『ASAYAN』や『つんくタウン』『チョナン・カン』『SmaSTATION!!』など、パッと見ただけであの人の演出だ!と気づけてしまうような画作りで強い印象を残すタカハタ秀太さん。ヒットメーカーの印象が強いのに、本人曰く「数字が取れない演出家」だった!?テレビのバラエティから映画に至るまで、高須さんと交わす映像演出にまつわる細かくて具体的なトークの数々は必見です。
インタビュー
第5話
2006.07高須
『ASAYAN』はそういう経緯だったんですね。そして「つんくタウン」。
そこから映画を自分で撮ろうと?
タカハタ
いや、そのときはまだ思わなかったし、一切撮らなかったですね。
高須
そうなんですか?
タカハタ
そのときはね。将来的に映画を撮るのかなぁって
おぼろげには思ってましたけど、撮りたい!っていう欲が
全然なかったんですよ。
高須
そうなんですか。その後は、すぐSMAPですか?
タカハタ
そうですね。
『ASAYAN』をずっとやっていて、『つんくタウン』が始まって…
あ、僕はそれまでどんな番組も都築と2人だけだったんですよ。
『ASAYAN』には鮫肌さんもちょっと入ったんですけど、意見を聞いてもらう感じで。
『つんくタウン』をやるときに都築が
「おさむくんっていう面白い子がいるんだけど」って。
で「いいよいいよ~」ってなって入ってもらったんです。
で、初対面くらいで中身の話うんぬんではなくて
「出演お願いします!」みたいな(笑)。
おさむくんは悩んでましたけど、「いいですよ~」ってなって。
高須
へ~!それで、次は『SmaSTATION』にいくわけですか。
タカハタ
いやいや、その前に『チョナン・カン』をやって、スマスマ特別編で「同学年」、
さらに半年後に『SmaSTATION』です。
高須
その頃はまだ自分でまわすところまで全部やってるんですよね。
すごいっすねぇ。
タカハタ
なんですかね、普通テレビ局のディレクターだと下に若い子がいるので、
次の子に引き継いで僕は課長に昇格します、とかそんなんじゃないですか。
僕の場合はフリーだから代わりがいないところを使ってくれてるわけで、
なかなかね。他に任せることも出来ないんです。
高須
なるほど、ちゃんと自分の足で行って撮って編集までしないと、みたいなね。
今も何から何まで全部自分で撮ってるんですか?
タカハタ
今は、『チョナン・カン』に関しては、ある程度キャプションを僕が拾って、
繋がせたものをチェックしてっていう感じで。
高須
でも、最初はそれも全部自分で撮ってたんですよね?
タカハタ
はい。
高須
すごいな~!
『SmaSTATION』は生ですよね。VTRは任せてるんですか?
タカハタ
そうですね。
本人たち(SMAP)が出るものに関してはやりますけどね。
高須
そっかー。そうですよね。
でも現場行ってどうのこうのっていうのはやるんですよね。
それはもう大変でしょう?
タカハタ
現場は行きますね。それは大変ですねぇ(笑)。
高須
でも、大概はそれをしなくなるんですよね。
タカハタ
そうなんですか?
