御影屋

高須光聖がキク「高須光聖×土屋敏男」 第7話

『電波少年』を大ヒットさせた後、日本テレビの編成部長に就かれた当時の土屋敏男さんと、高須さんとのガチトーク。テレビを愛してやまない男たちが、テレビがヤバい!死にそうだ!と焦りだしたリアルタイムの緊迫感が詰まった対談です。それはまるでかつて輝いていた愛する人が歳を取り、変わり果て、弱っていくのをそばで見るような絶望。作家として、編成部長として、なによりテレビマンとして何ができるのかを探り、語り合う姿は、まさしくドキュメンタリーでした。
編集/サガコ

インタビュー

第7話

2003.01

情熱と苦労の狭間

高須

わがままな話かもしれないと分かって言うんですけど、
情熱が苦労に勝てなくなるときっていうのがあるんですよ。
で、そうではない現場っていうのを、いつも求めてしまうんです。

土屋

今日もね、八時くらいから夜中二時まで会議に出てたんだ。
バラエティ番組の構成会議に、エマージェンシーかかって出てきたんだよね。

高須

編成部長なのに、なんで番組会議に出てるんですか(笑)。

土屋

だって呼ばれるんだもん(笑)。
だけど、ああじゃないか、こんなのがあるんじゃないかって会議やってると、
楽しくてしょうがないんだよね~っ。

高須

今日の会議、一緒に出ていて、
やっぱり土屋さんは現場の人だよなーって、僕は思いましたよ。
やっぱり優秀なディレクターは優秀な作家でもあるんですよ。これは絶対間違いない。
だから、会議に出るのが土屋さんは楽しいんですよ。
僕が思う何人かの優秀なディレクター達は、やっぱり優秀な作家でもありますからね~。
だけど、どんな優秀な人間でも一人では確認が出来ないんですよね。
だからこそ、会議という場が必要だったり、作家というキャッチボールの相手が必要なんだな、と。

土屋

意外な球が返ってくる時の発見は、一人では絶対得られないしね。
「なるほどねぇ!」って時があるよね。

高須

僕ら作家がどんな変な球を投げられるのか?
この演出家、ディレクターにとって見たことのない球筋っていうのは、どこだ?なんだ?
そういうやりとりが楽しいんですよね。
けれど、優秀な作家が優秀なディレクターになれるのかと言えばそうではない、
という気がするようなこともあったり…。
いつまでも、どこまでいっても作家はこの位置でしかないのか?
不完全燃焼な部分を持っているしかないのか?
ということは考えるところなんですよね…。

土屋

そうだね。だから、海老克哉は正妻になりたがるんだよ。
不完全燃焼ができる限り少なくなるように、自分の納得のいく現場だけを選びはじめてるわけさ。

高須

いや、例え正妻になったとしても、僕は残ると思うんですよ、その不完全な部分って。

土屋

そりゃそうかもしれないけどさ、
「この旦那とならば、私は死ねる!」っていうのはあるよ。
「心中願望」なわけだな(笑)。だけど、それによって完全燃焼の感覚は得られるわけさ。

高須

なるほどなぁ~。
俺は……遊び好きですからねぇぇぇ。だめですよねぇぇ(笑)。

土屋

まー、いろんなタイプがいるからねー。

高須

今後の作家は一体どこへいくのやら。
ずっと続けていける職業じゃないんじゃないかと。

土屋

だけど、大岩さんや、豊村さんみたいな人達もいるしずっと一線だよ? 60近くで。

高須

そうですよねぇ。
でも、僕にはまだ実感できませんよ~、60歳までの道のりそのものが。

土屋

生き方はいろいろあると思うんだけど、こないだ高須ちゃん、ドラマやったじゃない?
『伝説の教師』や『明日があるさ』。

高須

あれも、やってる最中はたまらんのですよ。
しんどくてしんどくて、僕思いっきり身体壊しましたからね。
映画の時も、そんな具合で。
こんな事をずっとずっとやるなんて、いやだー! ってすごく逃げ出したくなるんですけど、
いざ、出来上がった物を見ると「ああ、またやりたい!」って思っちゃうんですよね。

土屋

我々バラエティ班にとってはさ、ドラマや映画の作家は「大奥」って感じがするじゃない?

高須

ああ、しますねー。未知の領域っていうか、高貴な存在というか。

土屋

そりゃそうだよね、同じ「作家」っていったって、
バラエティとは全然違って、役者の台詞を全部書いたりするんだもん。
監督の存在だってもちろん大きいけれど、ドラマの作家っていうのは、
自分が全部を決められるようなものだから、それこそ「大奥さま」なわけだよ。

高須

でも、僕には「大奥さま」は無理ですね~。
元々がこれだけバラエティですからね。
たま~に行って、たまーにやれるからこそあの特別な感じを楽しんでやれるんであって、
ずーっとやれって言われちゃったら、僕はきっとあわないと思います。

土屋

でもさ、俺らが今、会議してる映画……これはおもしろいよなぁ?

