御影屋

高須光聖がキク「高須光聖×佐々木勝俊」 第3話

「御影湯」史上、いちばん騒がしかった対談でした。佐々木さんはものすごくパワフルに、遊びと真剣さが足りない当時のテレビ業界を「こんなんじゃつまんないよ!」と言い切る方でした。放送作家でありながら、そこだけに留まらない。惜しまない。ブレーキがない。景山民夫さんとのとんでもない思い出話や、洋服ブランド時代の過去はほとんど伝説級。くだらなさに向かってアクセルを全開にできるオトナの存在感が満ちた内容です。今の若い人達にどんな印象を残すのでしょうか?

インタビュー

第3話

2002.04

放送ハッカーとして

高須

会議でよく靴電話してますよね~、勝俊さん。

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くつでんわ??

高須

靴片方脱いで「はい、もしもし?」とかやってんねん、この人。

佐々木

だって、会議長すぎるんだもん!
30分番組の会議なのに、それを4時間も5時間もぐずぐずやってごらんよ。
俺が出前の決取ろうかって思うよ。
「中華、誰ー?」「長寿庵、誰ー?」(笑)
たばこ吸うのやめたら時間半分になるんじゃないかっていう会議だって
あるじゃない。

高須

ありますねぇ。

佐々木

「昨日、息子に聞いたんだけどさぁ……」っていう
プロデューサーとかいるじゃない、。
馬鹿野郎、それなら息子呼んでこい、みたいなね。
その方が早いだろ、と。
コントみたいな会議が多すぎる。
コント考えずに、その場がコントでどうすんだ、と。

高須

しかし勝俊さんって、本当にいつもテンション高いですよね。
勝俊さんと一緒の会議のとき、僕よく傍観者になっちゃうんですよ。

佐々木

今年のテーマはちなみに「大人げない」。
「大人げないなぁ」って言われなくちゃダメなんじゃないかなと思ってる。
今年、49だしね。矢沢のふたつ下だしね。

高須

永ちゃんは関係ないでしょ。
もう~それ言いたいだけやもんなぁ。

佐々木

うん(笑)。

高須

勝俊さん、いろんな特許も持ってるんですよね。なんでしたっけ、ほら。

佐々木

そこにある「折り畳み式神棚」は特許だよ。

高須

あーっ、そうそう、これこれっ。これもすごい発明ですよね~。
(飛び出す絵本のようになっている紙製の神棚)
だって、勝俊さんのそのアイデアをものすごい値段で売ってくれって
言ってきたりしてるんですもんね。

佐々木

うん、でも売らない。
単純に自分のアイデアに酔ってるだけなんだと思うから(笑)。

高須

もったいない(笑)。

佐々木

聞かせたいんだよね、自分のアイデアをさぁ。
たくさん現場に接してる高須くんだったら
理解してくれるんじゃないかって思うようなことが
たくさん貯まってるんだよ。

高須

いや、そんなん全然オッケーですよ。
こっちこそものすごく聞きたいですよ~。

佐々木

でも、仕事でしょ?

高須

今日は、そうですけど、いや時間作りますよっ、絶対!

佐々木

ほぉら、人気作家はこれだもん~。(笑)

高須

マジで時間作りますよ。

高須

それはそうと、これから放送作家ってどうなると思います?

佐々木

もっと遊び心があってもいいんじゃないの、とは思うけどなぁ。
女遊びとかじゃなくさ。

高須

この業界の人って、ほんとに女遊び好きですよね。

佐々木

そっちじゃないんだよなぁ、と僕なんかは思う。
俺、景山民夫さんと同じマンション住んでた時、いろんなことして遊んでたよ。
民夫さんの部屋に夜食持っていったりしてたんだけど、
ちゃんと「日本食堂」のコスプレして出前してたからね。

高須

そんなことしてたんですか!

