まだ入社1年目の新人ADが出した企画がまさかの採用。いきなり初プロデューサー&初ディレクターを兼務しながら他の番組では底辺のAD業務の日々。記念すべき初番組の作家にと白羽の矢がたったのが、なにを隠そうこの私。まさかのオファーに戸惑いながらも、なんか面白そうだったので引き受けることに。その時の縁が巡り巡って、一緒に番組をしている。今最も芸人に信頼されているディレクターになった彼とテレビの熱い対談が始まる。
※この対談は2016年9月7日に収録したものです。
インタビュー
第2話
2017.12.18高須
藤井と最初喋った時に、年齢の割にえらく昔のお笑いの事を知ってるなって思ったわけ。だからテレビ好きなんやな〜と思って。
藤井
テレビは大好きでしたね
高須
個人的な見解だけど、優秀な演出の共通点の一つに今の番組はもちろんのこと、昔のテレビをよく知ってるって言うのがあると思うねんな〜。
そもそも記憶力がいいのか、好きやから何度も見て知ってるのか共通言語が多いから、何より理解するのも早いよね。
藤井
うーん、なるほど。
高須
「あのさぁ、あの番組のアレ・・・」
「あー、はいはいはい」
で、「アレのこういうところが面白いよね」って本質にすぐ行けるけどそれ観てない人に言ったら、話してきた本質をまだ画で観てないから分からへん。
そこを紐解いて喋っていくのにものすごい時間かかるから「もうええわ」ってなるやん。でも加地(倫三)君もそうやし、(片岡)飛鳥もそうやけど、
テレビ朝日総合編成局制作1部所属のゼネラルプロデューサー。 現在は『アメトーーク!』『金曜★ロンドンハーツ』『ゴン中山&ザキヤマのキリトルTV』などを担当。
フジテレビジョン制作局第2制作センターチーフゼネラルプロデューサー。『めちゃ×2イケてるッ!』ゼロテレビ『めちゃ×2ユルんでるッ!』総監督。
高須
2人ともまぁ~テレビ好きやから「昔のあんなやつ」って言ったら「あーはいはいありましたね」って。
「そう、あの番組のあの部分って、今のコレに使われへんかな?」
「だったら、こうしません?」って核心ついた話まで最短で行けるから、会議が楽。
例えばさ、めちゃイケの期末テストのやり方あるやろあれって『一人ごっつ』の「お笑い共通一次試験」のやり方だと同じやん。
1996年~1997年までフジテレビ系列で放送。作務衣姿のダウンタウン松本が師匠と呼ばれる大仏から出されるお題に答えていく大喜利番組。「お笑い共通一次試験」はその視聴者参加型。まだネットが普及していなかった時代。問題用紙を手に入れるにはフジテレビまで直接取りに行かねばならないと言う非常にストイックなものだったが、問題配布日にはフジテレビ前に全国の視聴者が列をなし、名解答からダメダメなものまであらゆる解答が松本のもとへ届いた。第一回の参加者は13928人。
藤井
あー!言われてみれば。
高須
一度全部やらせて、答案を全部見て集計して、面白いものを選別するわけやん。
それを順番に発表しながらツッコミショーを展開するわけやから、面白い要素のてんこ盛りができるって構成は一緒。
ものすごい数の0→1を発明した松本人志
藤井
だから本当の0→1ってなかなかないじゃないですか過去のこの部分とこの部分でこうして、こういうガワを付けて・・・って。
そもそも知らないと思い付かないじゃないですか。
パーツとして知っておかないと。
高須
でも俺はこういう話をすると毎回名前を出して申し訳ないねんけど松本人志とテレビをやり始めた時に0→1のものがどんどん出てくるから俺の中ではものすごい新鮮で、それをテレビで試せるっていうのがあるから「観た事ないなー、即やろう!」って事がずっと出来た。
テレビの0→1をものすごく発明した芸人やと思うのね。
藤井
結局はあの人が。
高須
