明け方まで仕事をすることも多い業界では、寝る前の早朝番組『めざにゅ〜』で杉崎さんの「これからおやすみになる方も〜」のやさしいボイスを忘れがたい人も多いのでは? 取材のこの日も朝が早い杉崎さんの生活スタイルに合わせて、少し早めの時間からワインを飲みつつ語らいました。愛するラジオのお話や、鼻歌交じりの音楽トーク、早朝番組の苦労話など。
取材・文/竹村真奈
インタビュー
第7話
2006.04★めざにゅ~を始めたきっかけ
高須
『めざにゅ~』でさ、毎日朝早く起きるでしょ?
最初はどういう経緯でその仕事を受けようと思ったの?
杉崎
お話しをいただいた頃はまだ長野で事務所に入るかどうかさえも決まって
なかったんですよ。でも、これからのことも決まってないのに長野での仕事を
辞めることだけは決めていて…。
高須
え、なに?やめるのは決まってたの?
杉崎
はい(笑)。
高須
東京には行こうと思ってたの?
杉崎
そうですね。
高須
引き抜かれる話があったとか?
杉崎
まったくなかったです。無謀でしたね(笑)。
高須
なんで辞めようと思ったの?だって、パーソナリティをできてたわけじゃない。
杉崎
そうなんですけど、実は入社するときから5年目くらいで
福岡、大阪、東京のどこかには出たいと思っていたんですよ。
やっぱり全国の人に聞いてもらいたいっていう思いと、
大分の親戚と親に聞いてもらいたいっていうのがあったので。
長野だと大分では聞けませんからね。
高須
娘が何やってるのかわかんねぇよ、と。
杉崎
そうなんですよ。すごく心配するので…。
口には出さないんですけど、心配なんだろうなぁっていうことだけは
伝わってくるというか。それで、どこかに出ようとは思っていて、
2年半目くらいで「あ、もしかして今かな」って。
高須
何のつてもなく辞めちゃったの?
杉崎
そうなんです。
高須
その決断力っていうのはなんなの?
昔から、決めちゃうとバーンって走っちゃうとこはあったの?
杉崎
決断力はあるんですけど、すごく迷いましたよ。
迷っているときっていうのがすごくて、落ちに落ちて(笑)。
高須
最悪を考えるんだ。
杉崎
そうです。最終的に決断するときも最悪の状況から飛び込みますね。
東京にはイヤなものがいっぱい待ってるんだ!って。
高須
仕事もなくなっちゃってお金も尽きちゃって、
帰るにも親になんて言ったらいいか、みたいなことも考えつつ。
杉崎
はい、それが前提ですね。で、それでもわたしはやっていける、
やっていく!みたいな根拠のない自信がメラメラと(笑)。
でも、それって大事だと思うんですよ。
高須
大事だよ、大事。でも、それも年齢重ねるとできなくなってくるからね。
杉崎
当時、24歳だったんですけど、今の自分には根拠のない自信はあっていい!と思って。
高須
正しい選択だね。
杉崎
いつでもやり直せるし、いつでもスタート出来ると思って。
高須
その決断は勇気いることだよね。それで今の事務所に連絡したんだ。
杉崎
そうです、履歴書送って、面接を受けて。就職試験みたいでしたよ(笑)。
でも、いつになっても「ウチに来なさい」とは言われなくて……。
高須
ハイハイわかった、また連絡します、みたいな。
杉崎
そうです。曖昧で全然ハッキリしたことは言ってくれなくて。
高須
そのとき、住まいはもう東京にうつしてたの?
杉崎
いや、うつしてなかったですね。
高須
え、じゃあもう長野から遙々電車で来て、どうかな?と思ったら
曖昧な答えやし、「あれ、やっぱあかんのかな」と思いながら
また電車で帰ってるってこと?
杉崎
そうですよ(笑)。
高須
それがどうやってそのシンデレラストーリーになったの?
