御影屋

高須光聖がキク「高須光聖×中野俊成」 第3話

放送作家同士の対談「御影湯」の記念すべき第1回が掲載されたのは、2000年ごろのこと。高須自身も手探りのなか、中野さんと交わしたトークがすべての礎となりました。いかにして作家としてデビューしたのか、そして『大改造!劇的ビフォーアフター』などタイトルセンスの卓越ぶりなど、業界を生き抜くヒントがたっぷり詰まった内容です。

インタビュー

第3話

1999.06

放送作家に必要な能力

高須

さて。作家として自分が長けてる部分って何だと思う?
いろんなタイプの作家さんがいてるけど、自分にはコレがある!!というのはどんな部分?

中野

んー……。
それがね、いや、謙遜でも何でもなくて、全く無いんだと思うんですよ、僕には。
突出した才能なんて何にもなくて…。

高須

そんなことは無いでしょー。絶対何かがあるからこその今なのであって。

中野

うーん。んー。んー…。
強いて言えば、そう、えー、順応力、じゃないでしょうか。

高須

順応力…ね。なるほど。

中野

対応するチカラ、というか。
うーん。いや、でも結局僕はとても平均的なんだと思うんです。
どこがどう突出してるということではないように思うんですよね。

高須

あ、じゃあ質問変えるよ。「放送作家に必要な能力って何だと思ってる?」

中野

…きちんと人とコミュニケーションを取れる能力、というのは絶対に必要だなって。

高須

はいはい。

中野

うちの会社に新人が入ってくる時も、それを見てますね。
いくらおもしろいことが考えられても、コミュニケーション取れなかったら
結局伝えられないじゃないですか。
伝えることが出来たとしても、変な違和感が生まれるじゃないですか、集団に。
それっていうのは良くないんじゃないかなぁ、とか思ったりしますから。

高須

それはそうだね、確かに。コミュニケーション力って大事。
他にはどう?どんなことが作家を作り上げるんやろ?

中野

むー…難しくなってきましたね。
え、高須さんはそこ、どんなことを思います?

高須

俺は情報力って必要やと思ってるよ。
明らかな情報量が頭の中に入っていて、
これはこうだからこうだ、と人を説得できるチカラ、というかね。

中野

その情報力をかみ砕く分析力も必要ですよね。

高須

あー、そうね。

中野

「情報力」「分析力」「コミュニケーション力」。それに「順応力」。
大変ですよ、これ。

高須

でもね、どれも必要やと思う。うまく泳いでいこうと思ったら。

中野

確かに。

高須

自分らがそれをしっかりと出来てるかどうかは、全然別問題やで?(笑)
そんな偉くないよ、やっぱり。

中野

僕ね、高須さんは「場を作る能力」に長けてると思うんですよ。
それはまた順応力とは少し違うニュアンスなんですけどね。

高須

えー、そうかなぁ。

中野

何て言うんでしょう。場を乱すことなく、
自分の意見をしっかりと会議とかでプレゼンする能力っていうか。
意見を押し通す時って絶対波は立つわけじゃないですか、多かれ少なかれ。

高須

うんうん。

中野

でも、高須さんはそれが無い

高須

そうかなぁ? それなりに(波は)立ってるでしょ。

中野

でも、僕の周りでは一番うまーく、会議を運んでますよ。

高須

それって、何力(なにりょく)って呼べばええんやろ??

中野

んー、ネーミングとしては、なんでしょう。

高須

あのね、中野君がすごいのは「タイトル力」やと思うな。

中野

わーっ、それ、やめてくださいよっ。

高須

いやいや、これが中野くんのすごいところなの。ネーミングね。コ
ーナーとか、番組タイトルとかは中野くんがほとんど決めていると
言っても過言ではないっ。放送作家界のコピーライター、タイトル王。

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タイトル王!!(笑)たとえば、具体例は?

高須

いっぱいあるよ。『いきなり!!黄金伝説』とかもそう。
例えば会議をしてるでしょ。コーナーのだいたいの流れが決まって、
さあ、このコーナーのタイトルどうしようか、となるでしょ。
そしたら「よっ、タイトル王!!」言うて、みんなが中野くんを見つめるわけ(笑)。

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(笑)。

中野

最近では、テレ朝の特番の、ナイナイの『新番組をやらせろスペシャル』もそんな感じで考えたものでした。

高須

そのまんまやないか、という。

中野

ええ、ちょっと自虐的な雰囲気を込めまして…(笑)。

高須

なるほど。そういうニュアンスがこもってるわけね(笑)。

中野

前なんか、担当してないのに電話かかってきて、
「今ねー、こういうコーナーで煮詰まってるんだけど、何か良いタイトル無いかなぁー?」
って。突然そんなこと言われても……とか言いながら、
「えー、じゃあ【ヘアカタログを独り占めする男】ってのは?」って言うと
「あ、いいね。それで行くよ」とかって(爆)。

高須

(笑)。いやー、いろんなところで「タイトル王」と化してるでしょ?

