御影屋

高須光聖がキク「高須光聖×合田隆信」 第5話

先日、復活特番となった『学校へ行こう!』をはじめ、『ガチンコ!』など、アイドルが全力で取り組むバラエティを数々成功へと導いた合田隆信さん。彼は芸人バラエティを潰した戦犯だったのか?その背景にはTBSが抱えていたジレンマや、芸人に対するコンプレックスや憧れなどがたくさん渦巻いて……!?本音で語られる失敗談も含め、胸を熱くするお話がいっぱいです。
取材・文/サガコ

インタビュー

第4話

2002.01

右でも左でもいいから

高須

あのね、年のせいかもしらんけどもやね、
俺って最近、人の嫌な思いするようなものは
つくりたくなくなってきてんのよ。(苦笑)
そういうのは作っちゃいかんだろう、と。
『学校』の『未成年の主張』なんて、そういう意味では
すごくきれいな企画やんか。そういうのがいいなぁって。

合田

あれって、僕というよりも、後輩の江藤が作り上げた
コーナーなんですよ。
僕は、あの未成年の主張が企画会議で説明された時、
そんなコーナーは成立しない、と思ったんです。
ところが、江藤はできる、と言った。
江藤は『からくりテレビ』で、そういうVTRづくりのノウハウを
がっつり身につけてきた男ですから、見えたんでしょうね。
僕は、人がイヤな思いするとかどうとかっていうのは、
あんまり気にしない方なんです。
だけど、江藤っていうのは欽ちゃんやさんまさんのテイストを
身につけて育ってきたディレクターですから、
やっぱり高須さんがさっきおっしゃったように、
人の嫌がる感じの笑いはつくらないんですよ。
だから、高須さんが『未成年の主張』に共鳴するのは、
江藤の持ってる、その部分に反応してるんでしょうね。

高須

なるほどなぁ、そういうことやったんかぁ。
ゴウちゃんはじゃあ、相変わらず濃い方へー、濃い方へと
行ってるわけやね。

合田

ええ、高須さんの意向と真逆すぎて申し訳ないぐらいなんですけど(笑)。

高須

いや、それはそうだと思うよ。
俺もこの年齢になって初めてそう思ってきたんやもん。
だからその濃さは大事やって。
だってその濃さ丸出しの『ガチンコ』で、合田流のテレビってものが
確立されたわけやしさ。

合田

それは、うん、確かにそうかも知れません。

高須

あの大仰なナレーションとかさ、画面の作り方とかさ、
合田テイストって呼ばれる物が完全にできあがったんやもんね。
俺、日テレの土屋さんや〆谷さんと話してたんやけど、
『ガチンコ』は、カメラマンが巧いね。

合田

元木さんですわ。

高須

うん、めちゃめちゃうまい。あの画はパワーあるもん。
ファイトクラブなんかで、迫力のある、ここぞの表情を
ビタッ! と決めるやんか。

合田

元木さんはすごいですよ。天才です。

高須

あんな画面、他のカメラマンでは撮れないって!

合田

いまだに大事な企画は全部、元木さんに撮りに行ってもらってます。
テリー伊藤が唯一認めた天才カメラマンっていうのは、
やっぱり伊達じゃないです。

高須

そのカメラワークと、企画と、演出が見事に噛み合ってるから
すごいのよ、『ガチンコ』って。だからこそ、あれだけの
画面からの引力がずあっ、と迫ってくるんやと思う。

合田

ここぞって時の迫り方が違うんですよ。
ぶれていてもいい、ぼけていてもいい、気迫で寄ったら
それが良い画なんだって、若い人にも伝えてると思うんですよ。
でも、言われてすぐにできるわけなくて、やっぱりびびるでしょ?
元木さんは、それがない。絶対退かずに、寄っていく。
あれは誰にも真似できません。
で、あまりにもアップからアップへと画面が滑るもんだから、
番組宛にお年寄りから
「目が回ります」っていう苦情が来ましたけどね(笑)。

高須

へぇ~(笑)。

高須

しかし、TBSもおもしろいバラエティ作れるようになったもんなぁ。
ゴウちゃん、頑張ったんやなぁ。

合田

うーん、どうなんでしょ(笑)。
外部から仕入れる、ていうのは確かに頑張りましたけどね。

高須

それは情報とか?