高須

おもしろいですねー、たまりませんね。ぜったいおもしろいですよ。

土屋

だよなぁ!

高須

詳細は言えませんけど、絶対おもろい。これはもう、見えてますもん。

土屋

映画のことについては、僕ら二人以外にももう二人……
計四人で話をしてるんだけど、この四人での話がたまらなくおもしろいんだなぁ~。
「こんなおもしろくてお金もらっていいのかなぁ」ってホントに思っちゃうよね。

高須

宮崎駿さんとか、うらやましいですよね。
「賞なんかどうでもいい。自分の好きな作品を作りたい」ってコメントを聞いたとき、
なんてうらやましいんだろうって思いましたよ。
それをずーっとやり続けてるわけですから。
よくお金が要らないなんて言ったもんだなぁ~と。あの方はきっと幸せでしょうね。

土屋

宮崎さんの奥さんの話を聞いたんだけど、
いろんなことでもうかったお金って言うのを、奥さんがいろいろと寄付しちゃうらしいね~。

高須

それもまたすごい話ですよね~。

土屋

だから、お金がないから働いてるって聞いたんだけど(笑)。
それもおかしな話だなぁと思ってさー。
おかしいというか、すごいというか、さすがというか。
だからさー、クリエイター界っていう大きな世界でいうとさ、
宮崎さんっていうのは、やっぱり永遠の憧れだよね。

高須

そりゃあそうですよー。あの年齢で、あの場所に君臨してるんですから。

土屋

オレ達も、ああいうところを目指したいよね。
秋元康さん方面って言うのも確かにあるんだけど、
そして、おちまさとはそっち向かってるけれども。

高須

でも、俺らは宮崎駿方面だと!(笑)

土屋

そそ、そういう感じ(笑)。

高須

人って、不安じゃないですか。例えば、人があることで注目されたとしたら、
いつまでも注目され続けたいと思うのが人でしょう。
そういう時に、いったいどうしたらいいのか?
いろんなやり方があるんでしょうけど、結局僕は
「作品を作る」に尽きるんじゃないかと思うんです。
「アレをつくりあげた土屋敏男」であるとか「アレを作り出した高須光聖」
っていうのが一番強いんじゃないかと思うんですよ。
宮崎さんは「千と千尋の神隠しを作り出した宮崎駿」でしょう。
アレがあるから注目され続けて、かっこいい。
どこへいっても、どこまでいっても、宮崎駿は歳を取ることなく、存在し続ける。
注目され続けるためには、カッコイイ物を作り続けるしかないんだと、僕は思ってるんですよ。

土屋

そうだねぇ。

高須

やっぱり作るしかない。作ってる人は、絶対にかっこいいんです。

土屋

そうだよなぁ……。やっぱりそうなんだよなぁ~。

高須

ほとんどの人がねー、作ってるところは見てないわけですよ(笑)。
つくってるところなんて、結構かっこいいんですけどねー。

-----

見る人達は完成品しか見れませんもんね。

高須

そうなんよねぇ~。

土屋

こんなんでお金もらってしあわせだなぁっていう一瞬と、
ホントにホントにツライ一瞬と…。
どっちもあって当然で、「生きていくっていうのはそういうことよ」と言われたら、
それはそうだろうなぁと思うし、「どっちもあって、バランスが取れてるじゃない」
と言われたら、それもそうだなぁと思うけれども。
…でも、情熱とか、テンションとか…パッション…
そういったものをこれからも大事にしていたいよね。できる限り、さ。

おわり

プロデューサー

土屋敏男 さん

LIFEVIDEO株式会社 代表取締役社長 兼 日本テレビ放送網株式会社 編成局ゼネラル・プロデューサー
昭和31年9月30日静岡県静岡市生まれ(58歳)
1979年3月一橋大学社会学部卒。同年4月日本テレビ放送網入社。
主にバラエティー番組の演出・プロデューサーを担当。
「進め!電波少年」ではTプロデューサー・T部長として出演し話題になる。
このほかの演出・プロデュース番組
「天才たけしの元気が出るテレビ」
「とんねるずの生ダラ」「雷波少年」「ウッチャンナンチャンのウリナリ!」
「電波少年的放送局」「第2日本テレビ」「間寛平アースマラソン」
「岡本太郎『明日の神話』修復プロジェクト」「NHK×日テレ60番勝負」
など多数

ON
OFF