「御影湯」史上、いちばん騒がしかった対談でした。佐々木さんはものすごくパワフルに、遊びと真剣さが足りない当時のテレビ業界を「こんなんじゃつまんないよ!」と言い切る方でした。放送作家でありながら、そこだけに留まらない。惜しまない。ブレーキがない。景山民夫さんとのとんでもない思い出話や、洋服ブランド時代の過去はほとんど伝説級。くだらなさに向かってアクセルを全開にできるオトナの存在感が満ちた内容です。今の若い人達にどんな印象を残すのでしょうか?
インタビュー
第2話
2002.04高須
洋服屋やりながら、テレビの世界に入り込んで、
景山民夫さんのバンドでベースやって……。
ほんっとにむちゃくちゃですけど、他にどんなむちゃくちゃが
あったんですか?
佐々木
いろんなことしすぎてて、今喋りながら自分でもよく分かってないなぁ。
えーと、それから何したっけなぁ。
『おもしろマップ』を民夫さん達が作って、
僕も出演させてもらったりして……それから『タモリ倶楽部』に移行して、
その『タモリ倶楽部』で初めて正式に構成作家として、
テレビ作りに携わったんだよ。
高須
『タモリ倶楽部』で作家デビューだったんですか?
佐々木
いや、テレビづくり自体はもっと前にもやってたんだよ。
朝のワイドショーのコーナー企画もんで、『東京の中のアメリカ』
って言うやつ。素人なのにその番組を任せられたりしてたの。
構成兼演出兼時々カメラ(笑)。
高須
それもまた、めちゃくちゃな話じゃないですか!
ドシロウトによくそこまでさせますねぇ。
佐々木
当時はそれでも成り立ってたんだよ。
高須
構成より先に、演出デビュー(笑)。
佐々木
ひどいことやってたよ~。
福生とか行って黒人に向かって「やーい、ド○ン~」って叫んで、
怒ってピューッと走ってくるのを撮ったりしてね(笑)。
高須
うわぁ~、タダのイタズラや(笑)。
佐々木
そうだねぇ。
高須
でも、考えてみたら、もうそんな頃から
『電波少年』みたいなことやってたんですね。
佐々木
そうそう、一人電波だね(笑)。
でも、一人で考えて、一人でカメラ回して……プロではなかったよね。
だけど、その頃にやってたその素人に毛が生えた程度の仕事の知り合いが、
今もたくさん周りにいてくれててね。
そういう意味では良い経験だったし、すごい財産だと思う。
高須
だって顔広いですもんねぇ、勝俊さん。
僕聞きましたけど、「不倫は文化」の石田純一さんも同級生なんでしょ?
佐々木
うん。小学校中学校のクラスメイト。でも今は何故か二つ年下(笑)。
高須
よく一緒に遊んでたんですか?
佐々木
悪い遊びをちょいとだけね……。
高須
なんか東京っ子って感じですねぇ。
佐々木
そうかなぁ。
高須
で、作家として『タモリ倶楽部』ではどんなことしたんですか?
佐々木
まずは、テーマ曲ね。
高須
おぉ! 選曲ですか?
佐々木
「ショート・ショーツ(ロイヤル・ティーンズ)」、
アレはたまたま家にあったレコードだから(笑)。
高須
出た! またいい加減ですねぇ。
佐々木
プロデューサーで演出家の菅原さんがちょうどお尻好きだったし、
これしかないかな、と思って。
高須
何が「ちょうど」か全然分かりませんけどね。
佐々木
音楽はともかくとして、菅原さんはとにかく
「映像でお尻を出したい! お尻が使いたい!」って
言い張ってきかないんだもん。
だったら、音楽もお尻がいいじゃない。
「ショート・ショーツ」ならバッチリじゃないの。
じゃなければロッド・スチュアートの「ホットパンツ」か
どっちかだと思ってたからね(笑)。
高須
そんなことであの曲は決まってたんですかぁ~、すげぇなぁ~。
……ていうか、えっ、菅原さんって、お尻好きなんですか?