結局は。
誰もやったことないから、周りの色んな人を困らせたり、悩ませたりしたと思うけど、しょうがないよね。
まーひとりでたくさん作ったんちゃうかな言葉から、企画から。
あれ傍で見させられたら、もう。
藤井
いや本当ですよね。僕も『リンカーン』の打ち合わせとかで傍で見させられて
2005~2013年までTBS系列で放送されていた「芸人の芸人による芸人のための番組」がコンセプトのお笑いバラエティ番組。レギュラー出演者はダウンタウン、さまぁ~ず、雨上がり決死隊、キャイ~ン。番組終了後も特番として『リンカーン芸人大運動会』が毎年秋に年に一度のお楽しみとして放送されている。
高須
「なるほどなー」って思うよね。
藤井
思いますよ。
高須
さかもっちゃん(『リンカーン』プロデューサー坂本義幸)が『気分は上々』のディレクターやって、いっぱしになった時に「ダウンタウンの松本さんって、実際すごいんですか?」って聞かれて「そりゃすごいよ、テレビ見てたら分かるやろ」って言ったら「そんなにすごいんですか?」って言ってくるから「作家が100人おっても勝たれへん」って思ったこと何回もあったからって言うと「え~!!それはないでしょ~!!」って
藤井
(笑)
高須
って言うてたんやけど、今でもわかってないかもねホンマに(笑)。
でも本当にそういう思いを何度もさせられてるから。
藤井
でも、あの人が特殊なんですよ。
僕、本(「悪意とこだわりの演出術」)でも書かせてもらいましたけどやっぱリンカーンの時、松本さんの強烈に印象が残っているやつがやっぱりいくつかあって、「大食いキャノンボール」とかそんなの出されたらたまんないわって言う
芸人が2チームに分かれ、サービスエリアで 売られているグルメを食べまくる、大食いレース企画。 松本はこの企画のラストに、出演者にはサプライズの「ビンゴ」を行うことを 突如提案。レース部分がフリとなり、「数字の代わりに料理名が書かれたビンゴを 行って、その料理を食べていた人だけがビンゴの穴を開けられる」というオチが 追加された。
高須
見せ方をどうするかって言う打ち合わせを作家やDで色々話してると「こういう見せ方ってどうかなぁ」ってサラっと言うから「わー、それやなぁ。答えはそれや。」ってなってしまうことがよくあった。
藤井
高須さんがよくおっしゃる「松本人志が40歳で死んでいたら」・・・。
っていう話。でも30代の松本さんって、そういう事じゃないですか。
高須
40歳で死んでいたら、松本人志と言う“笑い”の学問になってるよ。
そりゃ年齢と共にスピードも落ちてくると思うわけもっと言うとあの男の笑いを吸収した芸人さんたちが下にごまんといるからね。
藤井
だから結局、あの人が新しいルールを作って革命を起こして全部変えてしまったそのルールの上で今はみんなが戦っていて。
あの人のルールでみんなが戦っているから、ルールを知っている状態でスタートしてるから成長が早い。
高須
そう、成長が早い。
藤井
今、芸人さん達ってみんな面白いですけど、ある意味では、あの人が作ったルールの中での「面白い」でもあるから。
ただ、未だに現場ではやっぱり一番面白いんですよね。
高須
なるほどねぇー。
藤井
未だに、ちょっとやっぱり。
高須
やりよるのよなー。
よう頑張るなと思って。
俺は小学校の時から横でそれを見せつけられてたからね。
藤井
特殊な状況ですよね。
高須
特殊な状況やで。
第3話へつづく
ディレクター
藤井健太郎 さん
1980年生まれ、東京都出身。立教大学卒業後、2003年にTBSに入社。『リンカーン』『ひみつの嵐ちゃん!』などの人気番組のディレクターを経て、『クイズ☆タレント名鑑』『テベ・コンヒーロ』等を演出・プロデュース。現在は『水曜日のダウンタウン』の演出を務める。