御影屋

高須光聖がキク「高須光聖×武内絵美」 第7話

『ミュージックステーション』など、テレビ朝日の顔ともいうべき番組に次々と出演されてきた武内アナにインタビューしたのは2006年ごろのこと。ステキな居酒屋で、女子アナとして課せられる様々な番組への柔軟な対応や、アナウンサーの仕事の楽しさ、難しさについて楽しく語っていただきました。キーワードは「緊張感」。

インタビュー

第7話

2006.06

高須光聖がキク「高須光聖×武内絵美」

しあわせなお仕事

武内

スポーツで取材に行って、バラエティ番組のMCをつとめて、
報道で事件を伝えて…といろいろやっていると、ふとした時に
「アナウンサーってなんなんだろう」って思うこともあります。

高須

場面場面で要求されることが違うからね。
だけど、アナウンサー…女子アナっていうものは
絶対必要なものだと思うよ。タレントでもなく、女優でもなく、
アーティストでもない特殊な人。だけど、いるだけで空気がちがう。
なりたいと思っている人がたくさんいる職業であることは間違いないね。
楽しいでしょう、アナウンサーって。

武内

はい、楽しいお仕事であることは確かですね。

高須

それが何より。なんだかんだいっても、放送作家も楽しいもん。
楽しい仕事をやれてることが、一番の幸せだと思う。
たとえば結婚したりしても、この仕事は続けていきたいと思ってる?

武内

うーん…どうでしょうね。
結婚する相手や時期にもよると思うんですけど、
アナウンサーを絶対に続けたいというところにはこだわってはいません。

高須

こだわってないのは、どうして?

武内

小さい頃からそうなんですけど、やってみたいことがまだまだ
たくさんあるんですよ。花が好きだからお花関係の仕事に就けたら
おもしろそうだなぁとか、いまだに思ってますし。
留学なんかもしてみたいですね。

高須

結婚願望はあるの?

武内

なくはないですよ、女の子ですから(笑)。
だけど結婚云々は抜きにして、単純に一人暮らしをしてみたいというのも
ありますね。ずっと実家に住んでますから、小さい部屋を借りて
自分の好きな家具を買って、インテリアをレイアウトして…というのに
すごくあこがれています。

高須

あー、楽しいでー!それ楽しいよ。やってみたほうがいいね。
だけどまぁ、急がずあせらず、マイペースが一番よ。
やってみたいことがあればそれをやるのもいいと思うけど、
俺は武内にまだまだアナウンサーとしてがんばってほしいなぁ。

武内

それはもう。まだまだがんばらなくちゃと思っていますから(笑)。
でも、子どもは3人くらいほしいです!

高須

うわぁ、3人なんて大変やで!(笑)

武内

だいじょうぶですよ、きっと(笑)。こう見えて、家事とか好きなんですよ。

高須

だけど今すぐどうこうじゃないとしても、結婚したりして
この仕事をやめたら、きっとすごくさびしいと思うよ?

武内

そうでしょうねー。辞めた番組を観て
「あぁ、私がいなくてもなんの支障もないんだなぁ」
なんて思ったりするのかもしれません。

高須

でも、アナウンサーだけじゃなくて、仕事の大半がそうだよ。
番組だって、俺がいなくてもきっとなにか企画がたてられて、
オンエアは必ず欠けることなくされていくんだから。
そこにクオリティの差はあるかもしれないけどね。

求められるのは、「違う目線」というオリジナリティ

武内

アナウンサーに求められることって、番組によって違ってくるんですが、
どんな番組にせよ「求められてる以上のことが言える」ということが
必要だな、と思います。『報道ステーション』ではある程度決められた
コメントがあります。それを言っていれば誰にも文句は言われませんが、
古舘さんとの自然なやり取りや、自分なりの視点から生まれてくる言葉を
的確にポンっと言えるようになりたいですね。

高須

生放送でそこまでのことをやるって、本当に難しいだろうなって思うよ。
アテネオリンピックの時、マラソンで変なおじさんが妨害したでしょう。
あの映像が映ったときに、あるアナウンサーの人が言ったことが
すごく印象に残っていてね。

「この一件で妨害された人はもちろん悲しいけれど、
実は金メダルを取った人も嬉しくなくなったのではないか?
自分はあの妨害が無かったら一番ではなかったのではないか?ということを
永遠に思い続けなければならないかもしれない。
本当の金メダルではないかもしれない」

