御影屋

高須光聖がキク「高須光聖×中野俊成」 第3話

放送作家同士の対談「御影湯」の記念すべき第1回が掲載されたのは、2000年ごろのこと。高須自身も手探りのなか、中野さんと交わしたトークがすべての礎となりました。いかにして作家としてデビューしたのか、そして『大改造!劇的ビフォーアフター』などタイトルセンスの卓越ぶりなど、業界を生き抜くヒントがたっぷり詰まった内容です。

インタビュー

第2話

1999.06

放送作家今昔物語

高須

あのさ、ものを考える時ってどうしてる?

中野

僕はですね、空想です。手がかりは自分の中に、というタイプですね。

高須

外側から吸収したりは出来ないタイプなん??

中野

やー、僕は、ほら、テレビ見ないじゃないですか。

高須

あー、俺も見ぃひんなぁ。

中野

だからもう、自分の実体験から空想して広げていく場合が多いですね。
そんなことしてるから、いざ企画を出したら
「それはもうやってるよ」という場合も多々ありますけど。

高須

あるある、よくある。

中野

で、言われるんですよね。「なにをパクってんだ」って(笑)。

高須

ちゃうっちゅーねん、なぁ〜(笑)。

中野

そうそう、自分の中ではパクリでも何でもないんですけど、
テレビ見ないから被っちゃってて、結果パクリであるという烙印を押されて。

高須

あるー、あるなぁ。
中野くんはさ、「ウリナリ」の会議でとある企画を出したんだって。
そしたら、その企画とほとんど同じものが、
その会議の前の週で既にオンエア済みだったっていう(笑)。

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それは、痛い(笑)。

高須

「見てませんでした」「知りませんでした」っていうのも、まぁ、無い話やんか。
自分の担当してる番組の、しかもオンエア済みの企画を確認もせずに出したってのは。

中野

八方塞がりで、どうにも言い訳できませんでしたけどね、あれはさすがに。

高須

やー、怖いなぁと思ったよ。オンエアチェックは基本ですな。

中野

…はい。(苦笑)

高須

どう?放送作家。

中野

はい?

高須

なってみて、やってみて、良かった?

中野

あー……んー…。
才能という点ではどうか分からないですけど、性分にはあってるな、とは思います。

高須

性分にね……分かるなぁ、それ。

中野

ずーっと、決まったオフィスで仕事し続ける、
ということもできなかったりするんじゃないかなぁ。
朝から夕方五時まで、月から金でばっちりと、という仕事のやり方には、
すぐに根を上げてしまいますよ、きっと。
だから放送作家になった、ということもあるかもしれないというぐらいに。

高須

俺らがちょうど作家としてやりだした頃に、
FAXっていうもんが家庭に普及しだして、同時に携帯電話というものも出始めて…。
それによって、今まで確実に事務所を持たないとやれなかったことが
全部一人で出来るようになった。
原稿をどこででも書けるし、打ち合わせの時間も全部自分一人で調整できてしまったりするし。
放送作家の自由度っていうのが、そういう機器によっても上がった、というのはあるよね。

中野

そうですねー。自由度は当時からしたら飛躍的に上がった、うん。

高須

だからなー、そのうちにテレビ電話で会議して、
現場に行かなくても大丈夫、というようなことが起こってきたりするんちゃうかなーと、
俺は未来を読んでいるのよ。

中野

携帯電話だってこんなに普及するとは思ってませんでしたもんね。

高須

うそう、メールとかインターネットにしたってそうでしょ。
こんなことが大多数にとって「普通」になるなんてさぁ、本当に思いもしなかったし。
だからなー、そのうちに
「へぇ、高須さん、車に乗ってCXに会議とか行ってたんですかー。
 めんどくさかったんですねー、あの頃は」
とか言われるような時代が来るんじゃないかと思うのよ、作家の世界にも。

中野

だってもう、普通の企業ではテレビ会議なんて当たり前にやってたりしますしね。
この業界が遅いだけかもしれませんよ。

高須

そう。だからきっと
「あーっ、お台場から赤坂へ急がないと遅れる〜」
なんてことが無くなってしまったりするんや、きっと。五年ぐらいで。

中野

僕、携帯持つの早かったんですよ。新しもの好きだから。

高須

え。まさかあの、まだまだコードレスホンのお化けみたいなカタチしてた
頃から使ってたの?

中野

そうですそうです。
こんなでっかくて、すごくかさばって、持ち歩くのも面倒で。
で、会議の時とかテーブルの上に出しておけないんですよ。
出してたら顰蹙ものでしたからね、当時。
「お前そんなの使ってるのかよー。俺は携帯なんて一生持たないぜ〜」
って、みんな言ってましたからね。

高須

言ってた言ってた。みんな言ってた。(笑)

中野

今、みんな持ってますからね(笑)。当然のように。

高須

あと、パソコンな。便利だよなぁ〜。

中野

便利ですねー。これで直接FAXも送れちゃうし、もう便利便利。

高須

そして、送ってる場所が分からないのがいい。
どこで仕事してるかが分からない。それが素敵。

中野

あれねー、時間も消しといたら更にばれないんですよ。

高須

あっ、なるほど。
直前に送っても、大分前に送っておきましたよー、と言えるわけか、なるほどー。
よし、時間消そ。(笑)

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あのぅ、最近は受信側で時間記録するのもありますから、
そううまくはいかないと思いますけど…。

高須・中野

ちぇーっ。

第3話へつづく

放送作家

中野俊成 さん

65年生まれ。放送作家。
20歳の時にラジオ番組の放送作家としてデビュー。
現在、『大改造!劇的ビフォーアフター』『ロンドンハーツ』『アメトーーク』『みんなの家庭の医学』
『こんなところに日本人』『プレバト!』『題名のない音楽会』等、十数本の番組に関わる。

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