佐々木
すっげぇお尻好き! 大のお尻好き!
あ、ここ大きな文字で書いといてね(笑)。
彼は語るからねぇ、お尻について。素晴らしいほどに。
高須
それで『タモリ倶楽部』のオープニングは、ずっとお尻なのか。
佐々木
あの人は天才だよ、何のお世辞もなく。
高須
僕は一緒にお仕事したことないんですよ。
佐々木
天才だけど、ギャラはシブイで~?(笑)
高須
あら、そうなんですか(笑)?
昔、サザンの桑田さんが中心になってやっていた
「メリークリマスショー」で、どえらい赤字の中でやったって
聞いてたから、それはそれは羽振りのいい方だと思ってたんですけどね。
佐々木
作りたいものには惜しまない。だから、教わることが多いの。すごく多い。
お金じゃ学べない技の部分、才能の部分を盗ませて貰えると思えたら、
一緒に仕事したらいいと思うよ。
高須
そうなんやぁ、なるほどねぇ~。
高須
じゃあ、作家として『タモリ倶楽部』始める前までは、
テロップに名前載ったりしなかったんですか?
佐々木
うん、出入りの洋服屋だからね(笑)。
高須
それって悔しかったりしませんでした?
佐々木
全然っ。
僕は今でも、テロップに名前載るかどうかはどうでもいいと思ってるよ。
高須
でも、そこに名前がなかったら、自分が作った証が
何も残らないじゃないですか。
佐々木
うん、確かにそれで損することは時々あったと思うなぁ。
その後、僕は『グッドモーニング』とかやったけど、
オナッターズの歌や『てんぱいぽんちん体操』とか作ったの、
実は僕だったんだよ。
高須
そうなんですか!?
さっきから実は実はの連発じゃないですか!
それって自慢ですか?
佐々木
しょうがないじゃん、名前出てないんだからさー(笑)。
アレは確か「作詞・西郷輝盛」ってことになってるんだ。
だけど「作詞・佐々木勝俊」だったら売れたのか?っていうと、
それは分からないわけで……。
高須
うーん、確かに。
佐々木
あの時も、本当は「作詞・西郷輝盛と作曲・ワニ河内」ってしてたんだけど、
誤植で「クニ河内」になってて、正しくなっちゃってたんだから!
冗談じゃないってーの(笑)。
高須
わーっ、最悪!
狙ったところをバッチリ正されてしまってるじゃないですか。(笑)
佐々木
「エノケソ」だっつーのに!
「アラソドロソ」だっつーのに!(笑)
全く、人の気持ちを分かってないよねぇ。
高須
だけど、そこまで名前変えたりできてたってことは、
本当に自分の名前でテレビつくるってところにこだわり無かったんですねー。
佐々木
テレビって絶対堅実じゃない世界だと疑ってかかってたし、
この世界でずっと食っていけるわけはないと思ってたからさ、
だから、あんまり名前とかにはこだわらなかった。
高須
なるほど。
佐々木
テレビって真面目につくろうとすればするほど
○○をしてしまったりするしね。
高須
あー、確かにそうですねぇ……○○になってしまうんですよねー。
佐々木
僕がどうしてフジテレビにしか出入りしてないか、知ってる?
高須
もしかして?
佐々木
ピンポン!
高須
まだ言ってないっすよ。
佐々木
あっ、そうだった?
高須
すいません、先に進めてもらっていいですか?
佐々木
理由は、あちこちのテレビ局で○○をしちゃってるからなんだよ。
高須
マジですか……?
佐々木
もうだいぶ前の話だし、それで別に「来るな! 出入り禁止!」って
言い渡されたわけではないんだけど、○○した所へもう行きたくないじゃん。
それならそれで、他のことをして生きていけると思ってるから。
僕はそんなに依存したくないんだと思うな、テレビってものに。
高須
そんな勝俊さんに僕が初めて会ったのは『真っ昼魔王』でしたっけ。
佐々木
そう! 『真っ昼魔王』の「ダイナミック商会」で会ったんだよ!
