御影屋

高須光聖がキク「高須光聖×藤井健太郎」 第6話

まだ入社1年目の新人ADが出した企画がまさかの採用。いきなり初プロデューサー&初ディレクターを兼務しながら他の番組では底辺のAD業務の日々。記念すべき初番組の作家にと白羽の矢がたったのが、なにを隠そうこの私。まさかのオファーに戸惑いながらも、なんか面白そうだったので引き受けることに。その時の縁が巡り巡って、一緒に番組をしている。今最も芸人に信頼されているディレクターになった彼とテレビの熱い対談が始まる。
※この対談は2016年9月7日に収録したものです。

インタビュー

第5話

2018.01.15

演者の中から、共犯者を見つけたくない?

高須

藤井のテレビは癖があるというか、ちょっと悪意を埋め込むやん「あ、ちょっとケンカしようとしてんのかな?」って思うのね。
で、そん時に「もっと俺とケンカしてくれる芸人おれへんかな」って思ったりせーへんのかなーって。
一歩間違えると、一緒に崖から落ちるかもしれへんけど、一発逆転を狙う共犯者みたいな演者が欲しいと思わへんのかなって。
そんな事全然考えない?

藤井

うーん・・・
実際は「一緒に楽しく出来ればいいかなー」ぐらいではあるんですよね。

高須

まっ、そうか。その前に潰されてしまうかもしれへんしね(笑)。

藤井

難しいんですよね。やっぱりその、「一回誰かの下に入んなきゃいけないルール」に今はなっちゃったじゃないですか。
そうじゃなかったのって、とんねるず、ダウンタウン・・・ナイナイが最後かな。

高須

そうだね。でも淳とかも下に入らないでやってる演者じゃない。

藤井

そっか、そうですね。ひな壇とか、どっかの下で一回下積んでから上に上がるってシステムになってから、なかなか難しいですよね。
そこで負け顔見せちゃうから

高須

そうね~。負け顔ね~。
本当は勝った顔だけでいけたらカッコいいけどね~。

藤井

本当の勝ち顔だけで来れてるのはダウンタウンだけですから。
そういう意味では。

藤井健太郎が好む中堅芸人

高須

ちょっと以外だったのが、(藤井が)有吉と仲いいって聞いて「えぇ~」って思って、どういう付き合いだった?そもそもの出会いとか。

藤井

仲がいいってのとはちょっと違うと思うんですけど・・・
特番の時の『クイズ☆タレント名鑑』とかに出てもらって

高須

じゃあ有吉、ちょっと出てきだしたかな~って時?

藤井

そうですね。再ブレイク中、ぐらい。

高須

中、ぐらいか。

藤井

で、番組が求めてたのが有吉さんの一番得意な感じのやつだったから、ハマって、活躍してくれて、っていう感じですかね。

高須

あの番組での有吉はもちろんだけど、あとおぎや(はぎ)も良かったよね
優秀だし、俺あの小木の飄々とした感じもおぎやはぎって力あるな~って思うし、矢作って本当にスゲーなと、実は業界人も、そこまで気づいてないけど。
「や~、おぎやはぎって実は力あるのにな~」って。

藤井

矢作さんって実は番組で大喜利的なことをやったりする時も意外とぶっ飛んだのを出してくる事が多くて、そこの度胸もすごいんですよねぇ。

高須

ハートが強い。やっぱMCとかハートが強くないとアカンしね、勝ち残っていくコンビって、どっちかがめちゃくちゃハートが強いし。
MCって、やっぱり人間力が強くないと、強者だらけの芸能界ではしきりきられへんもんね。

藤井

そこがこう、素人と芸能人の差。

高須

差やなぁ~。

藤井

あんな事できない。

高須

ホンマや、あんな事無理。
「その空気でそんな事よう言うなぁ!」って言う浜田的なね。
そこのテクニックもあるやん、矢作って。
わからんフリして、絶妙な顔の筋肉と絶妙なフォローをしながら毒を吐くみたいな。
うまいな~って思うのよ。俺、おぎやはぎ褒めすぎかな(笑)

藤井

おもしろさ腕力だけで言ったら。

高須

なっかなかやで。

藤井

世間からは意外とそんな風に見られていない。
でも、実はその腕力たるやすごい。

高須

「クイズ☆タレント名鑑」に出てた有吉や、おぎやはぎや、ジュニアや、フジモンの他にも、最近だったら大吉とかもいいよね藤井が今、力があるなって思ってる人だれ?