佐々木

フラダンサーの女の子を二人雇って、横につけてね。

高須

コスプレの出張ヘルス嬢みたいですね(笑)。

佐々木

ハワイアン流しながら「民夫さんっ、お夜食ですっ」ってドアを開けると、
民夫さん「悪い……ギリギリなんだ……明日にしてくれないか……」って言うの。
ものすごい〆切の前でさぁ。
元気づけようと思ったんだけど、ギリギリすぎたのね(笑)。
しょぼーん、だよ。(笑)

高須

それはでも、民夫さんはものすごく嬉しかったでしょうねぇ。

佐々木

そう、だからちゃんとお返ししてくれるの。
そのお返しがまたすごいのさ。
次の日、俺はハワイアンのお姉ちゃんたちと踊り狂って大騒ぎして
一夜を過ごし、朝になって会議に行かなくちゃっていうんで、
部屋を出てエレベーターが開いたらさ、
入り口で民夫さんがお巡りさんの格好して立ってるんだよ(笑)。
「おつかれさまですっ」って。

高須

それすごい! 景山民夫さんっていい人や(笑)。

佐々木

でしょっ?

高須

それはいい!それはいいですわ~、勝俊さん~。
あー、そんなんすっごいうらやましいなぁ~。
おまけに、民夫さんってマイ消防車持ってたんですよね?

佐々木

そうそう。本当に大型の消防車。
どこに停めても駐車違反にならないんだって。
よく乗せてもらってたんだ。
「いやー、民夫さん。真っ赤なスポーツカーで、
オープンカーだって聞いてたんですけど、ずいぶん立派なんですね~。
あれっ、民夫さん、この車、灰皿ないんですかっ!?」(笑)
ええっ、そんなの、外に捨てろって!?」(笑)

高須

2人とも、ほとんどキチガイじゃないですかっ!

佐々木

だから、テレビの中でコントをつくろうって言う気がしないんだよねぇ。
テレビの中でやる方がちっちゃいな、って気がしちゃう。

高須

昔は良かったんだなぁ。そうやって業界の人間がずっと日常でバカやれて。
いい時代ですよね。
やっぱりテレビの人って、どこかハチャメチャじゃないとダメですよね。
最近はちょっとハメ外すと、すぐ雑誌とかに叩かれちゃってアウトですもん。
マジで羨ましいっすねぇ。ホントの意味で「大人げなかった」んですもんね。

佐々木

そう。ふざけてなきゃダメだったんだから。
今はどこもかしこも「ふざけてる場合じゃない」っていう空気じゃない?
僕みたいなのにはしんどいよ~。

佐々木

「なんとかテレビ局に自由に入れる方法無いかなぁ~」って思って
辿り着いた職業なんだよ。
ハッカーみたいなもんだよ。「何とか侵入してぇよ!」って(笑)。

高須

ハッカーかぁ、なるほど。

佐々木

何でもかんでもそんな気持ちでやりゃあいいってもんじゃないけどさ、
それくらいの気持ちでやっててもいいんじゃないの?
真面目すぎね! みんなっ。

高須

ですねぇ…遊び心なくしてますねぇ。
勝俊さんはこれから先、どうしていくんですか?
何をやってみたいんですか?

佐々木

最近で言うと僕はまた洋服関係の仕事が復活してるんだよ。

高須

そうなんですか? どんなことやってるんですか?

佐々木

新しいブランドを立ち上げてみたりとか。
大久保篤志っていうスタイリストがいて、彼が一番最初に
いわゆる「かっこいいスタイリスト」として注目された走りなんだけど、
彼と一緒に、というか……彼が作り上げるブランドにコンセプトを
足してるっていうのかな。
ブランド名はね『RIPPA』っていうんだ。
「どう、この服、立派でしょ!」って言えちゃうの(笑)。

高須

らしいなぁ、もう、そのネーミング(笑)。
でも、かっこいいですねぇ。
50歳のオヤジが今でもかっこいいって思えるってスゴイことですよ。

佐々木

モバイルの新しいシステムも考えてたりするしねー、
いろいろやってるんだよ~。

高須

そのあたりはこのまま放送作家もやっていきつつ、ですか?

佐々木

放送作家と言うよりは……『放送ハッカー』だよね。
自分が楽しんでないとダメだもん、やっぱり。
昨日一日かけて必死でやってたのはねぇ、梅干し漬けることだもん。

高須

ほう、これはまた一気に50のオヤジっぽくなりましたね。

佐々木

いざやってみようと思ったら紀州の梅とか、
水戸のがいいとかいろいろあって、すごいのよ。
で、そういうのを一気に集中して一日でやっちゃわないと
気が済まないんだ。そんで、一日費やしてたもん。

