御影屋

高須光聖がキク「高須光聖×田中直人」 第4話

『電波少年』『ザ!鉄腕!DASH!!』など、ヒット番組に次々携わる田中さんは、高須さんいわく「理論派の放送作家」。田舎で育った経験から生まれた「DASH村」、ヒットを確信した瞬間は○がおりた時!? 幼い頃に見てきた原風景から導き出されるバラエティ企画のリアルな落としどころについての話など、ヒットの秘密がたくさんわかる話が目白押しの回です。

インタビュー

第3話

2007.09

ロコモーション入社

高須

で、上京してきて、ロコモーションに入ったわけや。
最初って、面接みたいなものもあったの?

田中

1対1の面接はなかったですね。
最初はテレビ番組でやりたい企画を書いて送るんですよ。
右も左も分からないもんだから、400字詰めのタテ書きの原稿用紙に
途中イラストを入れたりしつつ、2枚くらい書いて・・・

高須

それ、見にくいなあ~(笑)。

田中

まっそうなんですけど、それを送ったら電話がきたんですよ。

高須

いきなりチャンスやん。

田中

で、「夏休みだから時間あるんじゃないの?」って言われて、
「ありますあります」と言うことで。

高須

ロコモーションの社員になるわけじゃないけど、
伊藤さんが預かったる、っていうことでしょ?

田中

ええ、そうです。

高須

いざ入ってからはどういうことをするの?

田中

まず、ロコモーションのあるマンションの一室に全員集められるんですよ。
そこで、ネタを発表させられるんです。
ただただ、そういうことをやってましたね。

高須

へえ~。そんときには、そーたにくんとかもういたの?

田中

いましたね。一期にあたる人が10数名いましたね。

高須

ええっ、そんなに!

田中

二期も10人くらいいたんですよ。
それからも細々と途中から入ってくる人もいて、
結果的には全部で30人くらい居たでしょうね。

高須

へえ~!すごいねえ。30人いて、残ってる人はどれくらいなん?

田中

二期は10人中残ってるのは俺ひとりなんですよ。みんな辞めちゃって。

高須

けっこう早めに辞めるもん?

田中

徐々にですけどね。
一期の方が伊藤さんとがっつり関係ができていたし、二期は一期ほど
すぐには仕事に付けなくて、ぶらぶらしてる時期も長かったんですよね。

高須

最初にどんな仕事やったの?

田中

実践的な仕事では、バラエティ特番のネタ出しですね。
と言っても、ただ書いて出すだけで会議には呼ばれないんですよ。
しばらくすると呼ばれるっていう。

高須

それはネタが採用された人が呼ばれるの?

田中

まあ、そういうのとか芽がありそうな人ですね。
そこへ呼ばれなかったり、なかなかお声がかからない人が去って行った感じですね。
あとは大学の3年4年が多かったんで就職の方を選んだりとか。

高須

なるほど。で、会議に呼ばれるようになって、
ロコモーションっていうチームの中に入っていくわけやんか。
実際にテレビの仕事やってみてどうやったん?

田中

全然分からないことだらけですよね。
面白いことはいっぱい提案してるつもりなんだけど、
そうじゃないものがウケたりするわけですよ。
上手いネタを考えればいいのか、独創的なネタがいいのか、パターンを狙いつつ
いろいろ考えてましたね(笑)。
会議には目上の人がいっぱいいて、理論じゃまったく勝てないんですよね。
経験もないし。その目上の人達はいいことをいっぱい言って、
「ああ、なるほどな~さすがだな~」とか思うんだけど、出してるネタ自体は
面白いとは限らない。これは、自分でも大丈夫だろうって(笑)。

高須

あはは(笑)。それイヤやな~。

田中

僕、今でも会議ではまったく理論派じゃないんですよ。

高須

そうなんや!
俺、ものすごい理論派で、えらい痛いとこをガツーンと突くタイプに
イメージしてたわ。

田中

いや、まったく違いますね。
人(作家)が言ったことを否定できないんですよ。
テレビにした時に何がウケるかという正解が、この時点ではないですから。
ディレクターに提案としては言うんですけど、作家がいる会議だと
出てきたネタを尊重して補足するぐらい。

高須

でも、明らかに自分が進めたい方向じゃないときがあるじゃない。
自分が思い描く完成系と違う方にどんどん進んでいってるなあってときは
どうすんの?

田中

余程のことがないと放っておきますね。代案があればいいんですけど。
戻す代案がないときはいくら言っても伝わらないだろうなっていうのもありますし。

高須

そうか。
俺はそこで一回黙ってみるけど、行き止まりになったところで、
一度交通整理するふりして誘導していくね(笑)。

田中

あと僕ね、メモを取るんですよ。
どういう話の流れになったかを忘れないようにメモっておくと、
あとで見返したときにこっちの方が正しいときがあるんで。

高須

へぇ~。ネタ帳みたいなものも持ってるの?

田中

番組でもらったコピーの紙ですね。
アレを番組ごとにファイルしておいて、それにペラペラっと書くんです。

高須

すぐに分からなくならへん?
俺もコピーとかにペロっと書くんやけど、すぐ千切ってどっかやってしまうねん。
あとで見ても何を書いたか、どこに書いたか、さっぱり分からへんねん(笑)。

田中

字がヘタで粗雑な分、僕は大事なものには線を引いたりしてます。
自分には確固たる理屈がないから、余計に書いておかないと
あとで思い出せないんですよ。

高須

性格の違いやな~。

第4話へつづく

放送作家

田中直人 さん

1964(昭和39)青森県木造町(現・つがる市)生まれ。
青山学院大学3年在学中より伊藤輝夫(現・テリー伊藤)の下で放送作家に。
初めての番組『コムサデとんねるず』(フジ)
好きなもの:猫・温泉・演劇・ラグビー・アーモンド・辛くないカレー

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