松尾貴史さんらとの出会いを通じて、放送作家としての幅を広げていった山名さん。テレビのことを深く考えつつ、二番バッターとしての存在感や、逆に作家が持つブランド力についての話で盛り上がりました。そして当時のテレビやメディアを取り巻く社会的な環境がいかに「やってはならないこと」をやっていたか…「恋空」などの具体的な例を出しつつ、真正面からテレビはどうあるべきか、作家はどうあるべきかを語らいました。
インタビュー
第7話
2008.1140代ブランド力
高須
芝居を自分でおこして作りたいとかそんなのはないの?
山名
僕の中で憧れているのは、ブランド力のある放送作家なんですよ。
例えば三木(聡)さんなんかはブランド力あるじゃないですか。
どうやっても『三木さんの番組』なんですよ。
小山薫堂さんなんかも『小山さんの番組』じゃないですか。
で、高須さんもそういう人なんだなって最近、思ったんですよ。
WOWOWでやった蒼井優のドラマあったじゃないですか。
あの時に僕は構成ということで、演出の三木康一郎と
枠を作ったんですけど、その時、二人で話したのが、
「なんで僕たちが枠、作らなきゃいけないんだよ」みたいな話で。
もちろん、その時のクリエイターは、高須さん以外にも
名だたるCMプランナーや映画監督が並んでいて、
そこに僕たちが並んだら、世間的な「?」ってなると思うんだけど、
内容的には十分おもしろいものを作れるとは思ったんですよ。
でも、同じ舞台に立てないのは、
自分たちにブランド力がないからだろうって、話になって。
その点、高須さんは『高須印』っていうものがあるじゃないですか。
放送作家で『○○印』ってブランド力を持ってる人って少ないと思うんですよ。
もちろん業界内だけなら、そういう人はいますよ。
でも、テレビの世界の外まで、その『〇〇印』が届いている人はあまりいない。
だから、外から見ても、僕だってわかる仕事をしたいですよね、最終的には。
それが舞台なのかテレビなのか本なのかわからないんですけど。
高須
それは何、一番山名の中で何をするのが近道な感じなの?
山名
近道かどうかはわからないんですけど、
結局はテレビを作ることになると思うんですよ。
まあ、そこがさっき言った作品性の高い番組ってことになるんですけど。
高須
カラーのある事をする、と。
山名
そうですね。そういう志向のディレクターと組んで。
僕は撮れないから。
高須
撮りたいっていう意識はないの?自分で。
撮れると思うでしょ自分で。
山名
うん・・・でも、細かい事わからないから共同演出みたいなことですかね。
この間、『G O!G O!アッキーナ』をやった時は、
僕が思い描いた世界をちゃんと形にしてくれるディレクターにお願いして、
演出プランを僕が提示して、ある程度、それに沿った形で作る
というふうにやってもらいましたけど。
ああいうスタイルは、一種理想系ですね。
高須
じゃあ自分でそっちに行こうっていう意識はないの?
やっぱテレビで、深夜帯で何か。
山名
そうですねえ。
高須
まあ、まぁねえ。
山名
どうなんでしょうねえ。
高須
昔、まだ三木さんが作家時代によく二人で遊んでて、三木さんが
「高須くんはいいよー。好きな事やれてるしー。
俺なんてデタラメだからいつダメになるかわからないからねー」って言ってた。
あんなに才能があってもある年齢になると不安になるんだろうね。
で、仕事のフィールドを放送作家三木聡から映画監督三木聡と変えてからも
本当はめちゃめちゃ不安だったと思うわけ。
でも「時効警察」でしっかり当てたからあの人のブランド力っていうのが
より強くなったような気がするわけで、当たらなかったらいくら才能があっても
そうはいかない。だって食えなくなったすごい人ってたくさんいるもん。
そうなってくると放送作家の行く末って難しいよね。
今後どうしようか?一体何をすればいいのか?
40代になろうとしている人全員考えていると思うのね。
山名
放送作家なんていくらでも首すげかえられるじゃないですか。
だけど「この人じゃなきゃいけない」って作家もいる訳ですよ。
高須
だからこそ自分で決断できるものじゃないとアカンと思うのよ。
山名
それって、多分、僕が言ってる作品性っていうことと近い気がするんですよ。
要は自分で責任負う事ってないじゃないですか。
放送作家って、番組にそこまで責任負っていないですからね。
高須
でも優秀なディレクターと番組作ったらいろいろ言いあったりしない?
端から見てケンカしてんじゃないかと思われるぐらい。
相手も折れないし、こっちもいいものにしたいから細かいこと言うやん。
「そうじゃない!」って。
番組が良くなる可能性のあるから言うわけで、でもそうじゃない人とやる場合は
いくら言うても伝わらへんから、途中で俺黙ってしまうもん。
山名
そうですね。
高須
だって作家ってやっぱ演出家に勝たれへんのよね。
いいものを一緒に作っても勲章はやっぱり演出家のものだしね。
山名
でもドラマだと演出より脚本家の方が名前あるじゃないですか。
脚本作る段階でプロデューサーやらディレクターも知恵出してはずなのに、
名前としては脚本家が残る。特に外に対してはそうですよね。
高須
ドラマに関してはそうだよねー。
なんでなんだろうねぇ…。
山名
なんでですかねぇ…。
高須
でも、根本的にはやっぱり楽しいのよ。
バラエティやってて、俺意外とくだらんお笑い番組が多いから。
最近って「落とし穴」って言葉が出てくるような会議って
なくなってきてると思わへん?
でも落とし穴を考える番組がまだ俺ん中でたくさんあるから、
あ、それは、この年でそんな事考えられる番組が多いっていうのは
ありがたい事やな~と思って。
でもテレビっていうものはそういうのが段々いらんようになってきているから
どんどんはじかれていくねん。
もし色々な番組でそういうのがなくなったと。自分に落とし穴というのが
黒板に書かれるのがなくなった番組ばっかやってたら
多分俺もうテレビやってないかもしれないなと思って。
順応できんかったらやっぱりなくなってきてるからね。
でも、順応する能力が高いから優秀ってのは間違いないんやけど、なんかね・・・。
第8話へつづく
放送作家
山名宏和 さん
1967年東京都生まれ。
古舘プロジェクト所属。
現在担当中の主な番組は、『行列のできる法律相談所』『ダウンタウンDX』『この差って何ですか?』『たけしの健康エンターテイメント!みんなの家庭の医学』『ガイアの夜明け』『TheCovers』など。完全なる雑食系放送作家