藤井

う〜ん(悩む)

高須

よぉクロちゃん使うよね?

藤井

(笑)言いたかないけど優秀なんです。実は。

高須

優秀やねんな。クロちゃんはクロちゃんで。
いきなりドッキリかけても「あ、そっちの方向に逃げればいいのね」ってちゃんと嗅ぎ取って、スタッフが思う方向にしっかり逃げて行ってくれるよね。

藤井

そうなんですよ。言いたかないけど(笑)

面白がるポイントが似ているロンブー淳

高須

淳ともよく一緒にやってるイメージがあるねんけど。

藤井

淳さんはやっぱりこう、面白がりが似ているんでしょうね。

高須

タイプ的に?人間的に?

藤井

こう・・・面白がるポイントと言うか、あの人もやっぱり、どっかで自分は芸人じゃないっていうのはあるしもともと、テレビが好きで、いわゆる「お笑い好き」ではないっていうのはその辺も近いのかなと。

高須

えぇ~!ダウンタウンが好きでお笑い好きじゃないってどの口が言うてんのぉ。
絶対お笑い好きやって、そんなん!

藤井

(笑)お笑い自体にはそこまで興味がないんですよね。実は。

高須

でも(学生だった)当時、ダウンタウンのネタを山ほど見てたんやろ?

藤井

もちろん『ごっつ』のコントなんかはめちゃくちゃ観てましたけど。
そこから、他の芸人さんのネタを積極的に観る、って風にはならなかったですね。

高須

そうなんや。

おもしろさとリスク

高須

ちょっと藤井の悪意の話に戻るねんけど・・・
これも年齢かな。
昔はテイ(トウワ)さんと話してて「テイさん、俺ね、『ごっつ』やっていた頃やけど、色々な人に面白いって言われるし、自分も面白いと思ってたんやけど、やっぱり数人に“傷ついた”とか言われて、どうしたらええのかな?」と。
でも、そん時テイさんが「いや、全然いいんじゃないですか。だって、その何百倍も笑かして、数人傷つくからって、気にしなくてもいいじゃないかな」って。
俺もその言葉聞いて「やっぱそうですよね!関係ないですよね、そんなのね!そもそも全員を笑かすことなんて無理なんやし!」って。
だって、「俺にはいいけどお前には」ってことも絶対にある。
だから傷つく人もいても気にしないで居ようと思ってたんやけど年取ると、「うん。出来るだけ少なくしたいな」って思うようになんねんなぁ。

藤井

(笑)

高須

これ不思議やでー。
でも、あの松本も最近、そう思ってる。

藤井

ちょっと思ってますよね。

高須

昔は、そんなの人の傷つくなんて、「これおもろいやん!」って思ったら、少々人が傷つこうが演者が傷つこうが関係ない。
だって「これが一番面白いんやから」って言う、面白第一主義の信念が半端なかったからね

藤井

すごい思います。僕も松本さんと話していて僕の方が行き過ぎたら松本さんに少し戻される感じありますから。

高須

年齢なのかな、「それは・・・そやな。」とか思うわけよ、この年になると。
俺が昔やった企画で、局出禁になったこともあるからね演出も俺も。でも、当時はわからへんねん。
自分のやりたい事ばっかりやから。
でも、今やったらわかるのよ「そりゃ〜怒られるわ」って。

藤井

(笑)