合田

情報も、人材も、作り方も全てですね。
『生生生生ダウンタウン』の当時も、外部の当たってる番組を
作ってる作家さんや技術さんに、
「あの番組、どうやって作ってるの?」って訊きまくってましたからね。
電波やってる人には「土屋さんってどういう人?」とか
「会議はどんな感じでやってんの?」とか。

高須

そんなに訊いてたんかい。

合田

ええ、もう人柄まで(笑)。
だって、会議は人柄で決まったりするでしょう? 特に演出の人柄とか。

高須

まぁなぁ。その人がいるだけでっていうのは、あるわなぁ。

合田

『生生生生』か終わって、四年目ぐらいですよ、その時期は。
あの番組以来、結構異例の速さで出世してしまって、
30歳ちょうどで演出まかされたりしてですよ?
そんな若造が、どうやって会議しきるんですか(笑)。
無理ですよ、年上の作家さん達ばっかりなのに、仕切るなんて。
だったら、自分で情報仕入れて、勉強して、磨くしかなかったんですよ。
まぁ、ペーペーでしたけど、それがばれんようにばれんように
してたっていうか、繕ってたわけですけど。

高須

でも、それが良かったんじゃないの?
繕うって事は、自分で即断即決するってことでしょ?
ばれる前に(笑)。

合田

そうです、そうです(笑)。ばれる前に、決めちゃう(笑)。

高須

それって絶対大事!
ずっと誰かの下についてたら、自分で判断しなくていい。
それって、どんどんダメになっていくのよ、作り手として。
やっぱり、早いところ任されて、決断をしてっていうのを
訓練していかないと、優秀なディレクターは育たないって。

合田

それはそうかも。
今、高須さんに言われてみて、そう思いますね。
当時、ばれないようにしてたんが、今活かされてるのかもなぁ。
とにかく【即断即決】を求められていたんです。
間違っていてもいいから、ここで決断を下さなければいけない。
そういう局面が、実際に番組やってくると何度も出て来るじゃないですか。
オンエアは絶対、待ってはくれないから。
そんな時は「右なら右と、もう決めました!」って
みんなに言わなきゃいけないんですよ。
それは、よくよく考えたならば、左の方が正しかったのかも知れない。
でも、左の答を出すために一時間かかってしまうんだったら、
今、右にした方がいい、とか。
今でもそうです。とにかく、早く決める!
ま、それで失敗したことも数知れずですけど(笑)。
とにかく部下とか、作家さんに自分が動揺してるところを見せない!
決断を下したなら、変更しない。責任を持つ。
変更しないって決めたら、責任持てるようになるじゃないですか。
そういう風に自分を追い込んでましたよね、若い頃から。

高須

大事なことだよなぁ。
だって、リーダーなんだから、演出って。
武士に二言はない。吐いたつばは飲み込まない。
これを実行するってことは勢いだけじゃ絶対無理。
自分一人の時に、誰よりも考えたからこそ
誰よりも迷わずに決められるんであって、
何も考えてないまま即決する演出は、こりゃ問題外。
本当にいい演出って、人一倍考えてるもん。
そういう意味じゃ、合ちゃんは今、つらいでしょ?

合田

そんなのもう、つらいって言うのもダメでしょう(笑)。
だって、自分がそれを選んだんだから。

高須

追い込むねぇ、相変わらず。

第5話へつづく

ディレクター

合田隆信 さん

1967年石川県生まれ
1990年TBS入社
学校へ行こう、ガチンコ!、さんまのからくりTVなどの演出•プロデュースを経て
現在バラエティー制作二部長

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