『ミュージックステーション』など、テレビ朝日の顔ともいうべき番組に次々と出演されてきた武内アナにインタビューしたのは2006年ごろのこと。ステキな居酒屋で、女子アナとして課せられる様々な番組への柔軟な対応や、アナウンサーの仕事の楽しさ、難しさについて楽しく語っていただきました。キーワードは「緊張感」。
インタビュー
第3話
2006.06高須
深夜の「愛のエプロン」やって、次に大きいレギュラーって何やったの?
武内
「ミュージックステーション」ですね。
高須
タモさんや!!これは緊張したでしょ!
武内
しますよ、もう。言葉では表現しきれないほどですよ。
高須
アナウンサーってそういう仕事は「打診」されるの?
「武内くん、こういう仕事があるけど、どう?」って訊かれて、
自分で「いえ、それはちょっと…」とか言えるの?
武内
いや、すべて決まった後で伝えられるという形式です。
高須
そうか、上が決めるのか。でもさ、人によって得手不得手あるやん?
「はい、ミュージックステーションね」って言われて、
「えええええーっ」てなってる間もないままに、現場行って
ほんでもって生放送で、あれだけのアーティストの名前と歌なんて
全部覚えられるか!?(笑)
武内
いや…それは…(笑)。
高須
カタカナとか英語とか、カンペあっても大変やろ。
武内
私、思い出すだけでも胸が苦しくなるような失敗もしていますからね。
とにかくアーティスト名や曲のタイトルを間違えるなんて、
アナウンサーとしては絶対してはならない事ですからね。
高須
やったの?
武内
……う。(苦笑)今でも本当に申し訳ない気持ちで一杯です。
高須
まぁ、あるよ。しゃーないよ。
武内
とにかく、曲のフリだけは失敗してはならないと、必死でしたね。
実は私の歌フリの言葉が、音が始まるキッカケになっているんです。
「それでは、○○さんで『○○○○』です。どうぞ」という言葉の、
「○○さんで」の「で」の部分で、演奏が始まるというように・・・。
もし音が始まってしまってから間違えて言い直したりすると、
歌声と私の言葉が重なってしまったりしますからね。
何度も何度もリハーサルで練習するんですが、生放送は何が起こるか分かりませんし、
やり直しがきかないので、本当に怖いです。
高須
そんなん普通にテレビ見てると気づかへんもんなぁ。
大変な仕事やなぁと思うよ。
大体、大変なことは全部アナウンサーまかせにしちゃう部分あるからな。
武内
でも、それがアナウンサーの仕事といえば仕事なんですけど。
特に生放送だと、放送の終わり時間が決まっているので
時間のコントロールも重要な仕事のひとつでした。
歌の長さというのはある程度決まっていますから、その時間を逆算したところで、
トークを切り上げないと、歌の途中で「さようなら」なんて事になりかねませんから。
でも、上手くトークを終わらせることが出来なかったり・・・
4年間番組を担当していても、最後の最後までそれが課題でした。
タモリさんには、一切時間の事を気にせずにトークに集中していただけるような
環境を作る事が出来れば良かったんですけどね。
高須
タモさんって、どんな人だった?
武内
うーーーん。………とても普通の方です(笑)。
高須
お前というヤツは、天下のタモリさんつかまえて「ふつう」って!!(笑)
武内
いや、そういう意味じゃなくて!(笑)
いつもとても穏やかで、自然体なおじさまです。
お料理のお話をすると「おでんはタマネギを丸ごと入れると美味しいよ」とか
「途中で一度冷蔵庫で冷やすんだ」などと教えてくださったり。
高須
あぁ、そういう意味の「ふつう」ね。
武内
あと「番組でタモリさんのお隣に座らせて頂いて、嬉しかった」事がありまして・・・
それは「タモリさんのサングラス越しの世界」を見ることが出来た事なんです。
高須
ほう。
武内
タモリさんがゲストの方とお話をされている時に、
ちょうど私と反対側を向いていらっしゃるので、
私からはタモリさんの顔とサングラスとの間に隙間ができるわけなんです。
つまりその隙間からレンズを通した世界が見えたんです。
少し、黄色がかっていて、いつも見ているスタジオの光景がちょっと違って見えました。
何だか同じ世界を共有できた気がして、ちょっと嬉しかったんですよね。
高須
それはすごいな。そんなん誰もが見られるわけじゃないもんな。
武内
あぁ、こういう世界を見てるんだな~って、なんだか感慨深かったですね。
高須
ところでアナウンサーってさ、写真誌とかで変な特集とかランキングされたりするやん?
ああいう格付けみたいなのって、気になったりしないの?
武内
ん~、気にならないというと嘘になりますけど、
よく読んでみると何の根拠も無かったりしますからねぇ。
高須
ああいうのひどい写真つかってあったりするでしょ。
わざと眠そうな顔に写ってる写真とかさ、ズボンに下着のライン出てる写真とか。
武内
ありますねぇ。
でも、取り上げて頂けるだけでも喜ばなくちゃいけないのかなーって。
高須
あぁ、そうか。一応は表に出てる職業だもんね。
武内
でも「載せる前にちょこっと言って下さればなぁ」と思うこともありますよ。
「その写真だったら、もうちょっと良い写りの写真がありますよ」なんて
やりとりできればいいんですけどね。(笑)
高須
まぁなぁ、ちょっと悪意あるもんなぁ、写真の選別に。
武内
まぁ、仕方ないかなって。
高須
…武内って、ホントにあっさりしてんなぁ(笑)。
第4話へつづく
アナウンサー
武内絵美 さん
1999年にテレビ朝日に入社し、
「愛のエプロン」「ミュージックステーション」や
アテネ・トリノなど夏冬4回の五輪中継に携わる。
2004年の「報道ステーション」番組開始からスポーツコーナーを担当し、
現在は報道フィールドリポーターとして取材をしている。