御影屋

高須光聖がキク「高須光聖×山名宏和」 第2話

松尾貴史さんらとの出会いを通じて、放送作家としての幅を広げていった山名さん。テレビのことを深く考えつつ、二番バッターとしての存在感や、逆に作家が持つブランド力についての話で盛り上がりました。そして当時のテレビやメディアを取り巻く社会的な環境がいかに「やってはならないこと」をやっていたか…「恋空」などの具体的な例を出しつつ、真正面からテレビはどうあるべきか、作家はどうあるべきかを語らいました。

インタビュー

第1話

2008.11

バンカラと英語劇

山名

最近やってなかったですよね、この対談。

高須

やってなかったね。これも難しいねん。最初にある友人の作家が誰でもかれでもこの対談に呼ばない方がいいですよねって言われて…

山名

なるほど(笑)

高須

もちろん誰でもかれでも入れている訳ではないねんけど
自分が知ってる人でみんなが納得する人って難しくて。
あまり沢山の作家を知らないけど、一応知ってる中で考えました所
遅くなりましたが山名先生をと。

山名

いやいやいや。

高須

ところで唐突やけど、山名いくつ?

山名

僕、41になりました。

高須

41か・・・もうそんなになる?
俺「できる若手おらへん?」って言うて
山名を番組のディレクターに紹介した事あったなぁ~

山名

でもそれ随分前じゃないですか? 「気分は上々」の途中あたりだから。

高須

上々の途中か~。そん時にすぎもっちゃん(杉本達)に
「コントの台本が書けるいい作家おれへん?」って言われて山名を紹介したわ。
まっそんなことは後でゆっくり話すとして。
山名って出身って何処?

山名

東京です。育ちは川崎ですけど。
田園都市線の宮崎台に住んでいたんで、まぁまぁ東京圏ですね。

高須

兄弟とかは?

山名

弟がひとり。

高須

長男やー。俺なんか姉ちゃんがいるイメージあったわー。
トシの離れた姉ちゃん。
大学どこだっけ?

山名

東京水産大学ですね。今の東京海洋大学。

高須

そうそう。だからイカとかの話はめちゃめちゃ知ってるもんな。

山名

いや、カニです。

高須

そうか、カニかハッハッハ(笑)。こりゃ失礼。
でなんでその大学行ったんやっけ?

山名

もともと生物学が好きで。さらに元をたどれば中学生くらいまでは
医者になりたかったんですよ。父親が医者だったから。

高須

へぇー。お父さん医者なんや。ちゃんとしたとこの子やんか~。

山名

まあ、そこにはいろいろあるんですけど。
だけど医者になるのは大変ですよ。お金かかるし。
でも、子供の頃から動物とか好きだったから、じゃあ、生物系に行こうかと。
だけど、中学高校と私立の進学校だったし、
まあ、家庭の事情もあって学費の安い国公立で、自宅から通えて、
現役で入れてと、もろもろの条件があったのが東京水産大学だったんですよ。

高須

そして一発で入ったと。で、勉強とかはちゃんとしてたの?

山名

これが入ったら・・・最初はやる気マンマンで入ったんですけど
水産大学って男女比が当時は9:1くらいで荒くれている大学なんですよ。
で、あっという間に酒びたりの日々。

高須

なんかちょっとベタな展開やな…
ちゃんと勉強して、志も高くて、堅い職業に就きそうなタイプに見えるのに。
そんなつもりで入ったんちゃうん?

山名

入ったんですけど、まぁー・・・僕の中には文系の僕がいて、大学入って、
誰かに誘われて小劇場とか観て「ああ、こういう世界もあるんだな」と
そういうものに興味を持ち始めるようになって。

高須

わかるわぁ~山名は自分で小劇場とか立ち上げて貧乏なところに入っていく
タイプやわ(笑)大学の演劇部とかにおったの?

山名

サークルですね。

高須

それは既存のとこなの?

山名

これがね、普通の演劇サークルじゃなくて、今回初めておおっぴらに
しますけど、英語劇なんですよ(笑)

高須

でたぁ・・・(笑)なんでまたそんなややこしい所にいくねんな。
まっそれも山名らしいっちゃ~山名らしいけど。

山名

大学の時に新入生の勧誘とかあるでしょ。で、僕、大学に入るまで酒とか飲んで
いなかったんですけど、気が付いたら新勧コンパとか連れて行かれちゃって。
なんかこうズルズル巻き込まれるようにそこに入っちゃったんですよね。

高須

可愛いコがいたとかでもなんでもなく?

山名

可愛いコも何も男しかいないですからね(笑)

高須

でも、巻き込まれても嫌なモンは嫌やし、興味がないものは入らへんやん。

山名

まず僕が、なんで水産大学に入ったかというと、試験に英語がなかったからって
ぐらい英語がダメだったんですよ。
でも、今となってはわからないんですけど、気が付いたらいたんですよ。
もっと楽しいサークルとかあったと思うんですけど、そこでなんだか
楽しい日々が始まったので、まぁいいかと。

高須

へぇ~。で、そこで何すんの?