高須

オタクですね、ホントに。

佐々木

グループサウンズのレコード集めたいな、と思ったら、
3年かけて集めるのはイヤなの。
2週間仕事しなくてもいいから、短期間でガバッと攻略したいんだ。
そんなことばっかりしてきたからか、最近ではいろんなモノ集めるの、
すごく速くなったもん。それがまた楽しいんだよ~。

高須

勝俊さんはええなぁ……うらやましいなぁ。
ほんまに楽しんでますもんねー、いろんなことを。
僕、あと10年とちょっとで勝俊さんの歳になるんですよ。
その時、自分が何をしてるのかな、何をできているのかな、
と思ったりして今から考えとかんとなぁ、と思ったりしてるんですけどね。
今の自分から変われるかなぁって。

佐々木

高須くん、これだけレギュラーこなしたら、
身体がボロボロになっていくっていうのはもう分かったでしょう?

高須

はい、かなり。

佐々木

僕なんか、ほら、こんなに毛がボロボロ……。

高須

はい、かなり。

佐々木

おい!(笑)
忙しすぎて体を壊すとさ、余裕が無くなっていくんだよ。
やりたいことが何もやれなくなっていくストレスって、すごいもん。

高須

そうなんですよ。今の放送作家って、みんなある種
ワーカホリックですよね。
僕も含めて働き過ぎなんですよ、絶対に。

佐々木

忙しいって事はお金儲けができてるってことでしょ。
そしたら、お金儲けすること自体がストレスになっていくんだよ。
実は嬉しいことも楽しいことも、全部ストレスなんだよ。
哀しい、苦しいだけじゃない。
子供が遠足楽しみにしすぎてお腹痛くなったりするじゃない?
仕事が忙しすぎると、なんかそんな感じなんだと思うんだ。
やりたいことやれてる時期もあって、確かに気持ちいいんだけど、
それがどうもストレスとして溜まっていって、何してんのか分からなくなる。

高須

たしかに好きなことって、なまじっか自信があるから、ダメだった時の
落ち込み方って半端じゃないですよね。
それが、大きなストレスになってるのは確かですよ。

佐々木

作家の仕事を結構やってた30過ぎの時、俺ふと思ったもん。
「このままやってたら、どうなっちゃうんだろう」って。
「今日は晴れだから梅干し漬ける、今日は雨だから仕事休み」
っていうほうがいいじゃん。

高須

僕、どこかで変えようと思ってるんですよ。

佐々木

うん、それはね、高須くん、冗談じゃなく変えた方がいいと思うよ。
僕のやり方はきっと8割方間違ってるけどね(笑)

高須

えっ! ここまで熱弁ふるっといて、間違ってんの!?

佐々木

いや、それは人それぞれにあった変え方って言うのがあると思うからだよ。

佐々木

あと大切にしてるのは、いかに臨機応変に動くかってこと。
感性なんて才能はどこにだって転がってると思うんだ。
人間の度量なんて「真面目さ」と「臨機応変さ」でしか、
差が出ないんじゃないかと思うしね。
だから、最近は会議とかでも出し惜しみしないもん。
「これは取っておいた方がいい!」という企画とか、ネタとか、
場を問わずにバンバン出しちゃう。
昔は自分を追い込もうと思って「出し惜しまない」って決めてたけど、
今は違う。風を入れ換える、頭を入れ換えるって感覚なの。
新しい風を入れるスペースを作って、窓を開ければ、
風は入ってくるんだよ。

高須

僕はいつも自分を追い込む感覚で仕事してますよ。

佐々木

ちがう。追い込むんじゃないんだ、風を入れ換えるの。

高須

なるほどなぁ。

佐々木

その代わり、会議で出すときは、少し恩着せがましくね。
「これ出したら、大金星ですか!?」って最初にちょっと振りをいれよう(笑)。
「えっ!? 金星じゃない? だったら言わなーい」とかね(笑)。
会議を自分の方にうまく落とし込むっていうのかな。
そしたら、楽になるよ~?

高須

そういうもんですかね……。いやぁ、できない、カンタンには。

佐々木

出し惜しまない。風を入れ換えるんだよ、高須くん。

高須

風の入れ換え、なぁ…。うん…。
なんか、勝俊さんがヨーダのように見えてきたなぁ~(笑)

御影湯佐々木勝俊の湯おしまい
「勝俊さん、お忙しい中、たくさんのお話をありがとうございました!!」

おわり

放送作家

佐々木勝俊 さん

放送作家
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