というようなことを言ったんよ。
あぁいいコメントだなぁと思った。
そこには違う目線がひとつ乗っかっている。

武内

それは心に残りますねぇ。
でも、言い訳するわけではないんですけど、
生放送だと時間も限られているので、その時々で想定以上の時間をかけてでも
自分の言葉を伝える必要があるのかということを見極めなくてはならないこともあります。
失敗して後で怒られるよりは無難な道を選んでしまうほうが間違いないかな…
と後ろ向きな気持ちになってしまうこともありますし…。

高須

その気持ちもよく分かるよ。
俺が久米さんと『ニュースステーション』で仕事をしたときは、
「凝り固まったニュースステーションの形を崩してほしい」って言われたんよ。
安定してしまった形では、ニュースがおもしろくないと。
同じニュースでも違う目線で伝えたい。
不況で中小企業がつぶれていって哀しい…それはみんなが思うこと。
そこへもうひとつ目線を入れたいってことで、僕らみたいなバラエティー
作家が投入されたんだよね。「他のニュース番組にない目線や切り口」を
求めたんだろうなぁ。

武内

どんな企画をやったんですか?

高須

その時は業界新聞をとりあげたのよ。
特定の業種の人だけが読む、すごく限られた内容の新聞が
日本には三千誌くらいあって。そこの一面には僕ら一般人が読んでも
ぜんぜんピンとこないけど、業界の人が読めば「おおっ」というような
すごい記事が載ってるわけ。それを久米さんが紹介するっていうコーナー。
確か、ダンボール業界の新聞を特集したんだったかな。
でっかく一面で「手馴れた人でも15秒かかっていたイチゴの箱の組み立てが、
素人でも6秒でできる箱が開発された!」と。

武内

ふんふん。

高須

そんなん、消費者にしてみたらどうでもいいことやんか。
イチゴの箱がどんな時間で組み上がろうが関係ない。
だけど、そこで仕事している人たちにとっては作業効率がめちゃくちゃ
よくなるわけだから。「16年ぶりの快挙!」ってでかでかと見出しが
書いてあってね。もうビッグニュースなわけよ。
で、久米さんが新聞を紹介して、実際に速い箱を組み立てて
「おぉすごい!」とかってリアクションがあってね。

武内

それはおもしろいですね!聞いてるだけでおもしろいですもん。

高須

他にもいろいろとお蔵入りになった企画もあったけど、
どれもただのニュースじゃなく、なにかひねりがあった。
まぁ、俺らは考えて考えて企画としてその目線を出すわけだけど、
アナウンサーの人は現場で、しかも瞬時に「これだ!」っていう目線を
言葉にしなきゃいけないわけだから、それはまたすごく難しいことだよ。

武内

確かに瞬発力という意味ではちょっとちがう能力かもしれませんね。
とにかく失敗することを恐れたりせずに自分だけの言葉と目線で、
伝えられるようになりたい、なれたならと心底思っています。

さて、最後に

高須

ずいぶん長いこと話したなぁ。
焼酎もワインもずいぶん飲んだよね(笑)。

武内

ですねー。なんだかあっという間でしたけど。

高須

じゃあ、最後に。
武内が思う「女子アナに必要なもの」を教えてください。

武内

……………。
社交性…。
それに…マイペースさ。
あとは………立ち直りの早さ、でしょうか(笑)。

高須

立ち直りの早さ、ね。確かに大事。
いつまでもウジウジしてられへん職業やしな。

武内

もうドーンと一気に落ち込んで、一気に立ち直ること。
これができないと、いつも笑顔じゃいられませんからね。

高須

いやー、今日はいい話が聞けました!どうもありがとう。
また打ち上げでいろんな話をしよう(笑)。

武内

もちろんです。
出演できなくても、高須さんの手がける特番の打ち上げには
これからもお邪魔させていただきます(笑)。また朝まで思いっ切り語りましょう!!

おわり

アナウンサー

武内絵美 さん

1999年にテレビ朝日に入社し、
「愛のエプロン」「ミュージックステーション」や
アテネ・トリノなど夏冬4回の五輪中継に携わる。
2004年の「報道ステーション」番組開始からスポーツコーナーを担当し、
現在は報道フィールドリポーターとして取材をしている。

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