TBSで報道からバラエティまで幅広くこなされる久保田アナ。広島の出身で標準語のアクセントを学ぶ過程で相当苦労され、ストレスからじんましんになったりと、アナウンサーならではのいろんな話を語ってくださいました。『ニュース23』での筑紫哲也さんとのお話や、お仕事での失敗にまつわるトークは笑えて学べて、必読です。
インタビュー
第3話
2005.12☆アメリカでみえたこと
高須
話がずれたけど、それでお母さんに、アナウンサーになればって言われても、
別になる気なかったんでしょ。
久保田
そう。で、何になりたいのか明確じゃなかったから、
大学のときにちょっとあわてて留学したんです。
それだって「就職活動このまんましていいのかな~」っていう
漠然とした不安から行ったようなもので。
高須
どこへ行ったの?
久保田
アメリカの大学、カリフォルニア州ですね。願書を提出したときは
ダメでもともとって感じで、受からないだろうなって思ってました。
過去の成績表を英語で提出しないといけないんですけど、
広島の中学校で通知表を英文化してくれれず……(笑)。
自分で手書きで「Math3」とか書き直したりしました。
でも、そうやって作った履歴書を出したあとは、
すっかりそのことについては忘れてたんです。
で、発表が3月だったんです。で、もちろん通知が来なくて。
だから2年生の3月の時点では、あ、就職活動もいいかなと思ってました。
とりあえず OLになるのもいいかなぁと。
あとは外資系で働けば休みがたくさんもらえるし、とか。
そういう風に思ってて、。
高須
だけど、通知が来ちゃった。
久保田
合格しましたって、三年生の四月になってからですよ。
就職活動が本格化する前にすごくいいタイミングで来たもので、
それで留学を決めたんです。
高須
なるほど。このタイミングで留学がなかったら、どこかの会社員に
なってたかもしれないわけだ。大学は、どこへ行ったの?
久保田
カリフォルニア大学です。
それこそビバリーヒルズ高校白書とか、青春何とかの舞台になった大学ですよ。
高須
いいねぇ!
久保田
人種のるつぼって、まさにこのことだと思いました。
白人もいて、黒人もいて、メキシコ人もいて、アジア人もいて……
みんながこう、刺激しあってっていうのかと思って行ったんですけど、
実際は全然違ってたんでまだびっくりしました。
人種ごとに固まっちゃってるんですよ。
白人は白人でいて、黒人は黒人で固まってて。
しかも、大学の半分くらいがアジア人なんですよ!
高須
えーっ!そうなの?
久保田
カリフォルニアってとくにそうらしいんです。アジア人の移民が多いから。
で、新学期を迎えて入学してびっくりですよ。
みんながお互い仲が悪いわけじゃないんですけど、
はっきりと分かれてるんです。
高須
俺らがイメージする人種のるつぼってさ、もっとこう、入り混じった、さ。
久保田
私もそう思っていたから、すごくビックリしました。
しかもアジア系の人たちはすごく勉強に厳しいんです。
親の教育がしっかりしてるから、それだけのとこに入るし。
移民だけあって、それだけお金がある家族の人が多いので。
高須
なるほどね。
久保田
みんなHONDAのアコード乗ってましたね。
高須
な、なんでアコード?(笑)
久保田
向こうではHONDAのアコードが大人気で。
アジアの人はHONDAのアコードか、
それかベンツとかすごい高級車ばっかりなんですね。
高須
へー。
久保田
で、ああ、外国って、こうやって実際来てみると違うんだなぁって。
高須
それで1年間いたんでしょ。アメリカで就職するってこともできたんじゃない?
久保田
はい、向こうを卒業することもできたんです。
そういうのも確かに考えてたんですけど、
1年間アメリカにいて、なんだろうなぁ……
アメリカは好きじゃないなって思ったんですよ。
すごくいいところもあるんです。あるんだけど、
実際行ってみたらそういう風に人種の壁があったり、
貧富の差もすごくあるんだなって分かって……。
高須
やっぱり違うなぁと。それだけでも留学の意味は大きいよね。
久保田
発見できたんだから、あとはそのことを
日本で活かせばいいんだって思ったので帰ってきました。
大学3年の秋に戻ってきたんですね。
で、さぁ就職活動だっていうときに、時期的に最初にあるのが
アナウンサー試験なんですよ。
ちょうど海外に行って、日本で誤解されてるというか、
自分がアメリカに対して誤解してたことを見つけたんだから、
そういうのをどこかで誰かに教えたり、表現したりしたいな、と思いました。
その時ですね。あぁ、そのためにはテレビってすごくいいなと
思ったんですよね。
高須
なるほど、アナウンサーになりたいということと、
表現方法とが一致した瞬間だったわけだ。
第4話へつづく
アナウンサー
久保田智子 さん
TBSアナウンサー。2000年入社、どうぶつ奇想天外、筑紫哲也ニュース23、報道特集などを経て、2013年から報道局に所属し、外信部、政治部、経済部、ニューヨーク特派員とニュースの現場で取材を経験する。現在は土曜朝「あさチャン!サタデー!」メインキャスター。