで、
地元の農家の人たちに怒られないように作ろうと、
それはちょっとは気にしてたりします(笑)。
高須
ちょっとは違うこともある?
田中
ありますよ。
それは環境による誤差もあるんで多少は仕方がないんですけど、
明らかに違うことをすると、僕が実家に帰ったときに言われるから。
高須
あれはなんだ!と(笑)。
田中
有難いことに、みんな厳しい目で見てくれてて(笑)。
第7話へつづく
放送作家
田中直人 さん
1964(昭和39)青森県木造町(現・つがる市)生まれ。
青山学院大学3年在学中より伊藤輝夫(現・テリー伊藤)の下で放送作家に。
初めての番組『コムサデとんねるず』(フジ)
好きなもの:猫・温泉・演劇・ラグビー・アーモンド・辛くないカレー