高須

でもある種、藤井がそう思えているのはすごいねん。
感染してないなって思うもんね。

藤井

まだ、そうですかね。

高須

意外と感染するというか、若いとギリギリのラインをいきたいじゃない。
せめて若い時ぐらいは感染せずに、自分のやりたい事をやらしてあげたく思うよ。
俺らが自由にやらしてもらってきたから。
そのギリギリを超えて、えらい人に怒られて初めて分かるというか、そのラインを知るわけでね。
そういう意味じゃライン上をウロウロするよね(笑)

藤井

確かにそうですね。でも、下の世代見てもそういう感じの人ってあまりいないですよね。

高須

会議で話があがっても「それは、どうなんですかねぇ・・・」って、自分で予防線張っちゃうから、「じゃ〜いいかぁ〜」って、そういう現場になってるもんね

藤井

そうですよね。
そこに気を付けてナンボって感じで育ってますよね。

高須

いやもちろん、俺の年齢はそんな事言ってられへんけどね。
でも若い時は新しい事やらないと幅を広がれへんしな。
そこを潰しちゃうと。

藤井

そうですね。あとは単純に面白さを減らすのが嫌なんですよね。
その言い回しを変えることで「10おもしろい、が9になっちゃうけど、その代わり事故は防げる。10だと事故るかもしれない。
でもそこは10の方かな」って言うとこはありますよね

高須

俺ね、昔、どんなに体をはる企画でも、ケガすると思ってへんのよね。
その意識がどんどん、もっともっとってエスカレートしていくからある時誰かが怪我するわけ。
そうなると、ロケやる度にケガしそうな気がしてくんねん。
自分の体がそういう意識でモノを見るように初めてなるわけ。

若い頃は、ケガすると思えへんねん、こんな事で。
だから全然激しいロケも「おもしろいおもしろい!」って笑ってられたけど今、『リンカーン』の運動会でも「それ、怖ないか?」って思ってまうねん。

でもそれってやっぱし、昔は思ってなかったのに、今思えばものすごい危険な事やらしてんのよね。
自分の体力も変わってきたから、自分と比べてどうか考えるようになったのかもね。

藤井

でも僕、肉体の方は意外と気遣います。

高須

ああそうなん(笑)!

藤井

肉体的な危険の方は、割とケアしますね。
言葉とか気持ちの方はそんなにケアしないです(笑)

高須

病院行くようなケガせえへんからね。まぁ心に傷はできても。

藤井

まぁそこは仕事だからガマンしてねって。

高須

なるほどね。
俺らの時代は『お笑いウルトラ』もあったし、結構肉体的に危ないことやってたなぁ。
昔、ジャングルジムのものすごい大きいやつを作ったのよ。
半円型の、金めっちゃかけたすごいセット。
で、そこにワーッと昇ってって、てっぺんにある棒を取りに行くねんけど、もう今見たら考えられへんくらい危ないのよ。
30人ぐらいの芸人が一斉に登って行って、途中下からCO2が吹き出して手元が見えなくなりながらも、みんなが上を目指して登って行くねんけどシミュレーションやる時「あかんなぁ」って思えへんかったもんね。
「ズリッ!!」って落ちそうになっても「おもろいおもろい!!」って(笑)
ヘンな話だけど、あれ落ちてたら、命綱つけけないからやばい。
自分も演者も若いから落ちへんと、勝手に思っている。

藤井

下はあんまりケアされていないんですか?

高須

ぜんっぜん。フワッとはしているけど高さあるし、大勢いいたから人が重なって落ちたら完全にアウト。

藤井

ちょっと話変わりますけど、高いとこ登る系のときに
ハーネス付いてるやつって冷めません?

高須

冷める冷める。そもそも面白くない。

藤井

あれ嫌いなんですよねー。

第6話へつづく

ディレクター

藤井健太郎 さん

1980年生まれ、東京都出身。立教大学卒業後、2003年にTBSに入社。『リンカーン』『ひみつの嵐ちゃん!』などの人気番組のディレクターを経て、『クイズ☆タレント名鑑』『テベ・コンヒーロ』等を演出・プロデュース。現在は『水曜日のダウンタウン』の演出を務める。

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