御影屋

高須光聖がキク「高須光聖×タカハタ秀太」 第7話

『ASAYAN』や『つんくタウン』『チョナン・カン』『SmaSTATION!!』など、パッと見ただけであの人の演出だ!と気づけてしまうような画作りで強い印象を残すタカハタ秀太さん。ヒットメーカーの印象が強いのに、本人曰く「数字が取れない演出家」だった!?テレビのバラエティから映画に至るまで、高須さんと交わす映像演出にまつわる細かくて具体的なトークの数々は必見です。

インタビュー

第6話

2006.07

映画とテレビの違い

高須

あとね、映画の現場を見たりすると、ひょっとすると、いや
自分が優秀な映画のスタッフを知らないだけかもしらんのですけど、
テレビをやってる優秀な人のほうが全然素晴らしいんちゃうかな? と思ってしまうんですよ。
映画のプロデューサーや進行をやってる人を見ても大したこと言ってないな~とか、
この画をなんのために撮ってるかわかってるのかな? とか思っちゃうんですよ。

タカハタ

それは僕も思いましたね。

高須

それは、一回一回厳しく上からチェックされてないからなんかなぁ。
テレビって毎週毎週撮って、毎週毎週一回一回ちゃんとチェックしないと
上のディレターに怒られるから、自分で考えて撮っていくじゃないですか。
でも、映画のADさんというのかどんな人が撮ってるのかわかりませんけど、
上がってくるものがね、もうビックリするくらい考えてない
ロケハンの写真だったり映像だったりする時が昔あったんですよ。

タカハタ

僕も映画は一回しかやってないからわかりませんけど、
スピード感とか、やっぱり電波でマスを相手にしてる人とは違うんでしょうね。
優秀な人もいるんでしょうけど。

高須

そうなんですよね。あれは衝撃でしたね。
とにかく遅いし、言ったこと大づかみにしかしてないし、
なんでこのシーン撮るんかな? っていうところで意図もわからず撮ってるから、
撮る画に意味がないんですよね。それで「こんなんできました」って言われても、
「いやいやいや、こんなん見たいんじゃないし、
なんのためにこのロケをやっているのか分かってます?」て聞きたくなっちゃう。
テレビ屋も捨てたもんじゃないなぁ~って思っちゃう。

タカハタ

いや、もうほんとに優秀だと思いますよ。

高須

テレビの人間は真剣に画を撮る。
ちゃんとやれば、みんなそれなりに撮れるんだなぁって。

タカハタ

なめんなよ! って思う人もいるかもしれませんけどね(笑)。

高須

そうですね。もちろん映画のスタッフ全員という話ではないですけどね。
でも、きれいな画を撮れる人ってやっぱり少ないですよ。
日本の監督でこの人いいな~って思った人います?

タカハタ

ん~。あんまり映画を見たことないので。
とは言ってもこの仕事になってから巨匠と言われる人の作品は見ましたけど……。
ん~…あ、たけしさんの作品は好きですね。

高須

たけしさんのでは何が好きですか?

タカハタ

『ソナチネ』はいいなぁ。

高須

あ~いいですよねぇ!

タカハタ

でもほんとにわかんないものはわかんないですね。
『Dolls』なんかはわかんないですし。

高須

あー僕もわからんかったな~。あと、勝新の作品も好きなんですよ。
映画版の『座頭市』のファーストカット覚えてます?
あれ見たら「あ~、勝新ってまじですげーな~、この人いい意味で馬鹿だなぁ~」
って思いますよ。あの人のことだから、撮影に入る前から衣装を普段から着続けて、
裸足でしばらく生活していたに違いない。
そうすると、服にも着込んでいる感じのシワがついて、
足のシワとシワの間も汚れてきて、泥っぽくなるでしょ。
すごくリアリティを大事にしているというか。
たけしさんの『座頭市』では服もピシッとしてキレイやったし、
足もピッカピカやったんですよね。
これは目くらの人が着ている服じゃないって、ファーストカットで思ったんですよ。
オチを考えたら、別の意味でそうしたのかも知れませんが……。

タカハタ

あーはいはい! でも、わからないですけど、たけしさんはあえてクールに、
映画をなめて撮ってる感じがしますよね。
なんというか、昔の勝新さんは映画命じゃないですか。
それはそれでいいんですけど、そこまで激しくならなくても、
武さんは多分わかってるんですよ、所詮作りもんじゃんかって。

高須

なるほどね、
でもそういう意味では、勝さんもある意味そうかも。
衣装と足の汚れにはこだわるけど、抜いた部分はすごく乱暴。
風呂のシーンなんか外国の映画監督が、日本の侍映画ってこんな感じでしょ
っていうくらいで撮ってる。
そういう部分もエンターテイメントとして捉えてるんですね。
そういうい意味では二人とも、直感でやってるんでしょうね。
『つながらなくてもいい、こういう方が面白いんだぞ』
って、撮ってはるような気がするんです。

タカハタ

はいはい、そうですよね。

高須

で、映画は撮らないんですか?

タカハタ

撮りますよ~。

高須

いつ撮るんですか?構想はあるんですか?

タカハタ

『ホテルビーナス』を撮って、完成披露が終わったあたりから、
もうすぐに次を撮りたくって、うずうずしてたんですよ。

高須

うわー、すごいっすね! もしかして、もう撮り出してるとか?

タカハタ

まだですね。

高須

是非撮ってくださいよ。

タカハタ

2年に一本くらいは撮りたいんですよね。

高須

それは自分のスタッフを作って?

タカハタ

そうですね、いろいろと勉強させてもらったんで。
自分で書いた本をやりたいんですけど、それはホントに派手じゃなくて
予算もかけずに、ましてや大物スター出演じゃなくて……。

高須

けど、それなりに当たらなくても、それなりに当てないと、みたいな。

タカハタ

そうなんですよね。
ホントは『ホテルビーナス』も単館のつもりで動き出したんですよ。
でも結局ちょっと話題になるからって言われて。

高須

そうやったんですね。楽しみにしてますよー。

タカハタ

はい(笑)。

第7話へつづく

ディレクター

タカハタ秀太 さん

近年プロフは
「ミエリーノ柏木」(テレビ東京)脚本演出
「黒い十人の黒木瞳」シリーズ(NHKBSプレミアム)脚本演出
映画「原宿デニール」(武田莉奈主演)脚本監督
「赤めだか」演出(TBS 二宮和也 ビートたけし出演 2015年末放送)

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