中野

何かもう最近、それが当たり前みたいになってきて、
ちょっと面倒臭い時ありますもん!

高須

いや、そういうタイトルって大事やわ。絶対大事。
タイトルで、企画や番組の内容が、すうっと理解できるっていうのは
すごく必要で大切なこと。

中野

でも、それは放送作家の領域じゃないんじゃないかと、
やってる自分としては思っちゃったりするんですけど。

高須

そんなことないよ、表現力の一つとしてすごく羨ましいよ。
俺はそんなん無いから、全然思い浮かばないから、
いっつも「悔しいなぁ、悔しいなぁ」と横目で見るばかりよ、これ(笑)。

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あ、お二人のその絵面おもしろいですね。悔しそうな高須さん、おもしろい。

高須

おもしろいことない! 俺は悔しいっちゅーねん!(笑)
しかし、タイトルだけで今までやってきたことが綺麗にリニューアルされて、
刷新されて、同じなんだけれども違う、という色合いになったりすることってあるでしょう。
その色味の変え方が素晴らしいと思う。それって中野くんの才能だと思うよ。

中野

いやいや…そんなことないですって。

高須

あと、中野くんはいつもおいしい。愛されてる。

中野

いきなり、何を言い出すんですか!?

高須

いや、愛されてる。それがいい。いいなぁと思ってるよ。

中野

高須さんの方が愛されてますよ。
いや、俺ね、いや、あの、聞いてくださいよ!(とインタビュアーを見る)

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はい?

中野

高須さんが居るとね、とてもとても仕事がしやすいんですよ!
会議がするするっと運ぶんですよ。話がしやすいんです。
今さっき高須さんが言った「愛されてる」とか「おいしい」っていうのも、
それは高須さんがそういうフィールドを作ってくれて、
そこに乗っかった上でのことなんですよ。

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なるほど、わかります。

中野

だからね、俺は自分の関わる番組には、
全部高須さんに入ってもらいたいぐらいなんですよ、一緒に。

高須

うわー、嬉しいこと言ってくれるなぁ〜。

中野

会議でばばばばっ、と言葉を放つタイプでは無いじゃないですか、僕は。
どっちかっていうと、黙ってぎゅーっと考えてっていう。

高須

はいはい…。

中野

だから、高須さんが会議で明確に流れを作ってくれるっていうのが
すごくそこに居やすい状況で、ありがたかったりするんですよ。

高須

そうかなぁ。

中野

いいバランスだと、俺は勝手に思わせていただいてたりしますよ。

高須

いやいや、それはこちらこそだよ。

高須

うーん、いっぱい喋ったなぁ〜。

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一時間近く喋りましたね。ボリュームたっぷりです。
お忙しいところ、本当にありがとうございます。

中野

だったらいいんですが……。なんか全然、
的を射た話ができなかったような気がしてたんですけど、大丈夫ですか?

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大丈夫です、楽しいのが一番です。ええ。

高須

(インタビュアーに)中野くんを初めて見て、会って話を聞いてみて、どう思った?

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といいますと?

高須

……ぶっちゃけ、男前やろ?

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あ、はい! そうですね、男前ですね!

高須

遠慮なく言い切った、こいつめ(笑)

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いや、だって、ホントにそう思ったのでっ。

高須

彼はね、もてるのよ。

中野

何を言い出すんですか、もう(苦笑)。

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ええ、それはもう、そんな気がします。

高須

えっ、何? そういうのが分かるの!? もてる理由が分かるの!?

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分かりますよ。それはもう、明らかに。

高須

おいおい、洒落にならんぞ、それは。
えっ、俺は? 俺はっ?(焦)

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だ、第一印象だけなら、確実に中野さん有利か、と……。

高須

えええええええーーーーっ。

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例えば、合コンとかで絶対に第一印象のトップをかっさらうタイプだなーって。

高須

そう!まさしくその通りっ!!
何でかな。俺と中野くん、何が違うの? ぱっと見で。

中野

あー、それは今後の参考に(笑)、聞いておきたいですよね、是非。

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……た、高須さんは、楽しそうな感じがしますね。柔らかい印象です。

高須

うんうん。

中野

なるほど。

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一方の中野さんは……なんだか賢そうで、ハードなムードがありますよねー。

高須

おい待て! 後者のほうが明らかにポイント高いやん!(笑)

中野

(笑)

高須

この正直者め〜っ。

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聞かれたから正直に答えただけですよー!
どうせお二方とも、どう考えても、そこそこモテる立場でしょ!? 放送作家なんですから!

高須

……まぁ、うん。

中野

……ねぇ。

御影湯 中野俊成の湯 おしまい
「中野さん、お忙しい中、たくさんのお話をありがとうございました!!」

おわり

放送作家

中野俊成 さん

65年生まれ。放送作家。
20歳の時にラジオ番組の放送作家としてデビュー。
現在、『大改造!劇的ビフォーアフター』『ロンドンハーツ』『アメトーーク』『みんなの家庭の医学』
『こんなところに日本人』『プレバト!』『題名のない音楽会』等、十数本の番組に関わる。

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