TBSで報道からバラエティまで幅広くこなされる久保田アナ。広島の出身で標準語のアクセントを学ぶ過程で相当苦労され、ストレスからじんましんになったりと、アナウンサーならではのいろんな話を語ってくださいました。『ニュース23』での筑紫哲也さんとのお話や、お仕事での失敗にまつわるトークは笑えて学べて、必読です。
インタビュー
第6話
2005.12★各局会議・お菓子ペン事情
高須
アナウンサーとして一番最初の仕事って、どんなことやったか覚えてる?
久保田
何が一番最初になるか難しいんですけど、ラジオでいうと、
こども音楽コンクールの地区大会の司会をやりました。
緊張しましたね、かなり。
テレビでいうと『どうぶつ奇想天外』に、ずっとAD研修でついてました。
高須
AD研修やったんや。
久保田
はい。3週間くらいですけど、AD研修しました。
高須
どうやった?ADやってみて。
久保田
私はぬるいADでしたから……(笑)。
アナウンサーだからって、番組にずっといるわけでもないので。
何か教えてもらえるってわけでもなく。
高須
見とけっていわれる感じ?
久保田
そう。1つ上の先輩ADについて、いろいろ見るっていうか。
会議の前に必要なもの並べて、とかそのくらいで。
高須
局によって違うのよ、ADが準備してるもの、いわゆる「ADスタンバイ」が。
TBSって原稿用紙とかレポート用紙べラッと切って、
何枚かずつみんなのテーブルのとこ置いてある。
で、あと赤ペンと消しゴム付きの鉛筆がをそろえて置いてあるの。それがベース。
端っこのほうにちょっとテーブルがあって、
そこにコーヒー類の、ちょっとしたものが置いてあったりする。
フジはね、ペンはペン箱みたいなのにまとめて、バサッ、バサッと
要所要所に置いてある。だから、1人1人のとこには置いてない。
席にあるのは、視聴率表とオンエアー予定表ぐらいかな。
メモ用の紙なんかは用意してないの、フジテレビは。
ペンもいろいろ。シャーペンがドバーっとあったり。
で、お菓子がパパパパッとあるね。フジテレビ、お菓子大好きやから(笑)。
で、日テレに行くと、日テレはもっとそれがないのね。
ペンとかもあんまなくて。用意はしてあるけど、一箇所にゴソッと
置いてあって、使いたい人は使って、な感じ。
で、席には企画書みたいな、ADさんがみんなに配ってるものがある。
テレ朝もそうかな。テレ朝もペンがない。
視聴率表があって……飲み物もないね。どこにでもあるコーヒーすらない(笑)。
お菓子置いてあるのは俺の見たとこでは、ほとんどフジ。
フジは必ずお菓子が、ADさんがチョイスしたのがある。
「ADチョイス」がダメな会議はダメって言われてるくらい。
で、そのチョイスがお前の運命を変えるからって、
上から言われて誰々チョイスってなる。今日いいやんって誰かが言い出すと、
あ、お前ええなあと、ADが言われたりする。
でも、それずっとやってるとたまには変えろよってつっこまれる(笑)。
で、チョコチョコと新しいものを入れてくんの。
これおいしいねってなったら、あとで俺も俺もってなったり。
ちょっと違うんだよね、スタンバイが。
久保田
お菓子いいですね。TBSは無いと思うんですけど。
高須
お菓子ないね~。ないから悪いってワケじゃないんだけど。
久保田
みのもんたさんとの打ち合わせには用意する、とかあるみたいです。
出演者さんや会議に出る方からご要望があれば、好みをうかがって……。
そういうのは確かにADの人が何を入れるかって悩むみたいです。
高須
そうでしょ。プロデューサーが好きなものとか、
ディレクターが好きなものをぽんぽんと入れたりとかしてんのもあんのかな。
フジでおもしろいのが、音楽班に菊池さんって人がいるねんけど、
その菊池さんなんかは、ぬれせんべいが大好きなのね。
代々ADが入れ替わろうと、ぬれせんべいは欠かしたことないっていうのに、
たまたま忘れたADがいて、めっちゃ上のADから叱られた(笑)。
俺はね、うまい棒好きななのよ。うまい棒のポタージュ味が好き。
うまい棒のポタージュ味を買っといて、ってこっそりADにお願いしてある。
とは言っても1本食べたらもうええねんけんどね(笑)。
久保田
うまい棒のポタージュ味って、そんなにおいしいんですか?
私、食べたことないなぁ。
高須
だまされたと思って、ポタージュのうまい棒食べてみて。
食べた瞬間「あぁ!」となる。「高須さんが言わんとしたのは、これか!」と。
あんまり食うと気持ち悪くなるから、適当なところで自己調整してね。
どっか機会があれば。ポタージュ味で。
久保田
なんかちょっとそそられました。食べよう、ポタージュ味。
高須
ああっと、話がずれたずれた。
★久保田アナ、初仕事でラマに乗る
高須
テレビにまつわる仕事としてはAD研修で『どうぶつ』に参加して、
そこで得たものはまったくなかったの?