杉崎
事務所に連絡したのは1月だったんですけど、長野の会社は
辞める3ヶ月前に辞めることを言わなくちゃいけなかったんですね。
高須
突然やと会社も困るもんなあ。
杉崎
それで1月に言ったんですけど、「今辞められると困るから、
とりあえず9月いっぱいまでいてほしい」と言われて、いろいろ悩んだんですけど、
3月いっぱいで無理矢理辞めるのもちょっと良くないしって状況的に判断して、
ならば9月いっぱいまでやります、と。で、事務所にもそれを伝えたんです。
で、それからは4ヵ月に1回くらい、事務所に電話する感じで、
高須
もっと連絡した方がよかったんじゃない(笑)?
杉崎
ですよね。でも、事務所からも全然連絡がなかったし、
ホントに所属できるのかなぁっていうすごく曖昧な時期だったんですよ。
結局9月いっぱいでやめるのに8月上旬まで1、2回しか連絡取らなくて(笑)。
すごく不安ででしたね。
高須
でも、大丈夫かなっていうのはちょっとはあったわけでしょ。
ノーとは言われてないわけだから。
杉崎
ノーとは言われなかったんですけど、東京に行っても仕事ないだろうなって
いうのはあったんですよ。
高須
モッチー(杉崎さんの事務所の先輩)はさ、すごいいい社長だって言ってたよ。
杉崎
わたしは東京に住んだこともなかったし、田舎者なので社長のことは
すごく怪しい!と思ってましたよ(笑)。それこそ売り飛ばされるくらいの勢いで
思ってたんですから。
高須
テレビドラマの見すぎやん(笑)!
杉崎
いや、田舎に住んでるとそんなもんですって!
プロダクションなんていっても、社長のプロフィールなんて詳しいことは
どこにも書いていないし、わからないじゃないですか正直。
高須
なるほどなー。それでどうなったん?
杉崎
すごく不安だったんですけど、8月の頭に連絡があって、
今度こういう番組が始まるらしい、と。
高須
それが『めざにゅ~』?
杉崎
そうです。まず、早朝4時からの番組って聞いて、ちょっと引きましたね。
有り得ないじゃないですか。それでまた「あやし~!」と思って、
そもそも朝の4時からなんてわたし無理だし!と。
高須
東京に対するイメージすごいねぇ(笑)。
杉崎
もう最悪ですよ(笑)。
高須
やっぱりドラマとかの見すぎだね(笑)。
杉崎
見すぎ見すぎ(笑)!もう怖くて夜は外も歩けないし(笑)。
高須
そんな(笑)!
杉崎
そういうことばっかり考えてましたけど、でも会いに行かなきゃ
始まらないって思って、『めざましテレビ』のスタッフの方達とお会いしたんです。
一日じゃ、どんな人達かわからなかったけれども、
一番初めに「ラジオ的な要素を強くしたい」って言われたんですよ。
「えっ、ラジオ的!?」と思って、そこに食いついちゃって(笑)。
「視聴者と密接した番組を作りたい」と。
で、「とりあえず、3、4年は青春はないと思って」、とも言われたんですけど(笑)。
高須
青春ってやっぱりないもんなの?朝4時からやってると。
杉崎
ないですよ!夜ごはんなんかもう誰とも食べられませんもん。
その時間はいつも家にいますからね。最近は22時くらいに寝るんですけど、
慣れるまでは20時には寝てましたからね。
深夜1時には起きなくちゃいけないんで誰とも付き合えないですよ。
高須
うわぁ~!!きっついなぁ!!
杉崎
そうですよ~。青春ないですよ、…ない。キツイですよ。
時間が合うのは築地の魚河岸の人くらいですよ(笑)。
高須
最初は20時に寝てたの?それでも5時間しか寝られないんだ。
え、深夜0時だったら1時間睡眠で行くの?
杉崎
だから木曜日とかはもういっぱいいっぱいで、仮眠とったりしてます。
第8話へつづく
アナウンサー
杉崎美香 さん
身長158cm。出身地 大分県。出身校 山口大学 人文学部言語文化学科。
略歴:2001年信越放送にアナウンサーとして入社。テレビ・ラジオ番組で活躍。その後フリーランスに。星座さそり座担当番組めざにゅ~(フジテレビ)