まぁ、「ダイナミック~」は、とてもダイナミックに
終わっちゃったけどね(笑)。
高須
その初対面の時から、僕は「変わった人だ」と心底
思ってたんですよー。「おかしな人やなぁ~」とね。
佐々木
いわゆる作家じゃないからね、気持ちが。
だから、変に映ったっていうのはあるんじゃないかな。
高須
あと、若い! 見た目はほら、抜け毛が多くてアレですけど…。
佐々木
なにぃぃぃ?
高須
そんな食いつかれても(笑)。
勝俊さんは、とにかく考え方が若いですもん。
『HEY!3』の会議でも、1番くだらない発言が多いですもん。
もちろん、いい意味で言ってますよ、これって。
佐々木
会議ではね、ADとか、お茶を運んでくれる女の子達、
ああいう子等が笑わなくちゃダメだと思って喋ってるんだよ。
ああいう子達の反応の方が怖いんだよね僕は。
黒板を書いてるADとかいて、僕ら作家陣の発言を書くかどうかは
その子が一人で決めちゃうことあるでしょう。
それで書かれなかった時が、1番ショックだからね。
「俺の意見、お前却下っっ!? 書けよっっ!」
そこ、大事ね(笑)。
高須
確かに大事(笑)。大事というか、譲れないところですよね。
黒板に残らないトークをしてるってことは、
作家として仕事してないっていう烙印に等しいですからね。
佐々木
今の今まで発言の全てを素直に黒板に書いてたADが、
せっかく俺が言った素晴らしくくだらないことを
軽く流しちゃって書き留めなかったりするじゃない?
それだけはもう、絶対悔しいよね。
高須
特に最近の会議って、おもしろい事言いすぎるというか
くだらないこと言い過ぎると、「ただのバカ話」って思われて、
会議用の発言ではないと見なされて流れていったりするでしょう?
アレは理不尽ですよね。
だって、そのくだらないことを真剣に考えて金を貰っているのが
放送作家ですもんね。
佐々木
そうだよぉ~、ひどいんだから!
40分ぐらい、一人で会議で力説するでしょ。
身体使って、ジェスチャーがんがん入れながら喋りきった後に、
プロデューサーがでかい声で、手とかパンパン叩きながら
「はい! 遊びはこれぐらいにして、
さあさあ、作家さん頑張って!」って(笑)。
高須
(笑)。
佐々木
バッキャローっ、こっちは頑張って40分喋っただろ! と。
それを「遊びはこれぐらいで」だもの~、萎えるよ~。
こっちはいつだって会議用に、作家としての発言しかしてないつもりなの。
だけど、それをそうと思ってもらえない。
高須
作家はそこで「作家」なんですけどねぇ、本来。
なんか、最近の風潮はツライですよね。
俊さん、色んなネーミングもかなり出してるでしょう?
タイトル名とか、コーナー名とかって実はすごく重要じゃないですか。
なのに、そんな大事なことなのに、考えて考えて思いついて言った瞬間、
「はい、いいですね、いただきっ」って終わっちゃうこと、
多すぎますもん。
佐々木
うんうん。そういうところ、日本は寂しいよねぇ。
アメリカとか行けばそういうのってとてもしっかりしていて、
発言して考えた人間に、そのタイトルや造語の権利がありますっていう
契約があったりするんだけどね。
高須
そうなんですか!?