高須
演出のすごい優秀な人たちもしなくなるんですよね。
現場を見ないと、「現場とこの画が違うやないか!」って
言えなくなってしまうから。現場を見ていれば、
「あれ、あの画はどこいった?」とか、
「あんなん喋ってたのにここでもう入れてしまうの?」とか
直しが効くじゃないですか。でも、上がりだけを見ていると、
「これしか撮れなかったのか」と思ってしまうから、直しが効かないでしょ。
どんな画があるかすらわからない。現場行ってりゃいいんですけどね。
タカハタ
そうですねぇ。
高須
でも、総合演出とかになると現場に行かなくなるじゃないですか。
それで、「こんな画はなかったの?」って聞いて、
「そういえばあったかもしれません」って言われて、
「じゃあ、それを探そう」ってなって…。
その画があればいいけど、見てないものに対して
"こんな画"ってもんを想定できない演出もいてるじゃないですか。
それに「こういう画はなかった?」って聞いて、
「なかったですー」って言われるでしょ。
多分あるんですよ。
全部ちゃんと見たら「こんなおいしい画があるやん」ってのが。
現場に行っていれば、全然ダメなものでも、この絵、全部死んでるってなっても、
「あっちの話とあの顔で、ナレーションでこうしてこうして、
よし、この顔があるおかげでつながった!」みたいことが出来るじゃないですか。
タカハタ
そうですね。そういうところが面白いんですよね。
高須
そうそう。
タカハタさんは現場を見てる分、そういうときの画作りも巧いんですよ。
僕が勝手にそう思ってんのかもしれませんけど。
やっぱり、編集する人間のカラーが出るじゃないですか。
タカハタさんみたいな色のある演出家ってほんまにそういないですよ。
そういうのがやっぱりすごいなぁと思うんですよね。
タカハタ
いやぁ、日本一の放送作家の高須さんにそう言われると嬉しいですね(笑)。
高須
だぁ~かぁ~らぁ~っ!日本一じゃないですって。
タカハタさんもよく言いますねぇ(笑)。
タカハタ
でも、色のある演出家と言われて嫌な気はしませんけども、
いかんせん僕は数字が取れないので有名なディレクターですからね。
高須
なんでですかね。
タカハタ
僕ね、数字をあんまり気にしないんですよね。
数字を取るために何かをしなきゃって感じじゃなくて、
これを見せたいっていうのが優先になってるので。
最初は都築に「人に見てもらわなかったら意味ないよ」とか
そんな話をされたりもしたんですけど、
数字を上げるために下品なゲストを呼ぶのも嫌だしなぁ、って。
で、それを都築は諦めてくれていて(笑)。
高須
なるほどね~。
タカハタさんは最近そんなにテレビ見てないって言ってましたけど、
僕は仕事上いろんな人の番組を見るじゃないですか。
そうするとね、いろんな発見もあるんですよ。
「あ! これ誰かのパクリやん!」って。
僕はもう……すぐに思ってしまうんですよ。そういう経験あるでしょ?
タカハタ
それはありますね~(笑)。
高須
タカハタさんも結構盗まれてますよ。画だけ見ても思ってしまうんですよ。
普通の視聴者はわからんかもしれんけど、
「これ、肝になる部分をこっちに持ってきてるだけやん!」
って思ってしまうと、嫌なんですよね。
この人の画作り、この人のタッチ、このテロップの出し方、
こういうものはこう見せる、っていうのがあるじゃないですか。
もちろんそれを自分で巧く消化して、自分のものにしていくってのもあるんですけど、
「うわー! これ面だけマネして本質をとってないわー」
みたいのもあるんで、そんなん見るとムカつくんですよね。
タカハタ
そうですね(笑)。
やっぱり誰かがやっていることは絶対やらないですからね。
むしろ、違うものを探していく作業というか。
そうすることで必然的に新しいものが見えるのかもしれませんよね。
高須
自分でいいもんを見つけると嬉しいですよね。
演出面とか技術的な部分で重きを置いている部分とかってあります?
タカハタ
何だろう……。空気でしょうか。
スタッフや演者が気持ち良くなるような空気をまず現場で作りますね。
ベテランの技術さんにも皆の前で助手を怒鳴らないとか。
あとは食事。特番や映画のときもそうだったですが、
制作費に占めるケータリング費の割合は結構いってます。
仕出し弁当を配るなんて事はありえないですね。
しかも映画のときは毎日メニューに凝って。(まあスタッフが作るんですけど)
炊き立てご飯は勿論、揚げ物、煮物、汁物、炒め物……
現場で流し素麺やったこともあるし、ソフトクリームマシーンとか
エスプレッソマシーンとかも用意して。
そんな画面とは関係ないところから始まってるって気がします。
高須
演出の下準備、作品の下ごしらえが
そんなところまで行き届いてるって、凄いですね。
第6話へつづく
ディレクター
タカハタ秀太 さん
近年プロフは
「ミエリーノ柏木」(テレビ東京)脚本演出
「黒い十人の黒木瞳」シリーズ(NHKBSプレミアム)脚本演出
映画「原宿デニール」(武田莉奈主演)脚本監督
「赤めだか」演出(TBS 二宮和也 ビートたけし出演 2015年末放送)