久保田
いえいえ、そういうわけじゃないですよ。ADやってる間にスタッフと
仲良くもなったので。アナウンサーとして初めてのロケに参加しました。
9月の頭で、初めてのテレビ出演ですよ。サファリパークの取材でした。
前フリというかVTRの紹介カットみたいのから撮るんですけど、
もうマイクつけるのも始めてで、ドッキドキ。
こんなちっちゃいので声を撮るんだな、と思いながら。
そしたらディレクターさんが
「せっかく新人さんで、始めてだから、普通じゃ面白くないね」
ってことを言い出しまして。
道路のところに、ちょうどラマが寝そべってたんですね。
おとなしそうなラマが。
「よし、ラマに座ってリポートしようよ」って。
高須
……えらいアドリブ好きなディレクターやなぁー。
久保田
立ってるんじゃなく、横たわってるラマの上にちょこんと座って、
これは虐待にならないんだろうかって。
高須
ホンマやな。
久保田
でも私もいっぱいいっぱいなので、そんなこと「イヤです」とか
そういう判断してられないわけですよ。
「長崎に来ています。新人アナウンサーの久保田智子です」って言うのですら、
自分の名前をかむくらいの緊張っぷりなんですよ。
しかも、ラマ乗ってるし。
高須
まあ、でも貴重な映像やな。ラマに乗った久保田。で、紹介して。
久保田
で、3日間の出張ロケで。
延々と撮り続けるわけです、園内のいろんなところで。
そのたびに、マイクつけるたびに緊張してて、ドキドキしっぱなし。
うわー、仕事って大変だなって、心底思いましたね。
見られるってだけでもすごいストレスなんだなって初めて分かりました。
テレビ見る人からは、ラマに乗ってバカだなーって思われるんだろうけど。
いっぱいいっぱいだし、必死だし。
高須
だってそれがほら、ものすごい人が見るわけだから。意識してしまうよね。
久保田
でも、結局そのオンエアみたら、ラマに乗ってる部分以外は使われてなくて。
「そんなもんなんだなー、3日間行ったのになー」と。
でもね、そのシーンがですね、その週の『王様のブランチ』の
瞬間最高視聴率ランキングに入ってたんです。
高須
すごいやん!やっぱりいい絵やったんや(笑)。
やるなぁ~ディレクター(笑)
久保田
それが一番最初。いいスタートを切れたって思いました。
何がどうあれ、視聴率がとれたのならがんばった甲斐はあったな、と。
★がんばりすぎて、目が!
高須
ほかに、初期の仕事っていうと?
久保田
あとは、『はなまるマーケット』の「クイズママダス」で、
歴代のアナウンサーがやるクイズ番組のアシスタントもやらせていただきました。
高須
ああいう朝の番組は、入り時間が早いんだよな~。朝何時入りだった?
久保田
えーと、6時ぐらい入りでした。
高須
夏場はまだいいけど、冬場はまだ真っ暗でしょう。
久保田
ちょうど、秋から春にかけてだったんで、暗かったですね~。
そのあとはスポーツ番組をやらせていただいて、それから『王様のブランチ』。
高須
え、ブランチやってるんだっけ?
久保田
はい。
高須
へー。じゃあ今は『王様のブランチ』と、『どうぶつ奇想天外』と、
それから『NEWS23』のスポーツコーナーか。
久保田
あと『はなまる』もありますし。
高須
忙しいな。休みないやん。あ、日曜日休みか。
久保田
それでも今は休めてるほうなんですよ。
2年目がすごく忙しかったんです。2年目と3年目かな。
なんかですね、目がピクピクピクピク動くんですよ。
高須
あ~、あるある、目が、ね。
久保田
あれって、眼精疲労なんですっけ?
高須
あれ、あかんねんで。あんまり続いてると。
久保田
たまにきますね。アナウンス室で
「ほら、ピクピクしてるでしょ。働いてるのよ、私」っていう風に
冗談で人に見せたりしてますけど。
高須
いや~、働きすぎやね、それ。よくないよくない。
久保田
入社して3年目から朝の『はなまる』始まったんですよ。
2年目には目がぴくぴくするくらい働きづめだったんですけど、
3年目には朝の番組に帯で出ることになったから、いろんなレギュラー番組を
はずれたんですね。そしたら今度は、休みはあるけども一日がとても長い。
高須
ああ、そうか。朝から晩まで、みたいな日と、そうじゃない日とで。
久保田
不規則になっちゃうんですよ。それがすごくつらかった。
ある時は夜中まで働いて、ある時は、朝までいなきゃいけなくて……。
高須
普通の会社員と違って「ちょっとお休みします」ってわけにもいかないもんね。
代わりの人でなんとかならんことはないけど、でも「君じゃなきゃ」っていう
仕事だし、その日その場にいてくれないといけないわけだしね。
俺らって風邪ひいたって、声でなくてもいいし。会議でも別に、
鼻たれてようがどうしようが構わない。とりあえず意志の疎通ができれば、
問題ないわけだよ。でも、アナウンサーは風邪ひいてまうと、
顔にも声にもでるもんね。
久保田
そうなんですよね。だから、少々のことは無理しなきゃいけない。
高須
アナウンサーが、どうしてももう出られない、ムリって判断するタイミング
ってどこなの?仕事休ませろおいって。
久保田
ん~っ、やっぱり声が出ないって時ですかね。
それ以外は休めませんよ。
高須
風邪だろうが?
久保田
一応は出る。メイクでなんとかして(笑)。
高須
きついなぁ。交代はないの?
久保田
うーん。するときもありますけど、それだってどうしようもないときだけです。
私はないですね、まだ。
高須
違うねぇ~やっぱり広島女は。気持ちがある意味深作欣二やもんね(笑)。
久保田
いや、それはそんなに関係ないと思います(笑)。
第7話へつづく
アナウンサー
久保田智子 さん
TBSアナウンサー。2000年入社、どうぶつ奇想天外、筑紫哲也ニュース23、報道特集などを経て、2013年から報道局に所属し、外信部、政治部、経済部、ニューヨーク特派員とニュースの現場で取材を経験する。現在は土曜朝「あさチャン!サタデー!」メインキャスター。