佐々木
日本はそうじゃないもんね。
作家がどれだけ良いフレーズを思いついたとしても、
それは番組のものになっちゃうし、局のものだからね。
悪魔だよねぇ(笑)。
高須
悪魔だ……。
佐々木
まぁ、そんな悪魔も、こんな世の中では息も絶え絶えな感じだけどさ(笑)。
いやー、いいことしてないと、お天道様が許さないよ~(笑)。
高須
作家はつらいですよねぇ。
佐々木
でも、それだけ日頃お金もらってるでしょ?(笑)
悪魔が利用しますよ~っていうだけの代金をさ。
高須
そんなことないですって。
佐々木
あ、にがい顔してるっ(笑)。
高須
やめてくださいよ(苦笑)。
佐々木
僕はアイデアなんて、いくらでもあると思ってるんだ。
5分前に他のところで誰かがやってようと、
3分前に別の人が思いついていようと、
「俺だったらこうだよ」って、恐れず会議で発言するよね。
だから、僕はアマチュアが好きなのかも知れないけどね。
アマチュアは人が何をどうやっていようが関係ないからさ。
思い浮かんだ事をただ信じて、やっていけるのがアマチュアだから。
高須
だから、勝俊さんは、
『イカ天』みたいな番組が出来たんでしょうね。
佐々木
うん、あれもアマチュアだもんね。
僕も自分がずっとアマチュアだと思ってるからさ。
何一つやったこともない評論家が文句言ったりするじゃない?
あれが1番許せないんだ。
高須
うんうん。
佐々木
人がやっていてもイイから、自分がいいと思って思いついたことは
やってみたい。
それでいいじゃん! とか思うんだけどな……。
高須
歯痒いことに、テレビはそうはいかなかったりするんですよね。
最近は特に。
佐々木
高須くんはいつ辞めるのさ、そんなテレビを?(笑)
高須
え、ええっ!?(笑)
佐々木
いや、まぁまぁ、答えなくていいけどさ(笑)。
高須
あ、すんません、僕ちょっと確認したいことがあるんですけど…。
佐々木
なになに?
高須
勝俊さん、矢○永吉の○○で大儲けしたっていう話を聞いたんですけど。
佐々木
うん、まぁ、そんなこともあったなぁ。
高須
マジですか!? あんなのはもう、一種の発明品じゃないですか!
すごいなぁ! ホンマやったんですね~。
佐々木
あの頃は矢○グッズだけじゃなかったからね。
ある意味で発明王だったもの。
高須
他にどんな物やってたんですか?
佐々木
……言えないなぁ!
高須
教えてくださいよ(笑)。
佐々木
インチキだって言わない?
高須
言わないですよ。
佐々木
うーん、何があったかって言われるといっぱいあったんだよなぁ……当時。
例えば、ジーンズの染めに失敗して、まだら模様に染まったジーンズが
できちゃったのよ。それって、絶対売り物にならないじゃない?
高須
そうですね、失敗ですもんね。
佐々木
そういう時はさ、ネーミングを変えちゃうのよ(笑)。
ターコイズブルージーンズ、とか適当に言っちゃう。
そしたら、ビッグヒット商品に!!
高須
マジですか~?
佐々木
真っ赤に染めたかったのに、赤とオレンジの染料が混ざっちゃって、
またまだら模様になっちゃった。
じゃ、その商品名は…「テキーラサンライズ」(笑)。
かっこいい~っ、ニューファッション~っ!
高須
最低や……(笑)。
佐々木
そんなことばっかりしてたよー。古着屋のハシリもやったもんね。
ロスとかハワイからいろんなもの仕入れてさ、友達集めてセリにするの。
「はい、お客さん~、このジーパンいくらつける~?」
「3千円!」
「残念でした~、後ろに大きな穴が開いておりますので200円~!」
なんつってね。それで値段決めて、店で売ってたんだ。
高須
変わってんなぁ~、ホンマに。
佐々木
楽しいことが好きなだけなんだよ(笑)。
楽しかったら何だっていいんだもん(笑)。
高須
勝俊さん、よく言ってますもんね、会議で。
「会議は楽しくやろうよ~!」って(笑)。
佐々木
テレビの構成自体は好きだし、やりたいことだよ、
そこへの興味は尽きないけど
「作家」と呼ばれるのはどうかな? と未だに思ってるよ。
第3話へつづく
放送作家
佐々木勝俊 さん
放送作家
タモリ倶楽部
天才・たけしの元気が出るテレビ!!
夕焼けニャンニャン
1or8
三宅裕司のいかすバンド天国
HEY!HEY!HEY!MUSIC CHAMP
など手がけ
最近では「バレエデイズ」なるタブロイド紙を立ち上げてみたり、好奇心の赴くままに活動しております。