山名

一年に一回公演みたいなのがあって。もちろん、セリフは全部英語なんですよ。
一年生の時はチェーホフの「桜の園」をやりました。

高須

ごめん俺たぶん、何百回大学に行っても
英語劇サークルに立ち寄る事のなかった人間やわ。
運動系は選択肢としてなかったの?

山名

ないです。思いっきり文化系ですから。

高須

じゃ~もうちょっと軟派なのはなかったの?スキー、テニスみたいなのとか。

山名

ないです(笑)庭とかで一升瓶飲んでいるような大学ですから。

高須

古いなぁ~。中村雅俊の世界やん。

山名

今は無理みたいですけど夜中に教室にカセットコンロを持ち込んで
みんなで鍋とか食べてましたからね

高須

古っ!かまやつひろしのバンカラ世界やん。

山名

そうなんです。で、明け方まで飲んで部室に泊まって
午前中は起きられないから授業は3限、午後から出てました。

大量採用でサンリオピューロランドへ

高須

じゃあ、大学入ってちょっと今までの自分にはないような演劇の世界があったり
楽しいバンカラな世界もあってんけど、もうそろそろ世の中を見なアカン時期に
入ってくるやんか。年齢的に。それはどうしよと思ったの?夢はあったの?

山名

それまで何も考えてなくて。でも、バブルの末期だったんで僕の年はまだ。
売り手市場だったんですよ。だから、どこでも良ければ入れたんです。
一応就職活動とかしましたけど。

高須

どこ受けたの?

山名

広告代理店受けましたよ。何にも考えてないんだけどとりあえず。

高須

えっ、そういう人間なん!?俺なんかはそういうとこ全然下調べせん
人間やったけど山名なんかは意外としっかりしてそうなのに。

山名

いやー、全然してないですよ。行き当たりばったりですね。
でも、結果的に入らなくてよかったと思いますよ。
その頃、芝居の手伝いとかしてたんですけど、そこで知り合ったのがなぜか
サンリオの社員なんですよ。で、「多摩センターにサンリオピューロランドが
オープンする。人もいっぱい採用するし試しに受けに来ない?」って誘われて、
受けたらまぁまぁ大量採用なんであっさり受かって。一ヶ所受かったから
それ以上頑張る気力もなくなって、まあ、そこに入ったわけです。

高須

そりゃ、分からんよね(笑)。テレビにはどこから興味持ったの?

山名

それが実は、大学2年までテレビを持ってなかったんですよ。
バイトばっかりしていて、テレビは見てなかったんです。
大学1年の終わり頃から3年の始めくらいまで劇団に入ってお芝居をやっていて、
その時にたまたま勧められて3年の夏からこの仕事を。

高須

そこで、何の仕事すんの?

山名

館内の案内とか、物販とか。

高須

スーツとか買って?

山名

買いましたよ。就職活動の時。でも会社にはおそろいのスーツがあって。
モスグリーンのスーツにキティちゃんのネクタイ(笑)。

高須

キティちゃんのネクタイしてウロウロしてたんや(笑)

山名

そう。館内をウロウロ。

高須

こっから長いでぇ~放送作家になるの。

山名

いや、でも10ヶ月くらいしか働いていないんですよ。
水産大学と逆で、男女比が2:8でで女の子もいっぱいの夢のような会社なんですけど。
すごくハードで朝9時に出社して、夜中2時とかまで仕事しているんですよ。
一ヵ月半くらい休みがなくて。でも当時は残業代がつき放題だったから
すごい給料になったりしましたけど。

高須

ええやんか~。

山名

確かに楽しいんですよ。毎日が文化祭感覚で。
ただ、文化祭とかって大変でも楽しめるのは、準備して当日があって
それで終わるからだと思うんですよ。でも、仕事だと終わりがない。
ワーってオープンして、それからまた大変な日が続くじゃないですか。そうなると
途端に辛くなって、「ずっとこんな事でいいのかな?」ってちょっと思い始めて
で、その頃、異動もあって、僕、計算とかダメなんですけど理系だからって
いう単純な理由で経理をやれって話になったんですよ。

高須

うわっ、最悪やん!学者みたいなメガネかけてるからやわ(笑)
あんなところの経理めっちゃ大変やん。

山名

で、「向いていないからやめようと思うんです」って相談して、説得とか
されたんだけど結局経理に異動させられて、最後の一ヶ月くらいずーっと出てくる
伝票を一日中ひたすら切ってファイルする拷問のような生活を送っていましたよ。

第2話へつづく

放送作家

山名宏和 さん

1967年東京都生まれ。
古舘プロジェクト所属。
現在担当中の主な番組は、『行列のできる法律相談所』『ダウンタウンDX』『この差って何ですか?』『たけしの健康エンターテイメント!みんなの家庭の医学』『ガイアの夜明け』『TheCovers』など。完全なる雑食系放送作家

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